第34話 改めて異世界ストアはチートスキルだった
田助が非常識なことをしでかしたせいで激しく混乱したウェネフ。
そのウェネフが落ち着くのを待ってから、改めて話を聞くことにした。
「つまりだ。俺が今回、異世界ストアで購入したこのピアスは超古代遺跡から発掘された秘宝で、今では……えっと、何だっけ?」
「ラインバルト魔法王国ですよ、田助様」
ウェネフの話を一緒に聞いていた
ありがとうと伝えれば、衣子はうれしそうに笑った。
「今はそのラインバルト魔法王国が所有する国宝になっていて、普通に売買されているものじゃないと?」
「そうです!」
と、ウェネフがうなずく。
まあ、確かにそのとおりだろう。
国宝が普通に売っているというのは考えにくい。
だが、実際はこうして購入できたわけで。
「実は借金がめちゃくちゃあって、こっそり売りに出されていたという可能性は?」
「ありません!」
だとしたら、
「盗賊が王宮に忍び込んで盗み出し、闇市場で売り捌いた!」
「可能性としてはある……いえ、ないですね。それも。あそこの王宮は難攻不落と言われていますし。もし万が一にでも盗賊に盗み出されていたとしたら、それこそ王家が威信をかけて回収しているはずです。その秘宝はラインバルト魔法王国を建国した初代国王が見つけ出したものなんですから」
「そ、そうか」
なら、どうして購入することができたのだろう?
異世界ストアは異世界で売買されているものを購入できるスキルだ。
普通に売っていないとなると……。
「ん?」
「どうしました、田助様?」
「あ、いや。異世界ストアを鑑定してみようと思ったら、『+』がついてるんだよ」
「鑑定スキルと同じですね」
「ああ」
そこで改めて異世界ストアを鑑定してみたら、こんな結果が出た。
――――――――――――――――――――――――
●異世界ストア+
異世界で売買されているもの、値段が付けられたものならば、どんなものでも購入することができるスキル。
――――――――――――――――――――――――
「……どうして国宝を買うことができたのかわかった」
小首を傾げる衣子に、田助は肩をすくめて見せた。
「いつの間にか『値段が付けられたものならば』って一文が増えてるんだよ」
これが『+』の正体。
「……ああ、なるほど。つまり、こういうことですね。市場に出回っていないものでも値段が付けられた時点で――」
「ああ、そうだ。俺の異世界ストアで購入できる」
『+』が付く前もチートスキルだと思ったものだが、ここに来て異世界ストアはさらにチートスキルに磨きをかけてしまったようだ。
たとえ売るつもりがなかったとしても値段が付けられさえすれば、購入することができるのだから。
「さすが私の田助様ですね」
「いつの間にか勝手になってただけなんだけどな」
褒めてくれるのは悪い気はしないが、実際には言ったとおりなので苦笑するしかない。
「それもそうですね」
華麗なる衣子さんの手のひら返し!
だが、それも悪くないと思ってしまう田助は衣子にすっかり調教されているのかもしれない。
「ふふふ」
「あはは」
そんなふうに田助と衣子で笑い合っていると、
「いやいやいや!? 『ふふふ』とか『あはは』じゃないですから! 何ですかそのスキル……!? めちゃくちゃじゃないですか! というかですね、スキルに『+』が付くことすらあり得ないことなんですよ!?」
「え、そうなのか?」
田助の言葉を「そうなんです!」とウェネフが前のめりで肯定してくる。
「スキルというのは神から与えられた恩寵なんです! 与えられた時点で完璧なものなのに、そこから変化するとかあり得ません!」
「そんなことを言われても変化しているし……そもそも神は全然完璧な存在じゃないぞ? 俺が知ってる奴は駄女神だしな」
「ちょ、ちょっと待ってください! 何ですか駄女神って!? というか、まるで会ったことがあるみたいな気安さを感じるんですけど……!?」
「おお、会ったぞ。そして俺は人生をめちゃくちゃにされた」
田助が言うと、もうこれ以上は目を開くことができないというくらい、大きく目を見開いて、ウェネフが驚きを示す。
「というか、スキルが神からの恩寵だっていうなら、スキルオーブは何なんだ?」
「え、スキルオーブですか? このピアスと同じで超古代遺跡から発掘された神話級のレアアイテムで、一説には使うことでスキルを授かることができるという噂もありますが、その詳細を知るものは誰もいない、ラインバルト魔法王国の秘宝中の秘宝とされていますけど……ま、まさか!?」
「買った」
と田助が言って、
「買いましたね」
と衣子が駄目押しすれば、
「こ、この人は……! いったいどこまで非常識なんですか……!?」
再びウェネフに襟首を掴まれ、ガクガクと揺さぶられる田助である。
「で、そのスキルオーブは今どこに!?」
「使ったら消えてなくなったぞ?」
「消えて……なくなった……!?」
ウェネフの口から何かが飛び出す。おそらく霊魂的な何か。
「信じられません!! ラインバルト魔法王国に何か恨みでもあるんですか!? 今頃国宝がなくなって大騒ぎしていますよ、絶対に……!」
話を聞く限り、そうかもしれない。
だが、
「まあ、それはあれだ」
「あれ?」
「気にしない方向で!」
「この人最悪だぁ……!」
三度、ウェネフに襟首を掴まれ、ガクガクと揺さぶられる田助だった。
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