クトゥルフの夢
トラテツが走って行った方向をサキュラは睨んでいる。
自分もトラテツの元に向かうつもりだろうか?
なら私がするべき事は一つ。
「サキュラ!!」
私はサキュラを呼び止める。
「この白い石を持って行って!」
サキュラは少しの間私の手に持つモトミンという女の子の魔力石を見つめていたがやがて首を横に振った。
「魔力石は貴女が持っていなさい」
でも奈照さんやモトミンは治療、回復スキルは使えるが私達は使えない。
大きな事になる前に保険と言ったら可笑しいけど治療、回復スキルはあった方が戦いに有利なのは奈照さんの時も身を持って知ったから。
「でも、トラテツもサキュラも回復スキルは使えない!なら白い魔力石あった方が助かるでしょ?」
「クトゥルフを馬鹿にしないで」
急に怒気を現すサキュラ。
「え…」
サキュラが突然怒りだし怯み、泣きかけてしまう私。
心臓がトクトク鳴る。
怒らせちゃったかな…。
「ごめんなさい、何かいけない事言ったかな?」
私は少し遠慮気味に聞く。
「火、電気、水、これらのスキルは治療、回復スキルでなくてもそれらを利用して癒せる手立てはあるわ、ただ治療、回復スキルの方が少し効果は高いだけの話」
サキュラは基本無機質な話し方だが不思議と威圧された気持ちになる。
「…まあ良いわ、私は貴女のそう言う所、好きよ」
ん?どう言う所なのかな?
「なんでもよ」
サキュラはそう言うと踵を返しトラテツの後を追いかけて行った。
…私も出来るならトラテツとサキュラを助けたい所だけど私は先にクトゥルフブレイクリーなる力を得に行かなければならない。
トラテツ、サキュラ、どうか無事でいて!
私は真剣に祈りながらサキュラの言ってた更に続く道を走って行った。
ずっとずっとずっと奥へ突き進んで行く。
しばらく薄暗い地下通路が続いていたがその時白い魔力石が語りかけていた。
『気にせんで良いよ、うるみん』
モトミンの声だ。
私はモトミンの魔力石を優しく撫で、「ありがとね…」と囁いた。
っとその時の事、『うるみん、待ち伏せだよ!』
とモトミンの慌てて叫ぶ声が。
「え…キャアッ!」
ドオン!!
赤い光が飛んで来たと思うとそれは私に直撃してきた。
「海溝潤実、ここから先は通さん!」
私の前に紫色のローブを纏った男が現れた。
男?背は小さく140センチほどしか無い。
しかし声は男だ。
しかし彼からは小さな背丈とは裏腹に黒くて危険なオーラが流れていた。
「俺は黒魔道士アンドレ、江戸華喧華様から遣わされた魔道士よ!」
『うるみん!大丈夫?』
モトミンはアンドレという魔道士から負わされた火傷を治療する。
「ありがとう、モトミン…」
私は立ち上がる。
「貴様…今の光は白魔道士の魔法!グヌヌ、俺は白魔道士が大嫌いなんだ!俺の黒魔法でチリヂリにしてくれる!!」
アンドレは怒号をあげて手と手の間に赤色の光を発する。
「食らえ!フレアー!!」
赤い玉は激しい火炎放射となって私に襲いかかる。
「ウォーターバリアからのっメイルストローム!!」
私はフレアーを防ぎ、メイルストロームをアンドレに放った。
「…!!
アンドレは瞬間移動の魔術を自らにかけ、避ける。
「槍百烈突き!!」
咄嗟にウォーターバリアを解除する、何故ならその方が身動きしやすいし動かない相手なら良いが素早く動く相手だとメイルストローム放つにも標準が定まらないからだ。
なら接近戦に持ち込んだほうが有効と言うもの。
しかし私の判断は甘かった!
「バインド!!」
アンドレは捕縛の魔術を私に放った。
「か、体が!」
私は槍を構えたまま動けなくなった。
「ククク、これで貴様は動けまい!!」
アンドレは私から槍を奪う。
そしてアンドレは念力のように手を私に向かい広げて、薄いパープル色の気を私に流し込む。
「か、体が勝手に…?」
すると私は手足をこれでもかと言うほど広げられ、そのまま壁に打ち付けられる。
グキグキッ!
