第21話城に向かって

「昔の事だ、お前の言うが正しいのがわかった。悪かった、疑うつもりなどなかったのだ」


「構わない、こうなる可能性もある事は想像していたからな」


「ここに来る2日前の事だ、友人が俺を訪ねてきた、俺の友人がある人物を探していると言ってきた。

その人物は、女性で子供を抱える人だと言う、だから心当たりがあるから教えてやったのだ。

その時に聞いた話だ。なんでも学民が外で暮らせるようにするためには動き出したと言うのだ」


「なんだと、あそこは禁忌区域ではないのか」


「そうだ、外へ出て生活する事が許されるわけがないんだ」


「その通りだ、そこにある方がその禁忌区域に現れた。その方が外で暮らせると言い出した。先の話ができずに友人が去っていった、続きは助けに来たやつが教えてくれるとの事だった」


「来るのを待っていれば、いいだけだ。待とう」


「わかった、お前の言う通り待つ、だがもしダメだった時は、お前を殺す事になるかもしれないが構わないか?」


「それでいい、信用してくれるのであればそれで構わない」



エブァンは、警戒しながら歩いていった。地下に通じる廊下を下へと降りて行く。

警告音が鳴り響いているが、特にこれといった人にも会わずに、扉の前にやってきた。


ここか、配下たちは、先に入っていっていたか。扉を押し中に入ると、広い空間が広がっていた。

 四角く囲まれた岩が目の前に現れ、入り口が2箇所左右にあるが左の側3メートルはあるだろう扉、右側1.5メートルある扉かなりでかいな。見る限りそれ以外はないようだった。

ここで何をするんだ。

配下たちが辺りを探しているがそれ以外の出入り口が見つけるのに苦労しているようだ。


「エブァン様、後はこの中だけです、今から下に降りて探します」


「わかった、気をつけろ」


「は!」


配下達が下に降りると、警告音が止まり、左の扉が開き出した。

全てが開き終わると中から、猛獣が姿を現した。

勢いよく配下達に襲いかかってきた。

それが始まると、辺りに誰もいなかったが魔法が解けたかのか歓声が鳴り響いた。

配下達は、戦いながら、様子を伺っている。


(エブァン様、この猛獣完全に正気を失っているようです)


(そうだな、お前達少しの間、遊んでやれ。俺はこの歓声を上げている奴らが逃げてもわかるように追跡魔法を付ける)


(は!)


エブァンの配下達は、共存して生きているからこそ、猛獣の扱いには慣れていたるので、負ける事は無いが、猛獣ここまで正気を失っているのを見ると悲しいんでいた。

猛獣達は、エブァンの配下達と仲が良く正気を失う事はあってもエブァンの配下達や、エブァンを見ると正気を取り戻す。

それが、目の前の猛獣にはその気配が全く無いのだ。

悲しく、魂を震わせながら配下達は相手をしていた。涙を流しながら。

そんな時に、右の扉開ききると2、3体目の猛獣が姿を現した。

異様な猛獣だった。

実験で作られた猛獣なのだと一目でわかる。

1体は、猛獣の体に人間の手足がついていた。

もう1体は、猛獣の体に頭だけが付いていた。

異様な光景に言葉を失ってしまった。

酷い事をするんだ。

配下達も、相手をしているのだが動揺が隠せない様子、あと少し相手をしてもらう。

その間にここにいる奴らに追跡魔法を貼り付けていった。

花粉に追跡魔法を施した。目には見えない花粉がここにいる全てに行き渡ると張り付いていった。取れることのない追跡魔法が。

下にいる奴らを解放してやろう。

後から出てきた奴らが、叫んでいたのがわかった。それは、我々でなければわからない言葉だ。

普通に聞けばただひたすらに叫んでいるだけなのだが、エブァンや配下達にそれは届いていた。


(殺してくれ)


(今回こそ、殺してくれ、早く死にたいんだ)


きっとマリー様なら、なんとかしてくれるのであろうな。

そう思い、追跡魔法を終えたエブァンは、配下をマリー様の元へ行かせた。


マリーは、城に向かい歩いていた。


「エブァンの配下ね、どうしたの?」


配下はマリーの前で跪くと


「ご報告がございます」


「聞くわ、話して」


配下は、ことの真相を話した


「そう、助ける事は可能だけど、助けられるのは、1体だけ、体が壊れすぎている可能があるから下に戻せるかは合わないとわからないわ、それでエブァンがいいというなら、捕獲保護をしなさい、猛獣の正気は戻せるが、魂が砕けている可能性が高いわよ。エブァンにそう伝えてちょうだい」


