第36話 12月27日

今日は朝から雨が降っていることもあり、観光は少し控えめにレトロな感じの喫茶店で時間を過ごしていた。


「やっぱりこういう美味しいものを食べているときは生きている感じがするよね」

フレンチトーストを食べながらつぶやく何気ないすずさんの言葉に、佐々木さんと僕は相槌を打つしかできなかった。


時々土砂降りになる雨が僕たちの不安を煽るようであったが、すずさんの変わらぬ笑顔を見ていると、雲一つない晴天前の一つの余興とも思えた。


なかなか雨がやまないこともあり、すごすごとすずさんのマンションに戻り、買ってきた中華料理の総菜をさかなにサンミゲルで乾杯した。

「サンミゲルって香港じゃないよね?」

佐々木さんが少し不満そうに喉を潤していた。

「でもサンミゲルって飲みやすいですよね。フィリンピンでしたっけ?」

僕は一応話を広げるべく努力をした。


「そんなのどこでもいいじゃない。佐々木さんにはもっとコクがあった方が良かったかな」

「まあ、喉を通れば一緒だから良いんだけどね」

僕の努力も空しくすずさんと佐々木さんの話は簡単に終えた。


テレビに映るコメディーのような番組をだらだら見ていると、少し眠気がやってきたので、それぞれの部屋に分かれることにした。


丸一日降り続けた雨は、すでに小雨になっているようだった。

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