「うぎっ!??」
手ならまだしも足を普段そこまで広げない感じに広げられたので苦痛が私を襲う。
手足を広げられて壁に打ち付けられたまま身動きが取れなくなった。
アンドレは槍を持って私に詰め寄る。
「グクク…お前は俺に無い白魔法を俺の前で見せびらかした…その罪は重いぞ!」
アンドレに脅迫される。
「ひっ!」
その瞬間、私はアンドレに隠された素顔を見た。
彼はなんとゴブリン族だった。
緑色の肌、ギョロリとした目、口は裂けて鼻が大きい。
ゴブリンとは小レベルのモンスターで大方初心者のクトゥルフも倒せる弱さだがやる事はエゲツなく、学習能力も意外と高い。
よりタチが悪いのは人間やエルフの女性をさらっては飼い慣らしてしまうところだ。
「安心しろ、お前を俺のモノにする気は無い」
喜んで良いのかはわからないが私が連れ込まれて何かされるリスクは回避出来た?
「しかしお前は俺と敵対する白魔法の使い手だ!じっくりとなぶり殺しにしてやる」
「わ、私は白魔道士じゃありません!」
今の回復、治療魔法はモトミンのもので私のモノじゃない!
その時、『やめなさいっ!』と声がした。
「ね、姉ちゃん?」
アンドレはたじろぎだす。
その時私にかかっていた黒魔術は解放されて自由になった。
宙を浮いていたので私はドスンと尻餅をつく。
「生きていたのか、姉ちゃん?」
その時私の前にモトミンが淡い光をたたえてアンドレの前に現れだした。
『アンドレ、こんな醜い姿になって…どうしたの?』
モトミンはアンドレを懐かしむように語りだす。
一体どうなってるのこれ?
「俺はお姉ちゃんが死んだものだと思ってた、それから俺はお姉ちゃんを殺した奴を倒す為に黒魔法を用いた」
アンドレは拳を強く握りしめ、語る。
「モトミン、どうなってるの?」
「ちょっと黙っててね」
今はこの子達のやり取りを黙って聞いた方が良さそうだ。
『黒魔法を使っては駄目よ、使ったら自分の身を滅ぼすわ』
「薄々は感じていたよ、でも殺したアイツらは素手で向かったって勝てそうな相手じゃ無かった」
『それから江戸華喧華に拾われたのね…』
モトミンは優しくも悲しい瞳をアンドレに向け、語る。
それでちょっとモトミンについて疑問を一つ…。
何故モトミン私の前では関西弁なのにアンドレと言う人の前では標準語なのか?
KEIさんは気がついてたかな?
今は彼女らの様子を見守ろう。
『約束して、もう黒魔法なんか使わないと…そして江戸華喧華から足を洗うと』
モトミンは小指をアンドレに差し出す。
「………」
アンドレは視線を逸らし俯いた。
「もう手遅れだよ、江戸華喧華から足を洗ったら確実に殺されてしまう…それに黒魔法に染まってしまってやめられなくなってるんだ」
なんと言う事だろう、この子は江戸華喧華から離れられなくなってる上に黒魔法に染まっていると言うではないか!
