ハニートラップイズ電車

トラテツSIDEーーー


鉄道にハマっとったじっちゃんはようわいに「きしゃ」とか見せてくれよった。


「ほれ見てみいトラテツ、こんな大っきいんが人をようけ乗せて遠くまで走んりょんじょ!」


わいは「れっしゃ」なるものに魅入る。


中はヒトがようけ乗っとった。


「ハハハ、そんなマジマジと見てもトラテツにはわからんやろ!!」


いやいやわかるじょ、じっちゃん電車の本とか模型とかようけ揃えとってわいに見せよったで。


わいは猫やけんそれには乗れんけんどいつか乗りたいとわいも思っとるんじょ。


そのじっちゃんはある日倒れて亡くなってしもた。


ーーー


「じっちゃん…天国でうまくやっとるんかなあ?」


わいはじっちゃんに花とか添えてお水も持ってきて拝む。


「さてと…」


祈り終わった後わいは立ち上がる。


「じっちゃんやヒトをようけ乗せて走んりょった「きしゃ」と言うもんにわいも乗ってみるじょ!」


わいは「徳島駅」まで向かう。


「あ、トラテツの兄キ!どこ行ってるんですかい?」


わいに話しかけて来たんは黒猫のドッシュ、お腹空かせとってわいが人様の売っとる魚を盗んでそいつにあげたら仲良くなったんじょ。


「ああ汽車乗ってみよう思っとるんよ、お前も乗ってみんで?」


「ああ汽車ですかい?俺は勘弁です、なんせあそこ「チカン」とか出てて良い噂聞きませんから」


「はははドッシュはおみぃさん(臆病者)やなあ!そもそもわいらオスやけんチカンや襲えへんじょ♪」


まあ痴漢言うてタチの悪いもんもおる言うんはじっちゃんからも聞いとってじっちゃんはそいつ懲らしめた事あるとか嬉しそうに話っしょったな!


わいも正義を大事にしよったじっちゃんの飼い猫やけん痴漢なんかやっつけてやるじょ!


「ともあれ頑張ってきてください、帰ってきたらマタタビ酒でも飲んで土産話とか聞かせてくださいよ!」


「おう任せとき!」


わいとドッシュはそう話しあい分かれた。


わいは徳島駅まで来ると人の入って来うへんような隙間に入ってそこで「ヒト」に変身する。


「お金とかは…良し、いけるな!」


わいはそこに隠しとったカバンとか漁って持ち物を確認する。


とりあえず揃うとるけんじっちゃんがようしよった切符買おうとするけんど…やり方がわからへん…。


「どないしたん?」


その声がして振り向くとお婆さんがおった。

60くらいかいな?

徳島では方言普通に使うんはじっちゃんばっちゃん世代やけん方言話っしょったらその年齢や思って間違いない。


「恥ずかしい話やけんどわい切符の買い方わからんのんよ、教えてくれへん?」


わいはお婆さんに尋ねる。


「お兄さん若いのに方言喋んりょんへ、良えなあ♪最近の若い子は方言ダサいと言って頑張って標準語喋りよるけんどやっぱり方言の方が断然良いわ♪」


お婆さんは笑いながら話す。

わいも新たな使命が出来た!


徳島弁を若者にも喋らせるんじょ!!


徳島弁を若者に広める為に「きしゃ」なるものに乗るわい。


ヒトがようけおるなあ、それにナレーションの声とかうるさいわ。


何や地面とか油くさいしじっちゃんが汽車の臭い汽車の臭いや言よったけんどそれが汽車の臭いや言うもんなんか。


プルルルルとか騒音やしようみんな耐えれるなあ。


ところでわいどこ行こうとしとった?

まあ良えわ徳島弁をみんなに広めれたらそれで良いし、取り敢えずそこに来た「池田駅」言うとこまで行く汽車に乗ってみるじょ!


中には色んな人が新聞広げて読んだり駄弁ったり死んだ魚の目をして丸っこいん吊るしたもんに掴まる人とかおるんじょ。


わいは座っとったけんどそこに足腰の弱そうな婆さんがおったけん譲ったじょ。


「ありがとう、若いのに親切やなあ」


笑顔で応えてくれる婆さんみたら嬉しいなるわ。

ほなけど若いのに年寄りに席譲らん若もんがようけおるなあ。


そこでわいは高校生くらいの若者に怒鳴った。


「そこ!年寄りがおるのに席譲ったげたらどうなんへ!??」


「す、すいません!!」


高校生は言われると立って年寄りに席を譲ったげた


ああ快感やわ♪

良え事したら気持ちが良えなあ…♪


しばらくしたらようけ人が乗って来る。

わいは若いけんずっと立ってて行儀の悪い奴を次々と注意していっきょった。


…ある時髪の綺麗な若い子がすぐそこおるんにドキッとする。

この制服はじょしこうせいってやつやな。


髪から良え香りが漂ってきよった。

これはきっとわいが良い事しよるけん神様がご褒美くれよんやな♪


ある時、わいは何かに手を触れられとるんを感じる。


サラサラして良え手触りやな♪

下をみたらわいのすぐそこにおる女の子が何とわいの手を握って来よるでないか!


