れいわ

勝利だギューちゃん

第1話

妹がいた。

しかし、逝った。

あっけなかった。


早くに両親を亡くし、親戚を盥回しにされた俺と妹は、、

ようやく父の兄の伯父さんのところで落ち着いた。

高校までは、行かせてもらえた事は、伯父に感謝している。


しかし、その後は就職しか、選択肢はなかった。

そして、独立をし、妹と暮らす事になる。


生活のために、妹を養うために、そして、妹の学費のために、

俺は、がむしゃらに働いた。


妹も、俺を支えてくれた。

仕事が忙しい、俺に変わって、友達の誘いも断り、

主婦業を行ってくれた。


そう、兄妹助けあって生きてきたのだ。

俺にとって、たったひとりの信じる事の出来る存在。

それが妹の、レイだった。


末長く、兄妹仲良く暮らせる物と思っていた。

しかし、神様とは残酷だ。


これが、事故や殺人なら、相手を呪う事も出来る。

妹が自殺だったら、守ってやれなかった、自分を責める事もできる。

最初からわかっていた病気なら、何とかしてあげた。


それが、流行病にかかり、あっけなく逝った。

苦しみが少なかったのが、せめてもの救いだが、

やはり、何もかも信じられなくなった。


自暴自棄になった。


通夜や葬儀は行わなかった。

行えなかったではなく、行わなかった。


レイの死を、認めたくなかったからだ。


幸か不幸か、俺は酒は飲めない。

なので、酒に溺れる事も、出来なかった。


いつしか俺は、ふせってしまった。


もう、どうでもいいや・・・

このまま、俺も逝こうか・・・


『だめだよ。お兄ちゃん』

「レイ?幻聴か?」

『違うよ。私はお兄ちゃんの目の前にいる』

すると、レイの姿がはっきりと見えた。


「レイ・・・生き返ったのか?」

『まさか、私は幽霊だよ』

幽霊でもいい、また一緒に暮らしたい。


『お兄ちゃん、私は今、向こうで準備をしてるんだよ』

「何の?」

『お兄ちゃんを迎える準備だよ。歓迎会』

「そうか、それならすぐ支度を・・・」

『だめだよ。お兄ちゃん』

「どうして?」

『時間かかるから、なるべくゆっくり来て』

「どのくらい?」

『60年くらい』

「そんなに待たせるのか?」

『招待された時は、遅れて行くのが礼儀だよ』

確かにそうだが・・・


『お兄ちゃん』

「何?」

『お兄ちゃんの名前は?』

「和(かず)だけど・・・忘れたのか?」

『私の名前は』

「レイ」

『だよね』

「何が言いたい」

レイは、ニヤニヤしている。


『わからない。お兄ちゃん』

「ああ」

『私たちの名前を合わせてみて』

「れいかず」

『私の名前の漢字は?』

「令」

『もう一度合わせて見て』

「令和」

ようやく気がついた。


『そ、2人合わせて令和だね。これからの時代だよ』

「何が言いい」

『こらからも、私はお兄ちゃんの、そばにいるってこと』


目が覚めた。

夢だったのか?


そっか、時代は平成から令和になったんだ。


『お兄ちゃん、私は見守っているからね』


そうだ。

妹のためにも、俺はがんばろう。


いつか向こうで再会した時に、誇れるように・・・

そして、少しでも美味しいご馳走が、食べられるよに・・・

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れいわ 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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