「仰せのままに」


配下は姿を消した


マリーは配下を通して全てを見ていたが、合わないと詳しくはわからなかった。

ここまでひどくなっているとはね。

城に行けばきっとなんとかなるわね

そう思いながら城に目を向けるのだった。


「エブァン様、マリー様より伝言です」


「…………とのことです」


「そうか、少しでも望みがあるのであればそれにかけたいと思うがお前らはどうだ」


「エブァン様、我々も同じです。我々はここにいる奴らに報いを受けて欲しいのですが」


「今はマリー様がお許しにならない、辛抱してほしい。ちゃんとマリー様の事だ考えくださっているはずだ」


「共存してくれている猛獣を見ると仇をとってやりたい」


「お前達の気持ちは、痛いほどに分かる、今は辛抱の時だ」


「家族に皆を返した後、きっとマリー様がその機会を与えてくださる」


「エブァン様…………わかりました」


エブァンは下に降りると捕獲用の魔法陣を発動し、3体を捕獲保護した。

あっという間の出来事に、歓声の声がなくなっていた。


配下をさらに5人増やし命令する


(これを持って集合場所に行け)


(は!)


配下5人は、それを持って消え去った。




―――――――――――


「何かきたぞ」


集合場所についたエブァンの配下


「お前ら、これはなんだ?」


「イブリース様、エブァン様より、ここで待機しろとの事、この中にある者は、マリー様より捕獲保護のご命令でお連れしました」


「これはまたすごいわね」


「酷い事をしますのね」


「ファティマお前、言葉使い変わってないか?」


「あら、そうかしら?」


「元々はこうでしたの、皆さんに合わせていただけですわよ」


「そうかよ、これを見ると俺達悪魔がするような事をするんだな、俺達がするのは、死体だが」


「イブリースは、そうでも他の人からすれば惨すぎる状況でわないかしら」


「そうかもしれないな」


「マリー様がここで待機とおしゃったのであれば、俺達は、それに従うだけだ、ここを守るだけだ」


「そうね、クオンもいいわね」


「仕方あるまい、我慢をする」


「クオンにしては珍しくなくて?」


「当たり前だ、マリー様の命令は絶対だ」


「それでも、怒りはかなり抑えているわね、魔力ダダ漏れよ」


「クオン、魔力を漏れすぎるとここにいるやつからが死ぬぞ、押さえ込め」


「わかってはいるが、抑えが効かん、怒りを抑えるので精一杯だ」


「失礼ながら、クオン様よろしければこれを」


エブァンの配下がツタを渡してきた


「これは?」


「私どもの魔力を抑えてくれるツタでございます」


「これをつけろというのか?」


「我々は常に猛獣と共存しております。クオン様が苦しんでおられるのであれば、これを身につけるだけでも楽になっていただければと思います」


「よかったわね」


「エブァンの配下に感謝しないと」


「取り外しは、ご自分でできるものになるのでよろしいかと」


「そのツタは、魔力を吸収し、同じツタに流れるようになっておりますので、ここで魔力が溜まる事はありません」


「わかった、付けるとする」


つけた途端、魔力が三分の1の魔力まで抑えられた


「これなら、大丈夫だな」


「今度クオン、抑えの訓練をしないとまずいな」


「イブリースに言われるまでもない、この件が片付いたらそうさせてもらう」


「エブァンは、まだ戻らんのか?」


「それに関して、エブァン様より伝言です」


「大量の人に追跡魔法を施した、戻り次第、我ら全員で追跡を開始するから、各自の配下に伝達するようにと仰せつかりました」


「忙しくなるのね」


「エブァンは、なにかを企んでいそうですわね」


「復讐の機会を与えてくれるかもな」


「エブァンが戻るのを待ちましょう」


―――――――――――


歓声から、悲鳴に変わり逃げ始めた。扉の解除をしてくれたようだ。出口はそこか、なら牢屋他にもかかられている扉はないか探した。それでも見つからず。

あとは、ここか。

猛獣達が出てきた扉だけだった。

配下に右の扉を探させて、エブァン自身は左の扉の奥へ進んだ。


中は洞窟になっていて入り組んでいた。

空気の流れる方へ進んでいくと、広場が現れ円形状に牢屋が配置されていた。辺りを見渡しかなりの人が囚われていたのがわかった。


