第13話 その道のヤバイ人よりヤバイ女
時間にして朝の七時。朝シャンガンギメした俺、窓を開けると、ううむ、快晴、さてさて今日は新垣が自身のあの豪邸にて何らかを催す模様。しかし
行くのは陣内と
そして、昼に新垣邸に着いた陣内が、俺と遥さんは体調不良であることを告げる。
そう、つまり俺と
ふんふん鼻歌を口ずさみながら今日の服を選ぼうかとでも考えた時、俺の携帯にピコンとお知らせ音。
何だろ。遥さんかな。
携帯の画面には一文、陣内からのLINEだった。
『ごめん、
え、何に? とか思った瞬間であった。
「あ、兄い」
「どうした、愛衣ちゃん」
信じられないようなものを見たとでもいうような顔をしている妹。
尋ねると、頰を引きつらせながら、愛衣ちゃんは何とか答えた。
「ベンツ。しかもすっごくなーがいの。生ベンツ初めて見た」
驚嘆する妹よ。ベンツの感想は別にいい。何で今、クソ長いベンツの話になったのか。
「……見たってなんだよ。外に停まってんの?」
「うん、なんかうちの前で停まってるよ」
うちの妹もそんなつまらん冗談を言って俺の気を引こうなんてまだまだ可愛いところがあるじゃないか。
玄関の方へと歩いて行き、確認の為、何の気なしに扉を開ける。
大体、うちの前みたいなそんなに広くない道にベンツで走ってる馬鹿みたいなやつがいるわけが……。
「ごきげんよう、妻ぶ」
ガチャコーン! と扉を閉める。チェーンを大慌てでかける。ヤバイヤバイヤバイヤバイ。なんかいた! なんか今日会っちゃいけない奴いた!
おっかしいなぁ。寝ぼけてんのかなぁ。
「
「俺は強盗した立てこもり犯か!? なんなんだよ一体」
壊されたら敵わんので、結局玄関扉を開けてやってしまった。
すると思わず息を飲む。
名古屋駅でこいつと買い物行った時とは全く違う、ザ・お嬢様と言えるような、黒のパーティドレス。また金髪と金眼にひどく映えてやがるので、こいつに似合ってやがんの。てゆうか、テスト終わったぐらいで、そんなパーティドレス着てお疲れ会やるの? 庶民派のお疲れ会なんて、制服でガストで山盛りポテトが関の山のはずなんだけどなぁ……。
「迎えにきたの」
「お前直々に?」
「ええ、こちらが誘ったのですもの。その辺はしっかり手厚くしないと、新垣家の名が廃るというものです」
「廃らせとけそんなものは」
「ふふっ、私と結婚して一緒に廃らせてくれますか?」
「おっそろしいこと抜かし始めたこの女ァ! ってあれ、あの執事いたんじゃ?」
「才原はいませんよ。さっきのはハッタリです」
「このアマ……」
向こうは完全に最初から俺が逃げるのを予期してこの手で来ることは決めてたのだろう。してやられた……俺の作戦完全に破られた。陣内が謝ってたのはこれかよ。出迎えシステムなのね。体調悪いフリもせずに外に出た時点で既に詰んでいたという罠。
「もう生徒会の皆さんら別の車に乗られてますので、妻夫木くんもどうぞ」
「いや、そんなパーティ姿のお前見て見たから言うんだが、俺Tシャツのまんまなんだけど、これでいいのか?」
「こっちでそんなの見繕いますから、さっさと来なさいな」
「え? は? ちょいちょい待て! 見繕うってなんだ!? 俺に何させる気だ!?」
「服を買って、着せる。その為だけにこんなに朝早くから私直々に来てあげたんでしょう?」
「いや知らんし! ありがた迷惑って言葉知ってる!?」
「大丈夫大丈夫。迷惑だなんて一ミリも思ってませんから」
「思ってんの俺えええ!」
「うるさいわねぇ……才原」
パンパンと新垣が手を叩いた瞬間であった。
「
は!? さっきいないとか言ってたくせにまた忍者の如く現れたぞ目つき悪執事! ……って、うおんぉ!? いつのまに俺は
俺が、金髪の女の子に首根っこ引っ掴まれて黒塗りの高級車に連れていかれてしまうのを妹は見ていたらしいのだが、後々聞くと、この時妹はこう思っただろう。
いよいよ兄貴がその道の人に連れてかれてしまったと。
違うんだ妹よ。その道のやばい人より、ぶっちぎりでイカれた女に連れてかれちゃったんだぜ……ハハッ。
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