第十六節 瞳に映る思い出の夜景

 俺はファウストを倒し、古の魔法書を奪い取った。

 俺は手に入れた――想像以上に強力な魔法を――。

 時を戻せる魔法を――。

 俺はクモに変身してファウストをグルグル巻きにし、皆に経緯を話した。

「すごい……時間を戻せる魔法だなんて、神の領域よ」

 アヒルは驚いている。

「ファウストとの戦いで分かったけど、これがあればどんな相手にも負ける気がしない」

「体は大丈夫なの? 高威力の魔法はそれなりの代償があるから……」

「特に変わったことはないけどな……」

 俺は自分の体を触るが何ともない。

「本来なら、生け贄などの代償が必要なのに……それ無しで詠唱するなんて」

「ファウストは国一番の魔術師だった。リボン嬢も同等あるいは、それ以上の素質があるのだろう」

 ミネルバが言った。

「そうね……カツヤは、伝説の魔導師だものね」

 アヒルとユリルは、古の魔法書を手にしてページを捲る。

「聞いたことも無い魔法ばかりね……おばあちゃんにも、見せてあげたい」

「こんな魔法が存在するなんて……」

「なぁ、この時を戻せる魔法って、どこまで戻せるんだ?」

 俺はアヒルに聞いた。

「さぁ? 私も初めて見るから分からないわ」

 もしこの魔法で何年も戻せるのなら、歴史をやり直すことができる。

 この荒廃した世界も、なかったことにできる。

「もし、50年前に……戻れたら」

 俺はそう言葉にした。

 誰もが驚愕する。

「無理よ……」

 否定したのはアヒルだった。

「50年も遡るなんて、膨大な魔力が必要……数秒戻すのと訳が違うわ」

 いい考えだと思った……いや、ほかに方法がないんだ――。

 だから、俺は引かなかった。

「やってみなきゃ分からないだろう?」

「そんなの、伝説の魔導師でもなければ……無理……よ」

 皆の視線が、俺に集まる。

「……俺なら……できるんじゃないのか?」


 俺は馬車を走らせた。

 北の最果ての地を後にする。

「そういえば、あの魔導師置きっ放しだったけど……」

 ユリルが馬車の荷台で呟いた。

「あぁ……忘れてたわ」

「あいつには、これくらいの仕置きがあって十分だ」

 ミネルバはアヒルを抱きしめながらそう言った。

 俺たちはリリィの元に向かっていた。

 再び何日も移動する馬車の旅だ。

 グーッ――。

 誰かの腹の音が鳴る。

「わ、わたしじゃ……ないからね!」

 誰も何も言ってないのに、ユリルが声を上げる。

「みんな、腹減ってんだ……仕方ないさ」

「そ、それでも、わたしじゃないから……」

「こんなことなら、ファウストから食料を奪っておくんだったな」

 ミネルバが悔しがる。

 北の最果ての地と呼ばれるだけあって、この辺には人の集落がない。

「数日の我慢だな……水だけは、魔法で出せるし」

「はぁ……行水したい……」

 アヒルは、ため息を吐いた。

 風呂を行水と言うなんて……ついに、アヒル化が進行しはじめたようだ。


 それから数日、俺たちは再びリリィの元にやってきた。

「お腹空いたー!」

 アヒルの一言目は、それだった。

「あらあら……」

「おばあちゃん、わたしも手伝う……」

 リリィとユリルは、料理を作り始める。

 良い香りが立ちこめ、余計に腹の減りを増加させる。

「いただきまーす!」

 料理がテーブルに運ばれると、アヒルは一目散に食べ始めた。

 俺たちは食事をしながら、時の魔法のことをリリィに話した。

「確かにもう一度やり直せるかもしれないわね」

「いいアイデアだと思わない?」

 アヒルは、俺のアイデアをさも自分が考えたように話す。