『手遅れでは、ない!』
そんな時また男の人の声がした。
『ガニメルさん!』
モトミンの表情が明るくなる。
「ガニメルさん!?」
私はモトミンが顔を向けた方向に同じく顔を向けた。
そこには水色の髪の見惚れてしまう程の美しい青年がいた。
「ガニメルさんっ、サキュラが慕っていた…」
ガニメルは私の小声に頷く。
ガニメルはそんな私を無視してアンドレの小さめの肩に手を置き、諭す。
『君はまだ若いんだ、やり直しは利く、海溝潤実、この子にお姉さんの魔力石を渡して貰って構わないか?』
ガニメルは私に問いかける。
「はい、アンドレさん…」
私もこの子に何とかしてあげたいと思っていたし断る理由なんてない。
江戸華さんが発言力強くて権力有るのは知ってるけどこうやって罪のない子を縛るのは何か違うと思う。
私がもう少し強かったら…でも私は弱いから何も出来ない。
ならどんな形であれ利用されてる子は手助けしないとと思う。
私はアンドレにモトミンの魔力石を渡した。
「ありがとう、それとごめんねお姉ちゃん…」
アンドレは気まずそうにしながら礼を述べた。
「ううん…仕方が無いよ、でもこれからお姉ちゃんとずっと一緒だね!」
私はアンドレに微笑みかけ頭を撫でた。
『うるみんごめんね、私が関西弁になってたのはキャラを隠す為なの、そうしたら初対面の子には関西弁になる癖がついちゃって…』
あぁ関西弁になってたのは照れ隠しのサインだったのか。
「初対面だと緊張しちゃうのは仕方がないね、私は話すら出来ないから…」
『海溝潤実、クトゥルフブレイクリーを体得出来るのは君だけだ!ゼウスの像に向かいなさい』
ガニメルが私に諭す。
「ありがとうございますガニメルさん!モトミン、アンドレさん、ずっと仲良くね!」
「はいっ!」
『頑張ってきてね!』
私は姉弟と分かれてゼウスの像へと走った。
トラテツSIDEーーー
わいは強烈などす黒い波長を感じた。
臭いとはちゃうけんど動物は鼻の他にも感覚は鋭いんじょ。あれは部屋の入り口から感じたけんわいはその通路を走んりょんじょ。しばらく突き進んで行ったらその波長を放っとる奴がおった。
体は太っとって人相の悪いおばはん…やっぱりじゃ!誰か言うたらクト雨主人公であり悪役の江戸華喧華じゃ!
わいはそいつに不意打ちを仕掛けようとライジングボルトを放った。
「どりゃーライジングボルト!!!」
バリバリバリ!!わいは身体中に電流を放ちそこから出来た稲妻を喧華にぶつける。
トバアアアアアアアァーーーーン!!!
わいの鋭い電撃は効いたはず…なんやて!?
喧華はわいの電撃を片手で受け止めた。
その直後、真横から何かが飛んできた…え?
と思った刹那衝撃が走ってわいは弾き飛ばされる。
大地に二回叩きつけられ、わいは痛みで気を失いそうになる。
喧華はわいを睨みつける。
「あんたはあの時のガキね…そこを通して頂戴!」
喧華は身体中からユラユラと紫色の炎が見える程の殺気を放ち、拳を鳴らす。
「何しに来たんな!!」
わいは喧華を前に恐怖心を殺し、身体中から電撃を纏ったような闘気を放ちながら構えをとる。
江戸華喧華SIDEーーー
私の前に生意気そうな小童が不意打ちをしてきたが私はそいつを逆に蹴り飛ばした。
この小童…あの時のガキね。トラテツと言ったかしら?13歳くらいの男の子…顔は好みなんだけど性格が気に入らない、生意気そうだし。
猫か虎みたいな尻尾、ちょっと小麦色の肌、虎柄の髪の毛、容姿はそんなところだ。トラテツはシャーと唸りながら私を睨み、体に電流を纏っている。しかしそいつは私の実力には到底及ばない。弱い癖に刃向かうものは私のインスマスで屠ってやるわ。
ーーーラマドン戦。
「私の出来心です!どうか許してください!!」
私はラマドンと戦っていたが到底敵わず、命乞いをした。
「うむ、それよりルルイエ皇帝がお前に話があるそうだ」
「私に?」
ルルイエ皇帝、名はデジェウス、彼は私に一体何の用があるんだろう…。まあ良いわ、長いものには巻かれよう、ラマドンに敗れた私はラマドンが入っていった光のホールに吸い込まれるように入っていった。
ラマドンに招かれた場所は海の中の都市を見たような風景だった。珊瑚から光が灯り、濃い緑の山がそびえ、高層の建物ではあるが何かの鉱石で出来たようなビル郡がそびえ建つ。
そして天上には地球にもあったような太陽なものも熱を帯びてルルイエを照らしていた。
それでいてルルイエの向こう側は暗闇の海の世界っぽいのが映っていた。
私は皇帝と対峙する。
長い銀髪にワイルドな感じの美形、逞しい身体をはだけた白い服。小麦色の肌、神話に出てくる戦の神のような男の人が私を睨んでいた。
ぐふふこれからデジェウスと言う皇帝は私の手を掴み、顔を私の前に近づけて『お前、俺のモノになれ』と囁いたりしそう。
そういった妄想を私は膨らませていたが見当違いだったようだ。
「インスマスの力を過信して乱暴狼藉をして来たのは貴様か?」
え?私何故こんな事言われてるの?
