第10話 じんない……お前だったのか。
二人で裏部屋から戻ると、ポツンと書記の席に座る
「あれ、帰んのか?」
「まー副会長目当てで来ただけですし。面白い事も聞けたし、このままだと勉強集中しないでブッキー輩と会長問い詰めちゃいそうですしねー」
「よし、ぜひ帰れ」
こいつ、勉強云々に関しては結構クレバーなのだろうか。にしても力になってやろうとか思ったの撤回だぜ。まぁ、元々俺の為でもあるけどさ。
けど、こいつとくっつく
「何にこやかな顔してんですか。ブッキー輩。きもー」
「うん、早く帰れ」
「じゃーねー、柴咲」
「はい、会長、石原先輩、さよーならー」
「さよなら」
「俺は……?」
さらっと帰っていく柴咲。もうアレかもしれない。プライドを傷つけられない方法とかいう内容の自己啓発本を図書館で借りてくるべきかもしれない。
扉を閉める柴咲を見送り、堪らずため息を吐くと、何故か隣の席の遥さんがガラッと立ち上がった。
「ごめんなさい」
「え、ど、どうした急に」
「会長さんに……バレちゃった」
申し訳なさそうな顔……さっきの柴咲の態度と相まって、本当この子天使なんじゃないかと錯覚するよね。
「いや、まぁ、俺も相談せずに昂輝に言っちゃってるし、怒ってないよ?」
「そう、なの?」
「うん。何でバレたのかぐらいは気になるけどさ」
言うと、遥さんは陣内を一瞥してから、重々しく告げる。
「実は、
「え、そうだったの?」
「妻夫木と仲良い女子なんて私しかいないからねー。相談する相手限られてくるよね」
「おーっと、それ以上は傷つくぞ」
陣内さん、いくら本当の事でもオブラートに包んでくれないと。うっかり赤ピアスのソバット喰らった時より心が痛い痛い。
え、あれ? でも待てよ? 相談してたって事は……。
「遥さんも、俺の事好きだったって事?」
「あーうん、私も聞いた時驚いたけどね。だって妻夫木から石原さんが好きって話聞いた日と同じ日に、石原さんが妻夫木好きって話聞いて驚いたもんね本当」
「それって……あー、自治会に要請しに行った日か、え、あん時話せるタイミングあったか?」
「帰りの電車でね。新垣さんいなくなった後だけど」
「それまたナイスタイミングだな」
なるほど、さっきの陣内の態度やらなんやらが全て合点がいった。
こいつには、新垣との事も、遥さんとの事も俺の口から全部話してあるわけだから、新垣との遥さんがいざこざにならないように配慮しつつ色々立ち回ってくれてるわけか。え、いい奴かよ。いい奴だけど。
「で、色々アドバイスくれたの」
「アドバイスって……こいつのアドバイス当てになったのか?」
遥さんに尋ねると、ガッツポーズで答えてくれて超可憐。
「なった。勉強会の日もそれで、付き合えたのかなって」
「…………」
そういえば、あの日一つ、完全に遥さんについて予想外の事態がありましたね。
あれもう本当永遠の謎として生涯をかけて解き明かしていく予定だったんだけど、まさかここで解けるのか。
「まず、ご飯。新垣さんの弁当は凄かったって孝宏くんが言ってたから、趣向を凝らした方がいいって」
「あぁ、自家製パンのサンドイッチ! あれ超美味かった。パンフワッフワで! そうか、陣内に言われてだったのか」
「うん」
遥さん……俺の為に陣内に聞いて色々と頑張ってくれてたのかよぉ……泣きそうだぜぇ。陣内、お前、恋愛ごとにおいては頼りにならないポンコツ女だと思っててごめん。俺は今猛烈に感動してる。
「あと、勉強会の時の服装、元ヤンキーだから露出高いの好きだって」
「オイ陣内」
俺の感動を1秒で無かったことにする陣内さんやっぱり陣内さんですわ。
突っ込まれた陣内はこっちを見て俺に尋ねる。
「石原さん可愛かった?」
「うん、もう超絶可愛かった。ありがとう陣内」
感謝しかなかったですね。下品じゃない感じの露出がね。遥さんに相当に似合っててですね。神でしたわ。
「というわけで、二人とも好き同士、上手く付き合えた事を祝福しまーす。パチパチ」
「あんがとよ」
「ありがとう」
二人で照れ臭く礼を言うと、陣内はニッと笑い、しかし、すぐさま顔を真面目に戻して人差し指を立てた。
「でも、新垣さんの事、忘れてないよね?」
……それですよねー。ほんまどないしまひょ……。
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