その中で一箇所の牢屋に小さな光が光っていた。エブァンは、その牢屋に近づいて確信した。

ここにいると。


「助けに来ました」


「待っていた」


「やはり、そうでしたか」


「頼まれていたやつがこいつだ」


「胸の光る者を探せと友人から頼まれた。そいつが助けに来たやつにそう言えばいいとも言われた」


「そうでしたか、マリー様がお探しになっていた方がこの方なのだと言う事なのですね、見つかって良かったです」


「それで、その友人と言うのは?」


「学民だ、それとここにいる奴らにの殆どがそうだ」


「なんて素晴らしいのでしょう、きっとマリー様は、お喜びなられる」


「そのマリーといったやつが俺達に何をする気なんたんだ」


「簡単な話です、禁忌区域で暮らすのではなく、外での暮らしを出来るよう手配をしてくれますのでそこに移住をしてもらいたいのですよ」


「あの話は本当だったのか?」


「ちゃんと説明してくれていたようでなによりです」


「俺達だけ移住って事だよな」


「いいえ、今ここにいる全ての者達とその家族が対象です」


「かなりの人数になるが」


「そうですね、住む場所を提供する変わり、手伝っていただきたいことがあります。難しい事ではないので可能だと思いますよ」


「なにをするんだ」


「家を建て、住みやすく自分達で作ってもらいたいだけです、守りに関しては我々が行いますが、住みやすく開拓をするのは君たちがして欲しいのですよ。そこにはすでに、子供が50人ほど暮らしているのですが、どうも住み心地が悪いようなのですよ。我々の配下が手伝ってくれますから協力して欲しいのです」


「そんな事でいいのか」


「ええ、もちろん、それがマリー様が望んでおられる事なのですから」


「わかった」


「一つ忠告をします。生活していく中で必ず間違いを犯すでしょう。間違いを犯しても構いませんが、次にそれをしないように学び、活かせるようにしたください。それは学民だからこそできる事なのですから、その本業を忘れないでください。マリー様は、それを望んでおられるからこそあなた達を外に出す為に動いていらっしゃることも忘れないように」



「そんな事で、俺達はそのマリーとやらに守られるのであれば安い者だな」


「マリー様を呼び捨てにするのは我々としては気分がいいものではないです。これより呼び捨ては、今後一切しないよう忠告をします」


「学民ならば、それは、どう言う意味かを理解をすると願いますよ」


「ああ、わかっている、いや分かっています」


「いい心がけでなによりです」


「では、ここにいる者達を解放するとしましょか」


(エブァン様大変です、そちらに猛獣が1体向かいました。申し訳ありません)


(そっちに何が起きた?)


(大量の猛獣が囚われておりまして、猛獣達を森に戻していたのですが、怒り狂った一体を取り押さえきれずに、そちらに向かってしまったのです)


(こっちに向かったやつは俺が相手をする、お前達は、解放をしてやれ、時間があまりないからな)


(御意)


「申し訳ない、解除する前にすることが出来た、もう少しそこで待っててくれ」


「どうしたと言うんだ」


「すぐにわかる」


扉の方に体を向けて待っていると、轟音と共に扉を破壊して入ってきた。


「ヴゥゥゥヴゥォォォ」


「お、おい、こいつは」


「そうだ、こいつの相手をしてやらないといけないからだ」


「大丈夫なのか?」


「誰に向かって言っている、大丈夫に決まっているだろ」


「エブァン様、お待たせいたしました」


「戻ったかそれなら、ここにいる奴らに魔力がかからないように守ってやれ」


「は!」


配下は、牢屋の入り口に結界を張っていった


「エブァン様、他には」


「ない、牢屋の中のものを守っていればいい」


「は!」




(おい、あいつは大丈夫だと言っているが本当だろうな)


(勿論だ、この世界で10本の指に入るほどのお方だ、安心しろ)


(そんなに強そうには見えんがな)


(見た目で判断は良くない、見ているといい、一瞬で終わる)


(結果ぎ歪んだぞ)


(当たり前だ、今エブァン様が魔力を解放しているんだ歪みもする、結界が壊れることはないがな)


(どれだけ魔力を出しているんだ?)


(お前達でも分かるように言うと結界を出たらお前達は、魂と体がチリとかして消える)


(なんだって!?)