「な、何の事ですか?」
私はデジェウス皇帝にたずねる。
「今地上は混沌としている、その混沌が今ルルイエへも迫ってきておるのだ、私は確かにインスマスの素質あるものを集めてきた。しかし地上の混沌をここルルイエへも持ち込めとは一切言っていない!」
なぜか怒り心頭なデジェウス。
しかし私は正義の為に悪い奴をやっつけてきた。何も言われる覚えはない。それともこれは私がトバッチリを食らう的なものなのだろうか。だとすれば…。
「お待ちください!!」
私は近づいてくるデジェウス皇帝を止まらせる。
「なんじゃ?申してみよ!」
デジェウス皇帝は再び玉座に座る。
「この混沌は海溝潤実の仕業にございます!」
「誰じゃそのものは?」
デジェウス皇帝は聞く。
すぐ浮かんだ名前が飛んできたが何とか私がトバッチリを食らう確率は減ったようだ。
「はっ、奴こそ地上を脅かす疫病神でございます。彼女の力で不幸に陥れられた者多数…この江戸華喧華も被害者の一人でございます。彼女はトラテツという猫っぽい少年とサキュラという少女と一緒にいる女でございます」
デジェウスは顔色を変える。下手な芝居だったかしら?海溝潤実のせいにしとけば私は処罰を回避出来ると思ったのだけれど…。
「サキュラじゃと…!?」
ん?展開は予想外の方向に進みそうね、ま、良いわ。これで私の命が繋がれば…しかしデジェウス様はサキュラって小娘を知ってるようね。
「わかった、貴様には試してもらう!海溝潤実という女を倒し、その首を持って来るのだ!さすればお前を認めよう!」
デジェウス様は私に指を指し、指令を渡した。
海溝潤実か…あの小娘を倒すくらいなんて事ないわ、あのトラテツとサキュラてガキもショボいし、私が一捻りで潰してやろうじゃないの!
そして私はルルイエの地上に降りる。
しかし私は奴らの居場所を知らない、その為にアイツを呼ぶしかない。
私は新たに部下に加えた「アンドレ」というガキをスキル
トラテツSIDEーーー
このババア化け物とちゃうん?わいの稲妻が効かん…。
わいは喧華をひたすら睨む。喧華も睨み据える。
このまま睨み合いの状態で時間稼ぎ出来ればと思っていたが喧華が突っ込んできた。
「おおりゃーーー喧嘩百砲!!!」
無数の拳がわいめがけて飛んでくる。
ババババババババババババ!!!
わいはそれらを受け流し間合いに攻め込もうとした。しかし喧華は手の平にエネルギーを溜めていて、それが顔の前に飛んできたかと思えばわいの目の前に目が潰れるほどの光が襲ってきた。
「ぐわああああぁっ!!!」
わいはそのエネルギーに直接顔面やられ、後方に吹き飛ばされる
喧華の突き出した手の平から煙が沸き立つ。
「悪いわね、せっかくのハンサム台無しにしちゃったわ…」
わいは1回転して大地に着地する。ほなけど目の前に煙が沸いとってよう見えん…息が出来ん…このままじゃ戦闘に不利やわ…わいもここまでかもしれん…。
「トラテツッ!」
そんな時サキュラの声がした。
サキュラ来てくれたんか!?まさかサキュラが援軍に来てくれるとは思わんかった。
その途端喧華が目を見開く。
「アンドレっ!お前裏切ったのか!!」
あれ?もう一人おるん?
