第8話 ホワイト・ファングで検索しような。
何で
「石原は一緒じゃなかったのか?」
尋ねると新垣はあーっと、ちょっと返事を濁す。
「途中で陣内さんに捕まりました。私もついて行こうかと思ってたのですが、先に行っててと言われたので」
「陣内に?」
なんなんだあいつ。
てゆうかどいつもこいつも帰ってテスト勉強でもしてろよ。俺と遥さんの二人で帰る計画がぁ……いや、待てよ。ここで新垣を地味に引きつけておけば、昂輝がテストで危なげなく一位を取れるかもしれない。
幸い、
「二人は何を話してたんですか?」
会計監査の席、つまり向かい合わせになってる俺と
「どうやったら副会長を落とせるかって話をしてたところです」
「え、
なんで俺やねん。
「驚いているところ悪いが俺はそっちもストレートだ」
「ストレートに副会長が好きと」
「お前絶対分かってて言ってるよな?」
「ふふっ」
新垣がさも楽しげに笑うのを見て睨むと、柴咲が訳が分からなそうな顔をしている。
「そっちも? ストレート?」
「妻夫木くんは感情が真っ直ぐで、恋愛対象も、異性って事です。海外だと異性愛者の事をストレートとも言うので」
「ほぇー、ブッキー輩変なところで無駄知識持ってますよね」
「変なところ? 無駄知識?」
このアマ、ちょいちょい無駄に俺を傷つけるのだが、素直に褒めんかい。
今度はこっちを睨んだのだが、すかさず新垣は話を戻す。
「会計さんが、福山くんを好きって話でしたっけ」
「おい、一応俺も会計さんだぞ」
「妻夫木くんの役職は生徒会忠犬でしょ?」
「そんな役職あってたまるか……」
「名札作ればイケます!」
「イケねぇよ。柴咲後で泣かす」
いかん、この調子で二大ストレスに挟まりながら時間を稼ぐなど、俺が死ぬ。まず間違いなく発狂する。
俺が余計な茶々を入れたからこうなったのだ。真剣に柴咲の事を話せば、普通にそれなりの時間稼ぎとなるだろう。
「てゆうか、驚かねぇの? 柴咲が昂輝好きでも」
「まぁ、そうだったんですねー。ってなるだけというか。福山くんモテますし。これが妻夫木くんだったら、この世の
お前世の理を
一抹の期待を胸に輝かせた瞬間であった。
「背く変わり者もいるでしょうけどね」
こちらにガッキーウインクバチコーン。はいはい、私は背いてますよってね。いいからそういうの。あと誰が世の理から背く者じゃ、一昔前のヒロだったら超絶喜びそうなフレーズやめろ。
「ブッキー輩に捕まるのなんて、多分ヤンキーに趣味押し付けられたら、拒めないようなへにゃほわ女子だけですよ」
「へにゃほわ女子ってなんなん……」
こんのアマ、遥さんがへにゃほわだと!?
いや待てよ、話しかけられるだけで幸せで力が抜けて【へにゃ】へにゃになるし、【ほわ】ーっとした優しい感情で世界が輝いて見えるようになる女子、へにゃほわ女子じゃん。遥さんまじえんじぇー。
「まぁ、逆に妻夫木くんを調教してへにゃほわにするという事もあり得るかと」
「恐ろしい事を平気で抜かすんじゃねぇよ……」
とりあえず、執事の銃でビビらせて【へにゃ】ったところをすかさず、【ほわ】イト・ファング浴びせるんでしょ? 左右のコンビネーションパンチで、俺を文字通りノックアウトなんでしょ?
こわっ、へにゃほわ女子! そんなん
震えを止めるために、遥さんが1人、遥さんが2人と数え始め……おい、遥さんが2人とか圧倒的な光で俺が滅するわ!
よし、震えが止まったぞ。
てな感じで妄想で恐怖と戦っていたのだが、いつのまにか柴咲がジーッと新垣を見ている。
「……どうしました? 会計さん」
尋ねられた柴咲は、どう言ったもんかを悩んでいる様子だったが、おもむろに口を開く。
「新垣先輩って……もしかしてですけど、ブッキー輩の事、好きだったりします?」
悩んだ意味とは!? 超豪速球!! 少しは変化させて!?
問われた新垣は、待ってましたと言わんばかりにニコッと微笑む。
「えぇ、その通りです」
その瞬間、一番聞かれたくない人物が扉を優しく開けていたことに、俺は今気づく。
「こん……にちわ」
「……お、お疲れ様〜」
言わずもがな、面食らっている遥さんと、ものすごーく気まずそうな
……いやあああああああああ!!(心の叫び)
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