「それなら、王国に行くのが一番かもね……」

 リリィがそう言うと、アヒルの食事の手が止まる。

「王国……私の故郷であり……そして、この世界が滅んだ原因となった場所」

「行こうぜ、王国へ!」

「少し長旅になるわよ」


 俺は、荷台に水と食料をたんまり乗せた。

「少し重いかもしれないけどよろしくな、イセカイテイオー」

 ヒヒーン――。

 荷台にアヒル、ユリル、ミネルバ、そしてリリィを乗せて、何日も馬車を走らせた。

 荒れ果てた荒野をひた走る。

 やがて、大きな岩山が見えてきた。

「この辺りじゃないかしら」

 辺りの景色を見て、リリィが告げる。

「おそらく……なにも、面影なんて残っていないのね」

 アヒルが呟いた。

 馬車を麓において、俺たちは徒歩で岩山の頂上まで登った。

 そこには、僅かに城の柱や壁と言った残骸が残っていた。

「城跡……か?」

「まちがいなさそうね……フォレスティア城は、ここにあった……」

 リリィはそう言った。

「この辺りにお城があって、ここから城下町を見下ろせたの……夜景が綺麗だったわね」

 アヒルは、嬉しそうに遠くを見つめた。

 その瞳には、きっと思い出の夜景が映っているのだろう。

「懐かしいわね。あなた、いつも酔いつぶれて……介抱が大変だったんだから」

 リリィもアヒルの横に並んで、同じ景色を見つめる。

「ちょっと、恥ずかしいこと言わないでよ!」

 二人は、互いの顔を見て笑った。

「おばあちゃん……楽しそう」

 そんな二人を見て、ユリルは呟いた。

 二人の中の数え切れないほどの思い出が、この場所に眠っているのだろう。

「もう一度、あの頃に戻れたら……また、三人で一緒に笑って過ごせる日々が送れたら……」

 アヒルは、そう言葉にした。

 三人……?

 アヒルとリリィと……もう一人。

 誰なんだろう?

「すべて無くなって終った……思い出も……何もかも」

「今から取り戻すんでしょう?」

 悲しげな表情を浮かべるアヒルに、リリィはそう言葉を掛ける。

「そうだったわね」

「ここに、魔法陣を描くわ……ユリルも手伝って」

 リリィは、ユリルに声を掛けた。

「うん」

 ユリルは、リリィに対しては素直だった。

「いつもなら、べ、別に手伝ってあげてもいいけど……とか言うくせに」

「な、なにか言った!?」

 ユリルは顔を真っ赤にして叫んだ。

「ほら、手を休めない」

「うん……」

 微笑ましいな……。

 リリィは、ペンダントを取り出して手に取った。

 チェーンの部分を手に取り、宝石を下に向けて歩き出す。

「あれは、何をしているんだ?」

 俺は、アヒルに聞いた。

「場所を探しているのよ、魔法陣の……」

 リリィは地面に杭を打ち、そこに紐を付ける。

 もう一方に、大きな鳥の羽根を括り付けた。

 再び、アヒルに問い掛ける。

「あれは?」

「大鷲の羽根よ。特殊なインクで魔法陣を描くの」

 地面の杭を中心に、コンパスのように円を描いていく。

 ロープにインクを塗り、それを地面に付けることで直線を作った。

 ユリルは、六芒星の中に幾つもの小さな六芒星を描いていた。

 リリィは、円に沿って文字を書いていく。

「ところで、何で魔法陣を描いているんだ?」

「魔力の分散を防ぐためよ」

 アヒルは、ミネルバの腕の中で答える。

「強力な魔法ほど制御が不安定になる……魔法陣を描くことでより精度を上げることができるのよ」

 アヒルは飛び降り、歩きながら説明する。

「王国が存在したころ、儀式の間があって、強力な魔法はそこで執り行っていたわ……そこと同じ場所に描くことで、過去と現在をシンクロさせ、魔法の成功確率を上げるのが目的」

