第5話 パーグ
七大パーグ一覧(1272年)
メルデューク家
もともと南部派、北部派のどちらにも属さない峠の中立のパーグ。ジュエリエン・ボルガーンの南部派にエルプイトス家への個人的な逆恨みから南部派へ転向。カーゴ系エデル人と言う少数民族の末裔で、家長は75才で現在床に伏している。野心衰えた老将の観でマルダン最大の実力者の基盤を一代で築いたが、晩年は水泡に帰すのを目の当たりにしている。徳を重んじ、卑劣を好まぬ性格。贅沢を禁じ倹約に徹した。威厳に満ちた皺の多い顔付きである。心底、マルダンを愛しているから彼の守ってきた保守主義に従ってさえいれば、マルダンの王として載冠していたことだろう。
エルプイトス家
マルダン開拓者の有力者の末裔で、古くからの名門。最も安定した基盤と大きな経済力を持つ。専売品の生産に力を入れており、パーグとして有能な家長である。しかし、政治手腕に欠ける面があり、守銭奴のようなまでの卑しさで嫌われている。自分の力と家族のことしか考えていないと言う噂である。家長はひどく肥満していて彼に会う者のほとんどは失望してしまう。
ベストック家
家長はハイルダル以前のアグリコルム内陸帝国の有名な騎士の末裔である。
宗教とその信仰に力を入れている。広大な果樹園を持ち、安定した収入を得ることで経済的基盤としている。武術を好み、マルダン市のパライストラでの古式にのっとった騎馬槍大会を主催する。家長の政治手腕はまあまあで、民衆の支持も高い。感情的な面があり、それが元である事件のきっかけを作ってしまった。しかしそれは長所である行動力の延長とも。
アグラテリオン家
古代ピクト人の血筋を保つ子孫なのだがカーゴ系の人間として知られている。旗章にはカーゴ文字で「戦う者(アグラテリオン)」と掲げている。旗章の怪物のシルエットは二角翼尾鳥(シダンガウラン鳥)というピクト文化の空想上の縁起物である。戦運の鳥なので幸運に見舞われるよう期待をかけているようだ。家長は世間一般の言う独善主義者ではなく、洞察力を持ったキレモノである。美術を愛し、画廊を持ち、種々の名品を愛蔵している。強大になりつつある実力派のパーグである。
ジュエリエン家
代々の家系は策士で、女性が家長となる風習がある。古くはハイルダル聖王国の妻として娶られた修道女が王の死後にこの地へ追放された末裔だという。家長は生物学者で鉱物採集が趣味で、その趣味が高じてマルダンの鉱石産業に役立っている。メルデューク家を言いくるめた弁舌と冷静さを持っている。ヒステリックな面も垣間見せ、宗教に関心が無く、利用できる存在と見ている。
エテルフォス家
過去、大パーグであった名門。家長は正統な血筋ではなく養子である。未だ独身の彼が家長になってから、領地は改良され、開墾されて広げられ、支配政策にも改革が行われて、かなりの成功と資金を得た。莫大な資金を使って、表向き社交界の友人や学者、商人など多くの様々な顔をもつ人物たちを各国に派遣し、いわば非公式の諜報員として密かに情報を収集させることに費やしている。最大の名門貴族のベストックをはじめ、他の貴族にも呼び掛けて、オークハンター(共和国傭兵第二科部隊)の設立に尽力した。
ボルガーン家
ハイルダルの騎士の家系。初期のマルダン財政は彼の先祖に頼りきりだった。かつて市街を囲んでいた土塁・木柵の建設は彼の祖父の事業だった。家長は誇り高く金には執着しない豪気な人物だが、齢重ねてメルデューク家の家長より一つ上の年齢である。健康だが、もう鎧は着用できないほど体力が落ちている。最長老。政治活動では完全な洞察力を供え、ジュエリエン家の家長の才能を見抜き、南部派の中心に据えた。
付:カプイオス家
マルダン国長のパーグ。没落した名門で現在、国勢を取り仕切る担当をこなす。可もなく不可もない穏健な政策で業を煮やす人々からは、手ぬるいと非難の対象になっている。投票権売買で投機をして私腹を肥やしているという噂が立てられている。それが本当ならスキャンダルとなるだろう。
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