26話 ようこそ、ぼくらの研究所へ ~奇妙なコレクション~

「ようこそ、ぼくらの研究所へ」



 扉を開くとそこには、女の裸体が入ったホルマリン漬けが沢山並んでいて、まるでそれで通路を作っているようだった。

 広い部屋の中央にホルマリン漬けが、壁際には沢山の銃が飾られていて、その下にはマネキンに着せた服や鎧がズラッと並んでいた。

 どうやらここの主はコレクションするのが趣味らしい。



「なに⋯⋯これ?」



 そして壁際のマネキンの前には、水槽みたいなものに、女性の顔が浸けられているものがズラっと並んでいた。

 それらを守るかのように、部屋の奥には豪華な椅子に白衣を来た眼鏡の男が、足組をして偉そうに座っていた。



「君達は、この素晴らしい研究所を見学しに来たのかな?」



 いや⋯⋯素晴らしいって。裸の女を集めてホルマリン浸けにしてるのが、素晴らしいって言えるわけ? 頭おかしいんじゃない?



「どうやら、このぼくの芸術に圧巻しているようだね」



 いや、圧巻じゃなくて恐怖すら感じる。この人やばい人だってね。


 私がこの部屋に驚愕していると、男は高々に笑い奥の扉を開き、そこから一人の女性を連れてきた。



「はっはっはっ! こいつは対戦闘用に造られた女性型ロボットだ。君達で試してみよう」



 すると男が裸の女性型ロボットの胸を触ると、そのロボットは動き出した。どうやら胸がロボットを動かすスイッチらしい。

 男がロボットの手に銃を持たせると、ロボットはウィーンという音と同じに、私達に銃口を向けた。


 いや、ちょっと待ってよ。



「テン、隠れろ!」



 そのプリンの声と同じに銃声が聞こえて、私はプリンに腕を引っ張られた。



ババババババーーババババババーー



 なんで部屋に入っていきなり、知らない人と戦わなきゃいけないのよ。



「はっはっはっ! どうだい? この女性型ロボットの実力は?」



 男はそういうと、近くにあった椅子に腰かけその様子を楽しそうに見ている。



 プリンはホルマリン浸けにされた女性の入れ物に隠れながら、銃を構えてロボットを狙っている。


 ギリギリ銃口だけが見えるように、スナイパーライフルを構えスコープを覗き込み、銃声が止むとプリンはロボット目掛けて銃弾を撃ち込んだ。



ドンーーカシャーー



 プリンの撃った弾はロボットの腹に命中した。しかしロボットは体勢を崩す事なく、その場に銃を構えて立っている。



「くそっ! こっからじゃダメだ。上手く狙えない。テン交代だ、こっちに来い」



 そう言うとプリンは反対側にいる私に、スナイパーライフルを投げ渡した。



「え?」



 いや、無理無理! 私に撃てっていうの?

 私が戸惑っていると、ロボットの方から再び銃声が聞こえてきた。



「きゃっ!」



 私がやるしかないの?



「今移動するのは危険だ。お前がやれ!」



 そう言うとプリンは大丈夫だと言わんばかりに、私に向かって笑顔で親指を立てた。


 いや、スナイパーライフルとか使い方わかんないし。

 プリンがやってたようにスコープ覗けばいいの?



「いいか、頭を狙え。一瞬でケリをつけるんだ」



 よし、まずはスコープを覗いて⋯⋯。


 私はスコープを覗き頭をよく狙い、弾が無くなるまで打ち続けた。



ドンカシャーードンカシャーードンカシャーードンカシャーードンカシャ



 私が撃った弾は5発中3発命中した。



「全っ然当たんない」



 しかし頭を数発撃ち抜かれたロボットには効いたようで、体勢を崩しふらついている。


 ロボットといってもやっぱり人間の体だから?

 でもまだまだロボット撃ってくるんですけど? どんだけタフなのよ。



「テン、しっかり狙え!」



 プリンはそう言うと、銃声が鳴りやんだ一瞬の隙に、手前のホルマリン浸けに移動した。



「あっ⋯⋯プリン」



 プリンは私の方を見て、再び笑顔で親指を立てた。


 何する気なんだろう?


 ホルマリン浸けの入れ物を経由し、どんどんロボットに近付いていく。

 そしてロボットとの距離が10mくらいになった所で止まり、何かを投げてホルマリン浸け一つ分後ろに下がった。



⋯⋯ボンーー



 プリンが投げたものは手榴弾。床に落ちると同じにロボットの体は吹き飛び、椅子に座っていた男は風圧で吹き飛んだ。


 私はあまりの爆発に頭を下げ身を隠していると、煙の中から銃声が聞こえてきた。



「よくもぼくのロボ子をふっ飛ばしてくれたな!」



 ロボ子って⋯⋯しかもそっちから撃ってきたんじゃん。

 男はその場で銃を乱射すると、ホルマリン漬けの入れ物がパンと音を立てて次々と割れていった。



「あぁぁぁ! ぼくの美しいコレクションが! くっそーー!!」



 いや、自分でやったんでしょ。その後男は狂ったように私達に向けて銃を乱射した。ホルマリン漬けの入れ物は、さらに割れていって床は水浸しになった。



 しばらくすると銃声は止み、恐る恐る顔を上げてみると男は何かを喋っている。



「弾が⋯⋯弾がぁぁぁ! くっそ~!!」



 え? 弾切れ? 今もしかしてチャンスじゃない? こんなやつ生かしといてもロクなことしないだろうし。

 このままだと何しでかすかわかんないし。いいよね? 殺しちゃっても。こいつなら私でもいける気がする!


 私は男が弾切れになった瞬間に男に近寄りアサルトライフルを乱射した。頭とか体とか関係なしで。もの凄い近い距離で乱射したせいか、男は逃げる隙もなく体から大量の血を流しその場に倒れた。



「やったぁ! 倒したよ。こんな頭おかしいやつ死んだ方が世の中の為ってやつだよ」



 世の中っていうかゲームの為か。私は男が倒れた拍子に落とした銃を拾ってインベントリに入れた。そして、男が苦労して集めたであろうコレクションの、銃や防具をあらかたいただいた。




 そして私達は、もぬけの殻になったこの気持ち悪い研究所を後にした。

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