「魔法って、唱えるのに失敗することもあるのか?」

「魔法は、術者の力量や、集中力、体力、精神力、そう言ったものが不十分だと……失敗するわ」

「失敗すると、どうなるんだ?」

「自分に返ってくる……暴発と呼んでいるけど、魔法の内容次第では、爆発して腕を吹っ飛ばされたり、心臓が止まったり……」

 俺はゴクリと唾を飲んだ。

「カツヤは今まで何気なく使っていたけど、魔法は本来リスクが伴うものなのよ」

「危険なものだったんだな……」

 そんなことを聞いたら、不安になってきた。

 大丈夫だろうか……俺。

「これから行おうとしている魔法は、神の領域……もし、失敗したら、何が起こるか分からないわ」

 アヒルは、古の魔法書を手にとってそう言った。

「これは、今まで使っていたグリモワールとは、次元が違う魔法書なのよ……カツヤの身だけでなく、もしかしたらこの世界が消えて無くなる……そんな可能性もあるわ」

 アヒルは俺を見つめ、真剣な眼差しを向ける。

「それでも、やるの?」

 世界を救うどころか……へたすりゃ無くなる……。

 でも、何もしなきゃ、この世界はこのままだ。

「俺は、この世界を救うためにやってきた……俺にしかできないんだ! ここで怖じ気づくわけにはいかないよな?」

 アヒルは、黙って頷いてくれた。

「できたわ」

 地面に向かって文字を描いていたリリィは、腰を上げた。

「よっこいしょと……」

「ふぅ……もうへとへと」

 ユリルはそう言って、その場に座り込む。

「お疲れさま」

 リリィとユリルが描き始めてから数時間、魔法陣は完成した。

 地面には、直径五メートル程の魔法陣が描かれていた。

「準備は調ったわ……あとは、魔法陣の中で魔法を唱えるだけ」

 アヒルが、俺に向かってそう言った。

「50年前に、タイミングよく戻せるだろうか?」

「一瞬で50年を戻ることは難しいと思うの……少しずつさかのぼって行くはずよ」

 もう、覚悟は決めた……迷いはない。

 俺は、魔法陣の中心に立った。

「じゃあ……みんな、行ってくる」

 俺は、皆に別れを告げた。

 アヒルが、俺の頭に飛び乗ってきた。

「……何してんだ?」

 俺は頭からアヒルを掴み取り、顔の前に持ってきた。

「何って……私も一緒に行くに決まってるでしょう? カツヤ一人じゃ心配だもの……」

 心細かった……一人で行くのは不安だった……。

 嬉しくて涙が出そうになる。

「俺一人だと、勝手が分からないからな……助かるよ」

「あ、あの……」

 ユリルは、何か言いたそうにしていた。

「なんだよ?」

「わたしも……一緒にいっても……いいけど……」

 ユリルは、リリィの元に駆け寄る。

「おばあちゃん……」

「行っておやり……」

 リリィは、笑顔でユリルの頭を撫でた。

「リラー」

 どこからともなくドラゴリラが、ユリルの元に飛んできた。

 こいつは、いつもどこに隠れているんだ?

「ドラゴリラも、付いてきてくれるの?」

「リラー」

 ユリルは、ドラゴリラをぎゅっと抱きしめる。

「ありがとう」

 ユリルは、俺の元に歩いてきた。

「おばあちゃんが、行けって言うから……一緒に行くだけだし……」

「あぁ、分かってるよ」

 素直じゃないのは、いつものことだ。

「でも、サンキューな」

 俺がそう言うと、ユリルが顔を真っ赤にして俯いた。

 ミネルバも、俺の前にやってきた。

 そして、俺の頭の上にいるアヒルを抱きかかえた。

「アヒルちゃんが行くなら……私も同行する……ハァハァ」

 どんだけアヒルが好きなんだよ!

