神様のルール
砂竹洋
序章
僕は今、町内の大型デパートの中に居る。
しかし僕は、買い物に来たわけでも彼女とのデートを楽しんでるわけでも無い。というか彼女なんて居ないけど。それどころか友人も結構少なかったりする。
――まぁそんな話は置いておこう。今はそんな事はどうでもいいんだ。
ここには、ある目的を果たすために来た。
デパートで買い物以外に目的があるなんてあまり良い印象は持たれないだろうけど、実際良い事をしに来てるわけじゃないから、好きに考えてくれて構わない。
でもまさか、こんな大それた事件に関わる事になるなんて思いもしなかった。
僕が居るデパートは今、ちょっとした地獄絵図だ。けたたましく鳴り響く防犯ベルの音。所々から火が回り、辺りは我先にと外に駆け出す人たちで溢れ返っている。
「早く行ってよ! 後ろがつっかえてるのが分からないの!?」
「くそっ! なんで俺がこんな目に遭わなきゃいけないんだ! おいどけ! そこを通せ!」
そんな自分勝手な叫びがあちこちから聞こえてくる。この人たちは学生時代にちゃんと避難訓練をやらなかったのだろうか。誰もが我先に逃げようとするから、お互いの体が障害となってまともに避難できる状況じゃない。
ちなみにこんな騒ぎを起こしたのは誰かと言われれば――僕である。
正直、ここまでの事になるとは思わなかった。ここまでするつもりじゃなかった。
でも、こんな事が起こってしまって確かに確信した事がある。
『これ』は確かにとてつもない力がある。こんな状況を作り出すほどの力が……。
これなら本当に世界を変える事だって不可能じゃないかもしれない。
だけど、本当にそんな大それた事を僕がやってしまっていいのだろうか?
ただの平凡な、それどころか少し平均より劣っているような高校生が、そんな事をして良いものだろうか?
こんな事には関わらないで、普通に学校生活を楽しんでいた方が良いんじゃないか?
――でも、何もしないと僕が死ぬんだ。
決心しろ、僕。むしろこれは運命だと思え。僕は最初からこのために生まれてきたのだ。
『これ』を受け取った瞬間に始まっていたのだ。全てはあの日、あの瞬間に……。
僕は、この先に待ち受ける事への不安と、若干の期待で頭がぐちゃぐちゃになって、しばらくの間呆然とその場に立ち尽くす事しか出来なかった。
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