現れたのはなんと魔物だった。
「こうなる事だろうと思ってたわ、江戸華喧華、貴女刺客を放ってたのね」
サキュラは喧華を見据えこう放つ。その魔物は喧華を睨んでいた。
「アンドレ!貴方は騙されているのよ!こっちにいらっしゃい!」
喧華はアンドレに情を寄せるかのように言い聞かしだす。
「嘘だ!もうお前の口車になんか乗らない!」
魔物、いやアンドレと言う奴は怒気を露わに放った。
「ちいっ、このクソどもが…」
喧華の闇のオーラが激しさを増す。喧華の体にはパープル色の闘気が激しく燃える炎のように蠢き、筋肉質となり、ババアの顔がおっさんの顔になりだした。
「もう容赦はしねえ!裏切り者も含めて全員皆殺しにしてやる!」
喧華は180センチを超える長身となり、わいらを見下ろしてズンズンと歩み寄っていく。喧華の踏んだ大地はしっかりと足跡がつき、煙が沸き立った。その魔人のような姿に流石のわいもド肝抜かれる。
その瞬間、喧華の姿が消えた。しかしその後わいはものすごいスピードで喧嘩が小さくなっていくのが見える…いやわいは殴り飛ばされとる!?やがて大地に身体を打ちつけられる。
「私に刃向かう者は皆ああなるのよ!」
喧華はギロっとした目でサキュラ達を睨みつけていた。
江戸華喧華SIDEーーー
可哀想に、私を怒らせたばかりにあの子はぶっ飛ばされていったわ。もう確実に死んでいる事でしょう…そう思っていたがなんとトラテツは立ち上がり出した。
「何っ!?良くて全治半年くらいの傷は負っているはずなのに!!」
私はたまげた。あのガキどれだけ丈夫なの!?しかしよく見るとあのトラテツには黄色い光の
「あれは白魔法のプロテクション!?」
コイツらの中で白魔法使える奴がいるの??私は白魔法を放っている奴を気配で探る。すると白い石がアンドレの首にかけられているのが見えた。
「アンドレ…お前!?」
「そう、これはお姉さんの魂だ!今の俺と姉さんは一心同体!そして姉さんのお前への恨みだ!!」
アンドレは怒声を放った。
「恨み!?一体私に何の恨みがあるの!?」
「しらばっくれるな!俺の姉さんの命を奪った奴はお前が放った刺客である事はもう見当がついてるんだ!!」
な、なんて事…こんな事まで知られるとは…しかし私は正義の為にしたまでのこと、何も恨まれる理由は無いわ!
「そのガキは私が悪を成敗している間に割り込んできて啖呵を切ってきたのよ!」
私は負けじと声を上げる。
しかしサキュラが変に増せたような態度で言い放つ。
「だからって小さい子を自分の手下に手を汚させてまで殺してしまうなんて度が過ぎているわ!」
私はそれこそ腹わたが煮えくり返る。遥か年下のガキにこんな事言われたら平静でいられるわけないじゃない!
「どいつもこいつも私の正義を否定しやがって!年下だから見逃そうと思ってたけどもう我慢できねえ!お前ら全員ブッ殺してやる!!」
見逃すというのは嘘だが優しくはしようとしてた。
しかし叱らなければならない立場の私が何でこんな事で叱られなければならないのか!
とにかく私はこいつらを黙らそうと拳を振るってやる。
「くっ!」
アンドレが魔法を放とうとする。馬鹿め!魔法放つのにどれくらい時間かかると思ってるの!まあアンドレは黒魔法しか能が無いから仕方ないわ。
「どりゃあああああぁ!!!」
その時向こう側にぶっ飛ばされてたトラテツがものすごい速さでこっちの方まで走ってきた。
「喧嘩百砲!!!」
「
私が無数の拳を放つとトラテツも至近距離まで来て無数の拳を放ってきた。
「ぐわああああぁ!!!」
トラテツぶっ飛ばされる。
グシャ!!
トラテツは血しぶきをあげて大地に崩れる。愚かな
、しかし死んだとしてもここでは私は捕まらないからその分手加減せずにやれそうだわ。私を侮辱した分ジワジワとなぶり殺すつもりだけどね。
「トラテツさん!『マスターヒール!!』」
アンドレが白い石をトラテツに向けると女の子供の声がしたと思ったら白い石から白魔法が放たれた。するとトラテツの体は淡い緑色の光をたたえ傷が治っていった。
今の声は…ひょっとして私が始末したクソガキなの?
「全く無茶するわね」
サキュラがトラテツに突っ込みを入れる。しかし無茶してるのはお前達全員だと言う事を知っていなさい!
「痛たた…ほなけどこうでもせんかったら死んどったじょ!」
トラテツはまだ痛む身体を振り絞って立ち上がる。
「すみません…トラテツさん」
アンドレが謝る。しかしトラテツはアンドレの頭をワシワシと撫でて威勢の良い声で労った。
「気にするな!わいは正義の味方やけん弱い子を悪い奴から守るんは当たり前なんじょ!」
トラテツ貴方自分が何言ってるかわかってるの?私が悪い奴?冗談じゃないわ!
