第45話

 占い師の躰に触れると、加齢と飽食によって蓄えられた堆積物が躰の隅々まで行き渡り、掌が呑み込まれるくらいのしなやかな厚みに、一瞬人間のものではないように思えた。

 弓削は五十年近く歩んできた人生の間に、内外を問わず両手の指にあまる数の女性を経験してきた。いままでに肉付きのいい女と交渉を持ったことがないこともないが、ひと廻りも年齢が上の女性と接するのはこれがはじめてだった。

 徐々に目が闇に慣れてくると、はだけた蒲団から覗く白い裸身がやけに悩ましく見えた。

 弓削は右手を占い師の胸のところにもっていくと、柔らかな感触の乳房を掬い上げるようにして掴んだ。想った以上に張りがあった。乳首をはじくようにして愛撫をした。

 弓削は占い師の閉じ加減にしていた太腿を少しちからを入れて押し開いたとき、その瞬間、弓削は愕然とした。

 占い師の股間には、自分と同じ形をした象徴が同じように屹立していたのだ。それに触れた瞬間、反射的に蛇が身を護るときのように手がすくんでしまった。

「……どうかしたの?」

 占い師は咽喉を詰まらせたような声になって訊いた。

「いえ」

 予想外のことに面喰った弓削は、思わずベッドに坐り込んでしまった。

 占い師は横になったままで下から弓削を見上げながら薄笑いを浮かべていた。弓削はいまだに戸惑っている。

「あんた、いままであたしのこと本当に知らなかったの?」

「ええ、まったく。すいません」

「何も謝ることはないわよ。あたしの我がままっていうのはこういうことなのよ。……でもあんたは約束してくれたわよね、このあたしと」

「確かに……」

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