エルカエレミア -Rydias erl Altasia-

こけもしん

はじまりの光:〈アルタシア〉

 このケルドの大地が〈災いの地〉と呼ばれる以前の文明については、多くのことはわかっていません。少なくとも今よりずっと高度な文明があったと言われています。しかし、それは〈災いの門〉から溢れた病魔や災害、天変地異によってことごとく喪われてしまいました。これを、私たちは〈大崩落〉と呼び、記憶しています。

 混沌が世を覆う中で、多くの命が犠牲となりました。人々は悲しみに暮れ、絶望が地を満たしました。そこへ、星の声に導かれてひとりの旅の騎士が現れます。これが今日〈アルタシア〉の名で呼ばれている、私たちの希望の光です。

 アルタシアは銀の鎧にふた振りの剣を携え、混沌の神ダーナトラムと戦いました。その戦いを、運命神ユークレクスをはじめとする十二柱の神々が見守りました。七日七晩の戦いの末にダーナトラムは封じられ、ケルドの地は夜明けを迎えます。

 人々はアルタシアを称え、どうかこの地にとどまり、自分たちを導いてほしいと願いました。しかしアルタシアはいつのまにかどこへともなく姿を消してしまいます。人々は落胆しましたが、安寧が取り戻されたことは喜ばしいことでした。アルタシアの慈悲深さと勇敢さは人々の記憶に鮮烈に刻まれることとなり、千年の時を超えて今日まで伝わっています。

 アルタシアは、時に少年であり、時に少女であったと言われています。それが伝聞によって生まれた誤解であるのか、かの騎士が二つの顔を使い分けていたのか、真実はわかりません。最後まで名乗らなかったという彼を表す呼び名は多くあります。希望アルタシア、光、秩序、乙女、そして——銀剣の騎士と。

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