「誰が悪い奴なのよ!私の正義の鉄槌をもっと加えてやる必要があるようね!!」
私は更に闘気を全身から噴き出させ、正義の鉄槌をもっと下しにかかろうと向かった。
トラテツが飛びかかってきてアンドレに言い放つ。
「アンドレ!わいがコイツと戦っとるうちに魔法唱へ!!」
「はい!!」
トラテツが私に下手な格闘をしているうちにアンドレに黒魔法を唱えるように言い出す。何弱いくせに先輩ヅラしているのよ!
『トラテツさん!プロテクション!ストロング!』
白い魔力石がトラテツに強化魔法を唱える。
「ありがとうなモトミンちゃん!!」
トラテツに力がみなぎってきたようだがそれでも私の敵じゃ無いわ!ドドオオオオオォン!!!
しばらく格闘していたがやはりトラテツはぶっ飛ばされる。それにしてもサキュラは何も出来ない子のようね。
こいつヤッたらコイツらどんな反応するかしら?
私はサキュラに標的を変えてみた。
やはりサキュラはビクついた表情で後ずさる。やっぱりこの女は能無しだわ。さっきまで私に偉そうな口叩いた事後悔させてあげる。
「そこの小娘、よくも私に偉そうな口叩いてくれたわね、覚悟は出来ているの?」
私は拳を鳴らしサキュラに歩み寄る。
「あ、貴女それが正義の味方の態度なの!?」
やっぱりね、しかし私は手加減しないわ、何もわからないガキにはしっかり躾しないとね!
サキュラSIDEーーー
この人私を殺す気だ…私らしくなく私は江戸華喧華から放たれる暗黒の闘気を前に目の前が真っ暗になるような感覚を覚える。
こういう時こそ忽然としなければいけないのはわかっているのに気持ちと体が言う事を聞かない。私は本能的に恐怖心に襲われ江戸華喧華を前に蛇に睨まれた蛙の状態となる。
「お前のような一人だと何にも出来ない奴が初めから偉そうにしてんじゃねえ、死ね!!」
も、もう駄目だ!
私は思わず泣きかけてしまう。
その時、思わぬ救世主が私を助けてくれた。
江戸華喧華の拳が私めがけて飛んでくるが小麦色の肌にトラ柄の髪の少年がその拳を代わりに受け止めてくれたのだ。
「サキュラ何こんな奴にビクついとんな!らしく無いじょ!!」
救ってくれたのはトラテツだった。
私は思わずヘナヘナと体の力が抜けて大地に膝をつける。
「大丈夫ですかサキュラさん?」
アンドレは黒魔法を詠唱している間私を気にかけだす。
「私の事はいいから魔法の詠唱を続けなさい」
感謝すべきなんだけど事もあろうか私の口から出た言葉はそれだった。
『何偉そうにしてるのよ!アンタなんか助ける価値無いのに優しいトラテツやアンドレに感謝することね!』
モトミンが怒気をみせて私に言い放つ。
その通りだわ…。
「さあ出来ました!!」
アンドレの手のひらから最大限の魔力が溜まりトラテツに知らせる。
「よっしゃ放てえ!!」
アンドレの知らせを聞いたトラテツは喧嘩との戦闘から離脱してアンドレにフレアーを解放させようと声を上げる。
ガシッ!
「な、何な!?」
しかしその途端喧嘩がトラテツの髪を掴み、彼を盾にしだした。
「ハハハ!お前達の企んでいる事なんてとっくにお見通しよ!!」
なんて事!トラテツを盾にしてしまうなんて!案の定、アンドレはフレアーを放とうとしたのを止めてしまう。
「アンドレ!わいの事は良えけん早よ放てえ!!」
喧華に囮にされながらもトラテツはアンドレに黒魔法を放つように声を荒げる。
「し、しかし…」
「アンドレ!早く魔法を放たないと魔法が暴発してしまうわ!!」
アンドレが戸惑っている、早く魔法を放たないとアンドレの身が危ないし下手したらモトミンの魔力石が壊れてしまうのかもしれない!なので私がアンドレに魔力を放たせ無いとそれこそ取り返しのつかない事になる。
『鬼!自分の仲間を殺してしまおうと言うの!??』
そんな時モトミンが私に反論しだす。モトミンの正義感の強さは知ってる。しかしそれとこれとは別次元の話、早く魔法を放たせないと!