ひょっとしてこの子…わいに気があるんか!!!


わいはドキドキした。

いっぺんも話した事ないのに恋する事てあるんかいな!


人間社会では「ひとめぼれ」言うんがあるみたいやけどこのパターンがこれかいな!?


わいがそう浮かれていると…。


バッ!


何やその女子高生がわいの手を上げよった。

これは何かいな?

これからわいと私は付き合います!ってサインかいな?


わいは思ったがその時女子高生は甲高い声で放った。


「この人、チカンです!!」


え?

痴漢ってあの若い女の子にいたずらすると言うタチの悪い奴?

痴漢ってどこにおるんな!わいが成敗したる!


「痴漢!?どこにおるん!わいがやっつけてやるじょ!!」


「何言ってんだ!お前だろお前!!」


わい………!!?


乗客の視線が一斉にわいに降りかかる。


「わいは痴漢や無い!正義の味方じょ!!」


「何訳の分からない事言ってる!!」


すぐそこにおる女子高生はしくしくと泣く。


「うえーん今まで誰にも触られた事ないのに!!」


そんな時駅員がやってきた。


「何の騒ぎです!?」

「ああコイツが痴漢しやがったんです!」


女子高生に味方するサラリーマンがわいに指を指す。


「君、ちょっと来て貰おうか!」


わいは駅員から腕を掴まれる。

え?これってやばいパターン??


「わいは痴漢や無い!!」


「うるさい!痴漢は皆んなそう言ってしらばっくれるんだ!!」


わいは痴漢扱いされて列車から引きずり降ろされる。


ん?この駅員匂いがなんかおかしい!?

やけに機械くさい臭いや思ってわいはその駅員の顔を見てみた。


え…!?


この駅員、ヒトや無くてロボット!??

わいは駅員がいつのまにかロボットになっとるんに戸惑う。


周りのヒトもみんなロボットになっとんに気づく。


『チカンダワ…』

『チカンヨ、やーネ』


婦人服に婦人のカツラをした主婦二人がわいに対して喋りあう。


他の奴らも痴漢だ、痴漢だと言って嫌な視線を一斉にわいに浴びせる。


わいは痴漢で無いのになんで痴漢にされなあかんの!

取り敢えず話してもコイツら聞いてくれんと思ったわいは力強く掴む駅員の手を噛みちぎる。


「痛て!こいつ何をする!!」


わいは駅員の金○まを思いきり蹴り、もう一人も駅員も頭突きを顎に浴びせる。


わいはこれは何かの罠と見て思いきり走った。


「痴漢が逃げたぞ!!」


「誰か捕まえてくれ!!」


駅員はわいに指差して叫ぶ。


「この野郎!!」


その中でヤンキーみたいな正義面した奴がわいを捕まえに来る。


「わいは痴漢や無い!!」


わいは正義面に回し蹴りをかましてそのまま逃げ走る。

そしてわいは一目の付かんとこまで逃げてきて息を整えた。


ハァハァ…どないなっとるん?

それとわい猫に戻れへんで…?


そんな時の事だった。


「キャハハ!どう?悪者扱いされる気分は?」


顔を上げると先程わいの隣におって痴漢にしてきた女の子がおった。


「お、お前は!!」


わいは立ち上がる。

ほなけどよう見たらタチの悪そうな顔しとるわ…。


「申し遅れたわ、私は縁斎貝里えんざいかいり、今までアンタみたいな痴漢を沢山狩ってきたのよ!!」


「ほなけん痴漢ちゃうって…!!」


わいは叫ぶがその時貝里言う女は短いスカートからあるものを出してわいに攻撃してきよった。


貝里がスカートから出したもんはヨーヨーやった。


「うるさい!私が痴漢だと言ったら痴漢なんだよ!!」


あかんこの女、聞く耳持ってへん!


貝里はヨーヨー二本をまるで自分の体の一部であるように操り、わいに攻撃してくる。


わいは貝里のヨーヨー攻撃を避けるけんど、ヨーヨーの動き見なんだらやられてしまいそうやわ!


いっちょ電撃の異能で…!

そう電撃をかまそうとした時じっちゃんの言葉を思い出してしまう。


『トラテツよ、女の子には暴力を振るったらあかん!そんな事する奴は正義の味方以前に男じゃ無いんじょ!!』


わいは女の子に攻撃する事を躊躇ってしまう。

わいやって女の子の痛がる顔とか泣く顔は見たくない。


わいは女の子を笑顔にしたい!


ヨーヨーは長く伸び、まるでわいに襲いかかってくる蛇のようじゃ!!


