第27話 リアス大森林の秘密1

本当に、おそらく2年ぶりの投稿、ブックマークを解除せずにいて下さった、読者の皆様。お待たせして申し訳ありません。


受験が終わり、新生活も落ち着いてきたところで、そろそろ投稿もぼちぼちしていこうかと思います。


どうしようもない駄文ですが、少しでも皆様に楽しんでいただけたらと思います。


ーーーーーーーーーーーーーー



ダンジョンから帰還して、数日が経過した。


村の目まぐるしい発展も落ち着き始め、ルクシオ達は何事もない日常を過ごしていた。


「う〜む。村の発展はもうできるとこまで進んだ気がするし、かと言って、暇なのも久々で少し落ち着かないなぁ〜」

「そんな事言ったて、別に村の発展なんて無理に推し進める必要はないし、暇なのはそれはそれでいい事じゃないかしら?」


ルクシオの傍で、猫を撫でながらそう言うルミナ。


「……その猫どうした?」


「さっきそこで拾ったの」


事もなげにルミナが答えた。


「なんでリアス大森林の中に猫がいるんだよ。猫は埃と違って沸くものじゃないんだが」


「きっと神樹に導かれてきたのね」


「なぁ、ルミナ。

これは決して悪く言っている訳ではないんだが、エルフって無闇に神樹を盲信しすぎてやしないか?

この前だって、俺神樹の葉っぱもぎ取って食べてたんだけどさ〜」


「えっ、待って何やってんのアンタ!」


「まぁ聞けよ。神樹はエネルギーを蓄えてるから、その葉っぱ食べれば俺も少しはパワーアップするかなとか思って、ちょうど落ちてきたやつ食べたんだ。それを村のエルフに目撃されてな、「そんな罰当たりなことするんじゃない!」って怒鳴られたんだけど」



ルミナは困惑を浮かべ、不可解な面持ちで言った。


「えっごめんなさい。それは当たり前だと思うんだけど……」


俺もそう思うよ。

罰当たりと言われたことは俺もそれは至極当然だと思う。


けど、


「その後「そんな事したらお前の頭から神樹・・が生えてお前は死ぬぞ!」と言われたんだ」

「それは………」

「それは?」


ルミナは、ルクシオの語る当時の惨劇を悟ったのか、瞠目し完全に言葉を失った。


ルミナが言わんとすることを想像するには難くない。


流石に「頭から神樹が生える」というパワーワードを、ルミナの処理が追いつかないらしい。


俺もあれは、即座に「いやそれはないだろ」と突っ込めなくて、もうこいつ「頭荒れ果ててるな」と憐憫の思いだった。



「それは、どうかしてるわ」

「長考した割に、コメントが雑だな」

「だってッ!……それは、その。仕方ないじゃない!


その人は、どんな顔して言ったの?」


ルミナは混乱から一転して、神妙な面持ちで聞いた。


「聞きたいのか?……確実にまじだったぞ」


「うそ、そんな。私達エルフの中に、そんな狂人がッ……」


ルミナは戦慄して身震いさえしてみせる。


狂人って、まぁ、でもそうだな。

あれは確かに狂人の類いだな。


俺も、少し怖かったし。


「ごめんなさい、私そんな事言う人に覚えがないわ。私達エルフは神樹と共生してきて、幾度も恩恵を授かって繁栄してきたの。だから、確かに中には神樹に対する侮辱に過激な人もいるけど、でも、そんな、まるで……」

「大変態も顔負けの狂人ガチ勢」

「……そう。そんな人がいるなんて、信じられないわ」


ルミナ、一瞬今の例えにたじろいだが、認めたな。



エルフみんなが、狂信してるわけではないのか。


少なくともルミナがまともで良かった。


「ルミナ、どうかずっとそのままでいてくれよ」


「えッ!?何よいきなり!」


「えっ?いてくれないのか!?」


2人とも誤解した。


ルクシオは、いずれルミナもあんな狂人になるのではないか?、と。


ルミナは、言ってしまえばプロポーズと受け取ってしまった。


と、そんな時。


「ばごぉぉぉぉぉぉぉんーーーーーーーー」


「また爆音だ!一体どうなってるんだかここは!?」


「凄い揺れたわよ!」


俺はまた厄介ごとかと、すぐに家を飛び出して周囲確認を行う。


すると、大森林の方から濛々と立ち込める煙が目に入った。


「大変です、ルクシオ!」


フィアナが息を切らして走ってきた。


「また森の中で何かあったのか!?」


「実は、その……とんでもないものが見つかったんです!」


「そうか、とりあえずエルフは死んでないんだな?ついでに魔物も乱舞したないんだな!?」


「え?……えぇ、はい。それはないですけど。とりあえず、来てください!とんでもないものが……!』


フィアナは要領の得ない言葉を並び立てる。


随分動揺してないか?