「お前は強いからな、きてくれると助かるよ」

 俺は、皆の顔を見つめた。

「みんな、本当にいいのか? もうこの世界に戻ってこれないかも知れないぞ?」

「一緒に行かないと、この姿……元に戻せないじゃない」

 アヒルは、ため息交じりにそう言葉にする。

「こんな荒廃した世界に……未練はないわ」

 ユリルは、首を振ってそう言った。

「アヒルちゃんがいない世界なんて……」

 ミネルバは、アヒルを抱きしめそう告げる。

 分かったよ……。

「じゃあ行くぞ! 手を繋いで入れば一緒に時を超えられるはずだ」

「おばあちゃん、行ってくる」

 ユリルは、リリィに手を振った。

「この世界に緑が戻るのを、楽しみにしているわ」

 リリィは笑顔を返した。

「ローズ……メグによろしくね」

「えぇ」

 俺たちは、手を繋いで輪を作った。

 そして魔法を詠唱する。

「古の魔法書Ⅴの章・時魔法時ノ超越クロノスリープ

 カーン――。

 甲高い音と共に魔法陣が光輝き、地面から浮かび上がった。

 それは、俺たちを囲い回転を始める。

 スーッ――。

 すべての音が何かに吸い込まれるようにしてかき消された。

 そして、静寂が訪れた――。

 次の瞬間、下から突風で吹き上げられるようにして、俺たちは大空に舞い上がった。

「すごい、飛んでいる」

 ユリルが声を上げる。

 リリィは、手を振って俺たちを見上げていた。

「おばあちゃーん、行ってきまーす!」

 俺たちは、上空へ上り続けた。

 やがてリリィの姿は、米粒みたいに小さくなった。

 ジオラマサイズの荒廃した大地が、遠くまで良く見える。

 殺風景な景色だ――。

 単色の砂と岩山が、どこまでも続いているだけの世界。

 その世界が、ビリビリと雷に包まれる。

 俺たちの見ていた景色が、地球儀を回すように回転を始めた。

 時間が、遡って行く――。

 荒れ果てた荒野は、徐々に緑に色づき始める。

 干上がっていた海に、水が溢れ出す。

「見て! 海よ」

 アヒルが叫んだ。

「あれが……海……?」

 ユリルは、その景色に見とれていた。

 そうか……ユリルは、初めて海を見るんだな……。

「青くて……綺麗……」

 その青い大海原に、漆黒の影が差す。

 大空を羽ばたく大きな翼が見えた。

「あれは!?」

 俺は、アヒルに問い掛ける。

「……竜よ」

 遠目でしか分からないが、黒く巨大な生物は縦横無尽に空を飛び回る。

 その羽ばたきは竜巻を起こし、耳を切り裂く咆哮は大地を揺らし、燃える息吹はすべてを焼き尽くしていた。

「ひどい……」

 ミネルバが口を開いた。

「あの竜が、この世界を死に追いやったのよ……」

 アヒルは、首を横に振りながらそう言った。

 ユリルの表情は険しく、竜を睨み付ける。

 真っ白な城と、その周りに住居が建ち始める。

 いや、壊された建物が元に戻っているんだ。

 やがて、大空に竜の姿は見えなくなる。

「この辺りの時代でいいはずよ」

 アヒルの言葉に、俺は返事を返す。

「わかった」

 俺が大きく息を吐き出すと、時間の巻き戻しは終わった。

 俺たちはゆっくりと下降していく。

 青々とした緑に囲まれた、真っ白で美しい城が見える。

 それを中心に、町が広がっていた。

「綺麗な町……」

 ユリルが呟いた。

 平原には動物が群れを成し、森の中には獣が獲物を追いかけている。

「こんなにも緑が広がっていたとは……」

 ミネルバも驚いている。

 これが、この世界の元の姿……俺のきたかった、ファンタジー世界――。

 俺たちは、城の屋上にある魔法陣の上に降り立った。

 この場所から町が一望できた。

 夜空には、満面の星々と大きな満月が浮かんでいる。

「懐かしい……この場所」

 アヒルは辺りを見渡した。

 過去に戻れた……崩壊するよりも前の世界に……。

「うおぉぉぉぉっ!」

