36話 バラバラの三人衆 ~目の前はレーザーだらけ~

「この中にあのお方がいる。入れ」



 いや、入れとか言われても⋯⋯無理でしょ。

 何されるかもわかんないのに入れないよ。



「ここで何すんだ?」



 プリンがそう問うと、ただれた男はニヤっと不気味な笑みを見せ、無言で私達を建物の中に押し入れた。



「うわっ!」



 バランスを崩した私は、足がもつれて勢いよく中へ入る形になった。


 すると⋯⋯。



ビリビリーー



 勢いあまって中に入った私の目の前に、有刺鉄線のフェンスと無数のレーザーが。



「わっ! な、なに⋯⋯これ?」



 驚いてしりもちをついた私は、辺りを見渡した。

 するとそこには有刺鉄線に囲まれた中に、壁にいくつものレーザーが反射して、とても通れるような場所ではなかった。


 これはどういう場所なわけ? こんなところどうやって通るのよ?



「あぁ⋯⋯いい忘れてたな。レーザーには気を付けろよ」



 ただれた男はそう言うとケラケラ笑っている。


 言うの遅いし。こんなの通れないじゃん。

 こんなに凄い罠張って、奥にはどんな凄いやつがいるのよ。



「クックックッ⋯⋯ちょっと待ってな」



 ただれた男はそう言うと、入り口付近に付いているインターフォンらしきものを押した。



ピピッーー



「誰だ」



 インターフォンを押すと、顔を見なくてもその不愛想さが伝わってくるほど、低く暗い男の声が聞こえてきた。



「エイトです。例の人間を連れてきました」



 ただれた男がインターフォンに向かってそう言った。

 どうやら、ただれた男の名前はエイトと言うらしい。

 まぁこれは、ゲームに出てくるNPCだったから、元々名前は知ってたけど。


 それよりこのインターフォンの向こうの人が、この人達が言ってた人かな?



「ナンバーを」

「ナンバー、1-1-4」

「よし、今レーザーを切る」



 インターフォンの人とエイトが謎の会話をしたあと、目の前にあったレーザーが次々に解除されていった。


 ナンバー114ってなに? なんかの暗号かな? よくわかんないけど、エイトは私達の背中を押しながら歩き始めた。


 私達は指示に従い、エイトに付いていった。



「おい、そこを右だ。真っ直ぐあのお方の所に行け。余計な真似すんなよ」



 エイトはそう言って、私達に銃口を向けた。


 仕方なく私達は、エイトの指示通りに進み、どうやら目的の部屋に着いたようだ。


 そこは、今まで通ってきたどの部屋よりも大きく、部屋の壁にはターミナルが付いていて、とても厳重にロックされているみたい。


 エイトはターミナルを解除するために、私達に向けている銃口を下ろし、ターミナルの目の前に立った。



 するとプリンは後ろ手に縛られたロープを、ゴソゴソと動かし、気付かれないようにロープをほどいた。

 プリンは私のほうを一目見て、先ほどまで私達に向けていたエイトの銃を一瞬にして奪い、エイトにその銃口を向けた。



「なっ! いつの間に? 余計な真似はするなと言っただろ」

「そんな事言ってる場合か? 今の自分の状況を考えろ」



 プリンはエイトを人質に、髪の毛がない女とミュートンのほうを見て、二人が持っていた銃を床に投げさせた。



「聞き分けがいいな。まずお前達はなぜ俺達を襲った? ここはどこだ? この先には誰がいる?」



 一気に質問をするプリンに、二人は困った顔をした。



「い、一度にそんなに聞かれても答えれないわよぉ」



 髪の毛がない女がそう言うと、ミュートンが女の前に立ち、話始めた。



「オンナ イジメ ダメ。オデ ミンナデ ココカラ デル。コノセカイ コワイヒト バカリ。

 エイト キャリー オデ ミンナデ ダッシュツスル。タタカイガ ナイ セカイニ イク」



 ミュートンはそう言うと、下を向き悲しそうな顔を見せた。

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