あんまり良い予感はしないんだけどな……。


まぁ、俺は行くしかないな。


「分かった。とりあえず案内してくれ。ルミナ!」


「準備はもうできてるわ!」


ルミナに準備をしてくれと頼もうとしたら、すでに済んでいて、俺の剣を抱えてルミナが立っていた。


「よし、行くぞ!」



リアス大森林は未踏の地。


フィアナがとんでもないものと呼ぶのだから、今回も確実に、相応のものなのだろう。



どうか、お願いだから!



変なことは起きないでくれ!



切実な思いを胸に、俺達は駆け出した。






ーーーーーーー





リアス大森林に来て、想像絶するという体験を幾度もしてきた。


神樹に、エルフ、精霊、迷宮。

度し難い魔族との遭遇。


伝説はまやかしでもなく、確かにこの地に芽吹いている。


何が起こっても不思議ではない。それも、矮小な人間では想像のおよびも付かないものが起きるのだと。


言い聞かせて、少し知っているつもりだったんだ。



でもやっぱり違うんだ。



俺は間違っていたんだ。



きっと永遠に、俺はこの森林のことを理解できないと、そう悟った。



「これ、明らかに人工物よね?

なんでこんなものが?」


「凄いですよ!これは、本当に、もう!リアス大森林は不思議が付かなくて興味深いです!感無量です!!!」


ルミナの反応は当然。

フィアナは、この人工物に溌剌な性格に刺激を受けたのだろう。目を輝かせている。



目の前にあるのは、壮大な樹海の中でも一目で分かる、一際大きな、大砲だった。


長年放置されていたのか、土に埋もれていたのか、表面はツルや土埃などが付着しているが、その全容を知ることができるぐらい、原型がはっきりした巨大大砲。




……。確実に古の大戦で使われた砲台だな。


そう判断して間違いない。



「うおすっげ!なんじゃこりゃ!」


「マジにとんでもないな!」



音を聞きつけた村のエルフ達が、あちらこちらから姿を表す。


このエルフ達。


さっき樹海を「ヒャッフー!」と奇声を発しながら颯爽と駆け抜けていた連中だ。


エルフは森の精霊。身体能力も高いが、これはまるで猿だ。


そう。彼らは猿さながらだ。


「にしても、古の大戦の遺物かな?なんで突然出てきたんだ?」


「俺が、ここで巨大な岩を地面に叩きつけたんだ」


背後に立っていた、格闘家の風体をしたエルフがそう言う。


「……なぜそんなことを?」


「トレーニングだ?」


「何のための?」


「腕力強化」


「これからは別の手段で鍛えてくれ。この森にそんな衝撃を与えないでくれ」


「……分かった」


渋々とこうべを垂れる格闘家。


誤作動でも起こったら大変だ。



「これすげぇ!デケェ大砲だ!」


溌剌な声。子供の無邪気な声だ。


それだけで俺は蒼白した。



セータが大砲の上をよじ登っている。


「やめろぉぉ、セーターぁぁぁ!!!!!」


「なんだよルク兄。そんな叫び声みたいな声出して!」


「みたいじゃなくて叫び声だ!とにかく降りろ!危険だ!大砲が作動したらどうするんだ!」


「だいじょぶだって!錆び付いてっから動きはしないって!」


「するんだよこの馬鹿野郎!早く降りろ!!」


「おい、俺の息子を馬鹿呼ばわりするんじゃない!」


背後から怒声が耳朶をうつ。


「はぁ!?息子?」


声の先をみやると、格闘家である。


「セータはテメェの息子かこのクソ格闘家が!!!」


「クソとはなんだクソとは!?クソと言った方がクソなんですぅ〜〜!!!」


「テメェがクソだよ!親があれなら子もあれか!お前親なら注意しろ!少なくとも、今!あの得体の知れない大砲に触っちゃ不味いことくらい脳筋でも分かるだろ!?」


「誰が脳筋じゃおどれ!貴様脳天かち割るぞ!オ!?」


「いいから、早く止めッ」


ガゴン!


大砲の向きが、里の方に切り替わった。


おい。


にわかに、砲台にエネルギーが集まっていく。


エルフ達がざわめき始めた。


おい……。


エネルギーは徐々に膨れ上がり、決壊寸前まで溜まって……!



「やっちまった」


セータがそんな声を漏らした。



「だからやめろっていたじゃねぇかーーーーーーー!!!!!!」









悲報。


里が燃え尽きた。

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