 俺は嬉しくて、叫び声を上げた。

 パチン――。

「いてぇっ」

 アヒルの羽が、俺の頬に命中する。

「静かに! 私たちは今は部外者だから、この場所にいるのはまずいのよ……」

「すまん……つい、嬉しくて」

「いったん、町に降りましょう」

「城の兵士とかに、見つからないようにしないとな」

「ここは、魔導師の宿舎になっているの……だから、堂々としていれば、気づかれないわよ」

「私も魔導師に見えるだろうか?」

 ミネルバが、心配そうに呟いた。

「剣を持ってるし、王宮騎士のふりをしていれば大丈夫よ」

「本当かよ!?」

「そうか……分かった」

 ミネルバは納得したようだ。

 アヒルに先導され、俺たちは城の中を進んだ。

 そして、誰に声を掛けられることもなく裏口から城を出た。

 警備緩すぎだろ……。

 木々に囲まれた坂を下ると、町明かりが見えてくる。

 アヒルが、ミネルバの腕の中で騒ぎ出した。

「この道、良く通ったのよー! 早く行こー! 早くー! 楽しみー」

「分かったから、騒ぐな」

 町の入り口には、鉄格子の門があった。

 そこに見張りの兵士が二人立っている。

「大丈夫かな?」

 ユリルは、不安そうな声を上げる。

「平気よ……任せて」

 アヒルは兵士に声を掛けた。

「お疲れ様ーっ」

 そして、そのまま当たり前のように町に入った。

 俺たちも後に続いた。

「ほうらね、大丈夫でしょう?」

「警備が緩すぎて、そっちの方が心配だよ」

 町は夜なのに、人で賑わっていた。

「アトラントシティも賑わっていたが、それ以上だな……」

 ミネルバはアヒルを連れて、商店を見て回っている。

「こっちよ」

 アヒルが手招きする。

「ここよ、ここ!」

 アヒルに案内された場所は、飲み屋のようだった。

「行きつけの店なのよ」

「王女なのに、城下町の酒場に行きつけってどういうことだ?」

 アヒルは俺の言葉を無視して、ミネルバと一緒に入って行った。

 あの態度、なんか隠してるな……。

 店内に入ると、筋骨隆々のヒゲ男たちが大声をあげて飲み交わしている。

 側には、斧や剣が置いてあった。

 この人たちは、いわゆる冒険者かな?

 なんか、ファンタジーの雰囲気が感じられ、胸が高鳴る。

「きゃははははは!」

 男たちに混ざり、ひときわ目立つ超大盛り上がりの女がいた。

「ちょっとー!? あんら、私のお酒が飲めないって言うにょー?」

 かなり泥酔し、ろれつが回っていない。

 男の首に腕を回し、酒を勧めている。

 あの女の口調……アヒルに似ているな……。

 俺はアヒルを見つめた。

 一瞬目が合うが、アヒルはすぐに目を反らせた。

「こりゃー、あんたら!」

 女は、俺たちに向かって大声を上げる。

「ここはお子しゃまのくる場所じゃにゃいのよー! 早く帰んにゃしゃい……げふっ」

 あぁ……このしゃべり方……泥水っぷりは……。

 俺は、女の顔を見つめた。

「にゃによあんたー、じろじろ見てー。私の顔に、な……ひっく……なにか文句ありゅわけ?」

 俺は、背を向けているアヒルに向かって言った。

「こいつ……アヒルだろう?」

 何も返事をしない。

 アヒルは、明らかに動揺している。

「あーん? 誰がアヒリュよ……」

 女は、俺の頬をつねる。

「いててて……」

「舐めたこと言ってっと、魔法で焼き殺しゅわよ!?」

 女はテーブルの上に立って、両手を広げる。

「私はねー、天下の大魔導師! ローズ・マリー様よーっ! あははははは」

「よっ、ねぇーちゃん! いいぞーっ」

 周りから野次が飛ぶ。

 やっぱり……。


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⇒ 次話につづく!

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