ほなけんど女の子に暴力震えんわいはただひたすら貝里の攻撃を避け続ける事しか出来なんだ。


「そこで何をヤッているの!??」


わいと貝里が戦っている…と言うよりわいが貝里の攻撃を避けている時に別の女の子の声が轟く。


動きを止めてその方を見るとなんとクトゥルフ戦士に変身した潤実ちゃんがトライデントを構えてそこに立っとった。


「う…潤実ちゃんわい痴漢なんかやってない、信じて!!」


わいは痴漢じゃ痴漢じゃと一斉に嫌な目で見られたけんか痴漢扱いされるんが悔しいて辛あて情けない事に半泣きで潤実ちゃんに訴えよった。


「わかってるよ!トラテツ君は痴漢なんかするような子じゃないもんね!」


潤実ちゃんは笑顔で元気づけてくれる。


味方おらんくなりそうなとこに救世主に出会ったようで潤実ちゃんが女神みたいに思えた。


「ちい、クトゥルフか、だけどクトゥルフを二匹も狩れたらインスマスとしての株も上がる!ちゃっちゃと始末させてもらうよ!!」


「潤実ちゃん!わいも…がっ!?」


わいは何者かに力強く押し倒された。


「ひひひ捕まえたぞ痴漢め!!」


なんとそこまで追って来よった数人の男がわいを押し倒しよった。

腕を拘束されて電撃も放てへん!


「わいは無実じゃ!!」


「うるさいお前は痴漢に決まってる!!」


あかん皆んなが皆んなしてどうしてわいを信じてくれへんの!?


蓮香ちゃん助けて!!


海溝潤実SIDEーーー


いけない!

トラテツ君が痴漢扱いされて捕らえられてる!!

わかってるよトラテツ君が痴漢するような子じゃないって事!


「トラテツ君は痴漢なんてするような子じゃないよ!何でそう決めつけるの!!?」


私は貝里さんって人に槍を構えて放った。


「あら、私は正義の為にやってるのよ?」


貝里は涼しげな顔して言ってみせる。


「無抵抗な男の子を痴漢扱いするのが正義なの!??」


私は負けじと言い放つ。


「わからないかな?この子が乗客に色々迷惑な事をやってた事…」


貝里は溜息を漏らしながらヤダヤダと言ったポーズを取ってみせる。


「でたらめじゃ!!」


向こう側でトラテツ君は反論をあげるが「痴漢は黙ってろ!」と頭を押さえつけられる。


「この子は人の粗を探しては次々と人を押し付け回ってたのよ!」


「うぅ…」


ああ、トラテツ君ってそう言うとこあるよね…。


「だ、だからってトラテツ君は痴漢なんてやってる証拠にはならないでしょ!!」


そう、だからってトラテツ君は痴漢なんてやっていない、それだけは言える!


「でも知らないの?女の子が側にいる時は男の人は痴漢しないって証拠に両手をあげないといけない暗黙のルールがあるのよ?」


「「そうだそうだ!!」」


貝里の声に賛同するトラテツを捕まえているギャラリー。


「そんなん聞いてへんじょ…!!」


「痴漢は黙ってろ!!」


「あぁ!また痴漢って言った!!」


トラテツ君悔しそう…。


「トラテツ君は何もわからない子なの、だからその辺は許してあげて、ね?」


私は苦笑いして貝里に許しを乞う。


「許すわけ無いだろバーカ♪」


貝里は馬鹿にするような口調で罵る。

何故かギャラリーまでそんな私を軽蔑したりクスクス笑ってきたりしてるけど私だって辛酸を沢山浴びて来たからそんなの平気…平気だから…。


「そいつを許して欲しかったら土下座して私の靴を舐めて綺麗にする事だね♪」


貝里のギャラリーと言うか下僕ぽいのがやってきて貝里のすぐそこに高価そうな椅子を置く。


貝里はそれに乗っかり足を組んで私に促す。


「ほれほれどうしたの?」


貝里は馬鹿にするように靴を舐めろと促す。

私は貝里の言う通り地に手を置いて貝里の靴を舐めようとする。


「潤実!もう良え!痴漢と認めるけんみっともない事はやめ!!」


トラテツ君は悲しい声を出して私に言ってくれる。


でも私は平気だよ…。


職場でも沢山いじめられて、嫌われてきたから…。

何度か汚れてきたから…。


汚れるのはもう平気だよ…。

トラテツ君も痴漢にされそうになって汚れそうになってるけど…。


汚れるのは私だけで充分。


私の仲間がこれで救われるのなら…。

私は貝里の差し出した靴を舐めようとした。


「おい!何をやってんだ!」


その時、向こう側から少しヤンキーの入った女の人の声が聞こえてきた。


「ゲッ!可園彩華!!」


可園彩華?振り向くと赤毛の気の強そうな女の子が立っていた。


「わ、私は何もしてねえ!してねえからな!!」


貝里は彩華を知っているのか、恐れを成した様子を見せて逃げ去っていった。


「さ、彩華だ…ひええ!」


次いで、ギャラリー達も彩華を見るや逃げ去っていき、トラテツ君は自由の身になった。


「あ…ありが…」


私は彩華に礼を言おうとした時、彩華は突然トンファーの先を突きつけてきた。


「おいお前、どっちが奈照さんの魔法使うのに相応しいかサシで勝負しろ!」

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