会いたいから.....

十六夜 狐音

1話

 いつもの帰り道のいつものコンビニ、だけどいつものじゃないことがあった。



 僕、海上うなかみりくは今日からバイトの新入りの女の子に一目惚れしてしまった。


「いらっしゃいませ」



 普段は聞き流しているそんな典型文テンプレートな接客は可愛らしい声によって僕の耳から離れなくなった。


「可愛い声の店員さんか、顔見てみたいなぁ。」


 とかそんなことを口にはしなかったが思った。


 ふと後ろを向くとその声が発せられたであろう言葉で表せないくらい可愛らしい女性が、かがんで作業をしていた。


 言葉で表せないくらい可愛いというのも僕の狭いストライクゾーンに剛速球が飛んできたんだ。


(うーん、一言でいいからお話がしたい。)


 そんな思いから取った行動はとてもあほくさいことであった。



「すみません。ビタミンドリンクはどこにありますか?」


 そう、毎日きてるからわからないはずがないのに聞いてしまった。


「はい、こちらになります。」


 彼女は目の前の棚を指さす。



「ありがとうございます。」


 なんと目の前だったあああああああああああ。






 でも一言話せたから満足!


 せっかく教えてもらったことだし、買って帰るか


 幸いにも店内にはその可愛らしい「雲下くもした」と名札を付けた店員さんしか見当たらなかった。



僕は商品を持ってレジへと向かった。


僕は先ほど話した会話がそれだけなのに恥ずかしくて下を向いていたら。


裏から店員さんが出てきて「一点で489円になります。」


しかしその声は彼女のものではなかった。顔を上げると明日には髪の毛が残っているのか不安に見舞われているであろうおじさんが会計をしてくれていた。


「はぁ、あの人がよかったなぁ」


そんな言葉を店から出てつぶやくと後ろの自動扉が開いて


「お客さま、お忘れ物です。」

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