荒野を去るとき

@zushiyukitaka

荒野を去るとき

目を閉じる夜空の隙間から

輝いたのは遥かな旅路

この体では決して歩めない

あの人は去っていった


幾つもの日々が幕を下ろす

重い扉を閉じられない

来た道はたった一つなのに

どこへでも進めてしまう


ここはもう荒れ果ててしまった

草が少し生えているだけさ

川を遡り蝶を追いかけ

木々を愛した日々は

もう来ない


荒野を去るとき泣いてしまった

どこまでが僕の姿なのか

分からないほど暗闇は深く

誰も声をかけてくれないのに

北極星がずっと見守ってくれるから

この場所を離れたくない




無限のときを過ごした

寝覚めの風に包まれながら

あの人の腕に抱かれる日々は

どこまでも刻まれ続ける


同じ足跡を辿る旅も

僕にはできないはずなのに

確かに足は歩きたがっている


荒野を去るとき叫んでしまった

どこまでも僕は小さくて

一人で凍える情けない身を

誰にも見せたくないのに

北極星の向こうにあなたがいるから

この声を届かせたい





道標は赤く燃えた

燃殻は消えていった

怖いものが多すぎて怯えていた

僕の心は空っぽになった


悲しみは抑えられない

時間は巻き戻せない

あなたのように強くなりたい

探さなければならない

僕の心を動かす何かを



荒野を去るとき泣いてしまった

どこまでが僕の姿なのか

分からないほど暗闇は深く

誰も声をかけてくれないのに

北極星がずっと見守ってくれるから

どこへでも行ける気がする


ああ今が荒野を去るときさ

あなたにはまだ及ばないから

少しでも追いつけるように

まとわりついた重りを振り捨てた

北極星はもう見えないけど

どこへでも行ける気がする

















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