「ぐわあっ!!!」
魔法が暴発し、魔力を放つのをためらっていたアンドレが自分の放とうとしたフレアーに巻き込まれ、吹き飛ばされてしまった。
「ハハハ自分の放とうとした魔法を自分自身の甘さのせいで逆に吹き飛んでしまうなんてお笑いね!!」
喧華が笑いだす。
喧華の正義は筋違い、間違っている気もするが戦闘では残虐になれないと生き残る事が出来ない、そう言う意味では喧華は戦闘向けと言えるだろう。
しかし貴女のような人はいつか天罰が下る。
間違った正義をいつまでも振りかざしている限りはね。
「喧嘩…てめえ…」
トラテツも怒りで震える。
トラテツSIDEーーー
なんて事じゃ…わいがこいつなんかの盾になってしもたばかりにアンドレが自分の魔法に吹き飛ばされてしまうなんて…!わいは今喧華に腕で掴まれとって身動きが出来んかわりに激しい憎悪を喧華にぶつけた。
「ふん、伊達にアンタらの三倍近く生きてないのよ!自分の若さと甘さをせいぜい悔いなさい!!」
喧華はそう放つと激しい蹴りを放ち、その途端わいの意識は途絶えた。
サキュラSIDEーーー
なんて事…トラテツの作戦が失敗に終わってしまうなんて!もう駄目だわ…アンドレが魔法に吹き飛ばされトラテツも喧華にサッカーボールのように遠くに蹴りあげられ、残るは私一人となってしまった。
「ふん、後はお前だけよ覚悟は出来てるかしら?」
喧華はドス黒く大きな殺気を放ちながら私に詰め寄ってきた。
この状況はまずいKEIさん助けに来て!
海溝潤実SIDEーーー
!!!
ドクン、ドクン…。
私の中に激しい胸騒ぎがおこる。ひょっとしてサキュラ達は…でもサキュラはそのまま進んでクトゥルフブレイクリーと言うスキルを手に入れに行けと言ってた…。
でもこの胸騒ぎは尋常じゃない…ひょっとしてサキュラ達は今危険な目に…。私はサキュラ達の事が気がかりになり、サキュラ達のいる元へと走りに行こうとした。
『この先に行っては駄目だ!海溝潤実!』
その時男の人の声がした。すると目の前に淡い人型の光が現れたかと思うとそれは何とガニメルの姿となって私の前に現れたのだ。
『この先に行っては危険だ!君は早くゼウスの像へと向かって身を清めに行きなさい!』
ガニメルは私にそう問い聞かせる。
「でも胸騒ぎがするんです!ひょっとしたらサキュラ達は強大な敵を前にして危険な目に遭ってるんじゃないかって…!」
『しかし今の君が行ったところで足手まといになるだけだ!サキュラ達は江戸華喧華と言う相手と戦ってる、しかし彼女達なら大丈夫だ!』
ガニメルは強い口調で私に諭すがその像に行くまでにはまだ距離は遠い…それにクトゥルフブレイクリーを身につけてもサキュラ達がいなくなってしまう事を考えると居ても立っても居られない。
その時ドオオン!と言う轟音とともに地面が揺れだす。
「お願いですガニメルさん!そこを通してください!」
『ならぬ!君はサキュラの言ってた通り振り向かずにクトゥルフブレイクリーを身につけろ!それからでも奴は倒せる!』
しかし私はその時見た…。頭の中のイメージだが私がクトゥルフブレイクリーを身につけて行った所、そこには地面の一部となってしまったトラテツ、サキュラ、アンドレの姿を…。
「私は引きません…私が強敵と戦って勝ったとしても…サキュラ達に会えなくなるのを思うとその方が私には耐えられない!」
『そうか…わかった…』
ガニメルは考え込むような口調でこう漏らす。
「では…」
私が言いかけるとガニメルは突然槍をこちらに向けて構えた。
『仮にここを通りたくばこの私を倒してみせる事だ!』
ガニメルの優しそうな顔は少し鋭さを見せ、低い声で凄むように放ってきた。
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