紫煙と貴女と僕と。

@SrtRuy4761

ありがちな朝の話

賑やかな街の音が、目を開かせた。

昨日の夜更かしの代償は、重く月曜日にのしかかっている。

「はぁ…。」

最早テンプレートと化したため息を吐き捨てた。

卵かけご飯をコーヒーで流し込んで、家を出る。


胸ポケットから一振りした棒切れを咥える。

立ち止まってジリジリと火をつける。

このナス科の植物が、芳しくも卑しくもある香りを鼻腔に届け、1日の始まりを告げる。


不機嫌な朝食を、イヤホンから流れる強烈なロックがかき消してくれるだろう。ん?どこにやったっけか。最近買ったばかりのAirPodsだ、無くすわけにはいかない。

確か、リュックのー


次の瞬間、自分が肉塊になる音がした。

スローモーションな視界と肉と骨が混ざり合う音が、酷く醜い光景を作り出していた。

「ぁ…じ……ァ!ずぁ……!」

アスファルトに染み込んでいく自分が、およそ言語ではない鳴き声で鳴いている。リン、と鈴が鳴った。



ここまでの急展開ぶりに、これがなろうだったら、大半の人はブラウザバックしているんだろうなぁ。

あーあ、もっとマシな人生にしたかった。異世界転生して、巨乳金髪ブロンドエルフとえへへうふふデュフフしたかったよ。


恐らく、死んで(?)からかなりの時間が経った。

最後の鈴の音を聞いてから、この真っ白な空間に意識だけが浮かんでいる。


つづく

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

紫煙と貴女と僕と。 @SrtRuy4761

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