宴会

勝利だギューちゃん

第1話

私はぬいぐるみが好き。

沢山、集めている。

幼稚園の頃から、集め続けていて、捨てる事はないので、

もう、かなりの数だ。


私は、茶山瑞奈(さやま みずな)

女子高生。


高校生にもなって、ぬいぐるみ集めが趣味だなんて、

おかしな話だが、好きな物は仕方がない。


最初のうちは、あきれていた友達も、彼氏も、

今は、協力してくれている。


なので、増える一方だ。

楽しいな。


さすがに、両親はあきれているようだが・・・


でも、そのぬいぐるみたちには、定位置はない。

時々変えている。

それは、気分に寄る物ではない。


なぜなら・・・


私は、自分の部屋に隠しカメラを仕掛けた。

ぬいぐるみが、親に捨てられないのを確認するためだ。


そのはずだった・・・


その日、家に帰ってきて、カメラにあったビデオを見てみたら。

思いもよらない光景が映った。


ぬいぐるみたちが、動き、騒いでいるのだ。


『なあ、さすがに狭くなったな』

『あの人、手当たり次第に増やして行くからな』

『仲間が増えるのは、嬉しいんだが』

『少しは考えて欲しいよね。お局様も、そう思うでしょ?』

『誰が、お局様ですか?』

『だって、一番の先輩でしょ?』

『黙りなさい』


食べたり飲んだり、宴会をしている。

まるで、社会人の酒盛りだな・・・


次の日、私はいつも通りに出かけた。

カメラを仕掛けて・・・


そして、数時間後に戻ってきて、ドアを開けた。

ぬいぐるみたちが、宴会をしていた。


私は、何も言わずに眺めていたら、ぬいぐるみの方が気付いたようで、

ぴたりとも、動かなくなった。


「もう、遅いよ」

すると、ぬいぐるみたちは、観念したように、話だした。


『いつから、知ってたの?』

「昨日からよ。カメラを仕掛けておいた。気付かなかった?」

『うん、全く』

「で、あなたたちは、何が望みなの?」


すると、ぬいぐるみたちは、。そろって嘆願した。


『この部屋、もう僕たちには狭いです』

『でも、離れたくありません』

『何とかして』

何とかと言われても・・・

私も離れたくないし・・・


そうだ・・・


「あなたたち、まず好きな者同士になりなさい」

『僕たち、みんな仲良しだよ』

『そうだ!バラバラなんて、やだ』


私は、しばらく考えて・・・


「じゃあ、まずあなたは、ここ、あなたはここに・・・」

こうして分けて行った。


『あの、これは?』

「種類別よ」


私はぬいぐるみの中から、哺乳類がモチーフなもの、鳥類がモチーフなものと、

わけていった。


「うん、これで完了」

ぬいぐるみたちは、見事に別れた。


「さてと・・・」

私はまず、鳥類がモチーフにしたものを、全て抱きかかえた。


『僕たちをどうするの?捨てるの?』

「捨てないよ」


こうして、お兄ちゃんの部屋をノックした。

「お兄ちゃん、いる?」

「ああ、入っていいぞ」

「ごめん、手がふさがっていて、開けてくれる?」

すぐにドアが開いた。


「瑞奈?そのぬいぐるみ、どうした?」

「この子たち、お兄ちゃんの部屋に、置いておいて」

「おい、俺にはぬいぐるみを・・・」

「お願ね」

こうして、鳥類をモチーフにしたぬいぐるみは、お兄ちゃんに預けた。


同じようにして、お姉ちゃんの部屋、お父さんの部屋、お母さんの部屋と、

分けたぬいぐるみたちを、預けていった。


こうして、私の部屋には、哺乳類をモチーフにしたぬいぐるみが残った。


『で、僕たちを、どうするの?』

問題はここからだ。


私は、ダメ元であの時の、ビデオを家族に見せた。

そう、ぬいぐるみたちが、宴会をしている、あのビデオを・・・


「まるで、女子会ね」

お姉ちゃんと、お母さんは、笑っていた。


しかし、家族の承諾は得た。

でも、離れたくないので、時々、別の種類分けで、部屋を変えている。


ただ、家は昼間は全員いないので、その間はぬいぐるみたちを、

リビングに集めている。


もちろん、家族の承諾を得て・・・

楽しく仲良くやっているみたいで、何よりだ・・・


しかし・・・


「まあ、いっぱいやれや」

『お父さん、僕、未成年』

「ぬいぐるみが、かたいこというな」

『じゃあ、一杯だけ』

「そうこなくっちゃ」


父は、お休みの時は、一緒になって宴会している。


何やってんだか・・・お父さん・・・


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宴会 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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