(普段は解放は、魔力解放などせんが、今いる猛獣は他の猛獣達とは種類が少し異なるんだ、お前らが今まで見てきた猛獣は比較的温厚な奴らなんだが、今目の前にいる奴は戦闘に特化した奴なんだ、もし猛獣区でこいつにあったら、死ぬな。目の前に現れた人をすべて敵と認識しているからだ)


(そんな奴を相手にしているのか?エバァン…さ、まは遊んでいるように見えるのだが)


(エブァン様にかかれば赤子も同然、そう見えておかしくはないな。俺らでは今いる10人では数が少し足らない、相手をするなら20人は、欲しいな)


(そろそろ、決着がつくぞ)


魔力解放、攻撃を避けた。


まずいな、このままだとここが崩落する可能性があるな。

仕方ない、猛獣の攻撃を無効にしながら結界を張っていくことにした。これで完成と。最後の攻撃を無効と同時に結界が発動猛獣を捕獲した。

中で暴れているのだが、すべて無効にしたいしまうので体力と、魔力を消耗するだけだ。


(嘘だろ、あんなに簡単につかまるものなのか)


「5人で集合場所にこいつを連れて行け、残りの奴らは、俺と一緒にここにいる者を連れて帰るぞ」


「は!」


牢屋の結界を解き、鍵を破壊皆をそこから出した。


「お前の言っていた通りになったな」


「だから、助けに来ると言っただろ、俺の友人は嘘は言わない」


「そうだな、いい友人と巡り会えたのだな」


「ああ、あいつだけは裏切らないのは知っていたし、俺もそうで在りたいと思っている」


「帰るぞ」


転送魔法で集合場所に向かった。


「遅くなった」


「お帰り、また大勢ですわね」


「おい、ファティマその喋り方どうした」


「ほら見てみろ」


「あらそんなにおかしいな事かしら」


「別に構わない、違和感を感じただけだ」


「今ここにいるのは、イブリース、クオン、アイシェ、ファティマ、俺か。後はマリー様だけだな」


「そうだ、だかエブァンが来る少し前に不穏な動きがあるとキリウスが報告来ている」


「不穏だと」


「そうだ、ここを探ろうとする奴らが嗅ぎ回っているようなのだ」


「ここがバレたか?」


「それはないのは、キリウスが確認済みだ」


「だが時間の問題という事だ、見つかってしまったら面倒になるのは間違いないからな」


「確かにそうだ、あれを張るのばどうだ?」


「それいい案ですわね」


「ファティマ、頼めるか?」


「勿論ですわよ」


「なら、頼む」


「幻の中 見る者ここにたどり着く幻 我らを守りし幻 声を聞き入れよ ラン、ファンダジア」


「これでいいわよ」


「なにをしたんだ?」


「クオン今したのは、撹乱ってところだ、もしここがバレそうになっても、ここにはたどり着くことが出来なくなったんだよ、ここと同じものが無数に存在をしている状態を作り出した」


「それだといつかはたどり着くだろ」


「いや、それはない。理由は仮初めの空間に入ると二箇所ずつ増えていくからだ」


「増える?」


「そうだ、中に入っると、それに反応して増える仕組みだ」


「厄介だなそれは」


「そうだな、俺達に使われたら面倒になるが解除ができるから、面倒なだけだな」


「マリー様も勿論大丈夫なんだよな」


「当たり前の事を聞くな」


「だよな」


「それよりも、ここの結果を強化していくぞ」


「そうですわね、私達が全員揃った事で、結界歪み出していますよのね」




(こいつらはなんなんだ?常識外れもいいとこだぞ)

(見ればわかる)

(俺達は、これからどうなるんだ)

(せっかくあの施設から出られたとしてもこれではなにも変わらない)

(家族に会えたのに)

(貴方達はいいわよ、私の家族はあんな姿に)

(俺の妻は死んでいる)

(ここにいる理由がない)

(落ち着け、今は、成り行きを見守っていよう、どの道覚悟をしてここに来たんだ)

(助かるとは思ってもいなかったし、家族に一生会えないと覚悟をしていたんだ)

(それが今ここに家族に会えているではないか、今も大勢の人が助けられて、その家族が少しずつ集められているではないか)

(成り行きを見守っていよう、絶望だったのだからそれに比べれば………)

(そうだな)


後ろにいる奴らは、学民だからか、そんな会話しているのが聞こえてきた。


マリーの配下は結界強化をしてマリーの帰りを待っていた





マリーは城に目を向け歩き出した。

入り口には門番が立っているが御構い無しに進もうとしたがやはり阻まれるのだった。

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