父さんの夢

勝利だギューちゃん

第1話

好きな女の子がいる。

乃木花真彩。

クラスメイトの女の子。

天真爛漫で自由奔放で、みんなから好かれていた。


そんな彼女に自分は、不釣り合い。

なので、遠くから眺めているだけで満足だった。


俺の家は、父子家庭。

母は、小さい頃に他界した。

父は男手一つで、俺を育てくれている。


さすがに、うざく思う時もたまにはあるが、

父には感謝している。

早く働いて、楽な暮らしをさせてやらないとな。


そんなある日、突然父に呼ばれた。

「なあ、聖也(せいや)」

「どうした?父さん」

「話があるんだが・・・」

「どうした?改まって」

「父さんも、青春を取り戻したいんだ」

再婚したいということか・・・

反対する理由はない。


「いいよ。父さんの好きにしな」

「ありがとう、聖也。賛成してくれるんだな」

「もちろん」

再婚することにより、父の負担が軽くなるのなら、大賛成だ。


俺ももっと、がんばらないとな・・・


「で、その俺の新しいお母さんは、いつ来るんだ?」

「明日、紹介しようと思う。いいか?」

「急だな。いいよ」

「じぁあ、明日連れてくる」

俺は、新しいお母さんとなる女性に合うのが、楽しみだった。


どんな人か、想像した。

職場の人か?それとも、紹介か?

わくわくしながら、その人を待った。


次の日、父に居間で待つように指示された。


なんだか、お見合いの相手を待つみたいだな。


「聖也、いいか?」

「いいぜ」

ついにその時が来た。


「ご紹介!父さんの新しい奥さん、そして、お前の新しいお母さん」

ゴクリ

「乃木花真彩さんです」


「やっほー、聖也くん」

おれは、むせた・・・


「乃木花さん?何でここに」

「何でって、私が新しい君のお母さんだよ」

「父さん、これは?」

「驚かそうと思ってな」

ちょっと待て、犯罪だろ?


「乃木花さんの、ご両親は反対しなかったのか?」

「娘をよろしくお願いしますだと」

「そもそも、何で知り合った」

危ない場所か?

いや、父さんは基本はまじめだ。


痴漢から助けた?

悪いが、俺と同じで、父さんにそんな度胸はない。


うちは不自由はしていないが、金持ちではない。

まあ、金目当てなら、父さんも俺も、追いだすが・・・


「聖也くん」

「何?乃木花さん」

「乃木花さんじゃないでしょ?ママと呼びなさい」

「いきなり言えません」

乃木花さんに、訊いた方が早そうだ。


「そもそも、どこで知り合ったの?」

「君のお父さんの仕事は?」

「カメラマン。人物の・・・って、まさか」

「そう。私はお父さんのモデルになったの。

私からの、逆プロポーズよ」

なんとまあ・・・


「なーんてね」

えっ?


「父さんが再婚するなんて、嘘だよ。

この子とは、カメラマンを通して知り合ったがな」

驚かせないでくれ、父さん。


「じゃあ、何でここに?」

「彼女と結婚するのは、お前だよ。聖也」

何でそうなる?

いや、落ち着け・・・


「お前は、今日18歳の誕生日だろ?」

「あっ、そういえば・・・」

すっかり忘れていた。


「お前は、俺に楽をさせてあげたい。親孝行したいと言ってるな」

「ああ」

「なら、父さんの夢を、叶えてくれ。そのためには、早い方がいいからな」

「なんだ?夢って?」

乃木花さんを見る。


正座をして、頭を下げた。

「ふつつかものですが、よろしくお願いします」

調子が狂う。

まあ、乃木花さんとの事は、後でいいだろう。


「で、その夢とは?」

「それはな・・・」

「ああ」


【玄孫(やしゃご)の顔が見たい】


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父さんの夢 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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