第2話 8歳になったので王都へ行ったら美少年を拾いました

月日は流れてレナンジェスは8歳の誕生日を迎えた。


『お誕生日おめでとう』


両親と3つ年下の妹がお祝いしてくれる。


「ありがとう」


そう言いながらレナンジェスはバースデーケーキに立てられた蝋燭の火を吹き消す。


(前世の知識で無双するとは…自分の才能が眩しいぜ)


レナンジェスはそう考えながら満面の笑みを浮かべる。


彼の能力は水魔法だ。しかし魔力を赤ん坊の頃から高めていたレナンジェスは水魔法の応用する事を覚えた。要は液体であれば水魔法にイメージを加えれば前世で愛用していた物を作れるのだ。


(この世界は著作権が確立されているのが素晴らしい。おかげでお金には困らない)


彼が思い付いたのはシャンプー、リンス、ボディーソープ、乳液、化粧水、各種ポーションだ。それに加えて転生前の彼氏の浮気相手“オナホール”に使われていたローション、乾燥パスタ、即席麺、醤油、味噌、ウスターソース、マヨネーズを開発する。ついでにリバーシー、トランプなどの嗜好品も作ってみた。


それらの利益と著作料でハックマン家の懐は潤っている。困ったことに両親が少し贅沢になった事だろうか。


「父上、母上に申し上げます。最近、浪費が激しいみたいですので少しは慎んでください。それと前に提案した税制改革の件もご検討ください」


その言葉に両親は嬉しそうな顔をする。何しろこの世界の文字が漢字、平仮名、カタカナで計算も中学生レベルである。


武では部活で培った剣道とダイエットの為に通ったボクササイズを“ハックマン流格闘術”として広めた。故にレナンジェスは神童扱いなのだ。


「税制改革は既に行っておるぞ。まさか税を減らして納税額が3倍になったのは驚きだったが。それと土壌改良、農業改革、特産品開発、観光開発も終わっておる」


父はそう言うとニヤリと笑う。


(意外と有能なんだよなぁ)


子爵家の領土は海と山に面している


海辺では塩田、魚の加工、貿易を行っている。そこにリゾート地を作る事をレナンジェスは提案した。


山側には薬草園、コーヒー農園、カカオ豆畑、茶畑、果樹園を作りドライフルーツの加工工場と製薬工場を作らせた。その他にも温泉施設、木工細工工場などを作る。


農地は臨採式農業を採用し、大規模な穀倉地帯を作る。更に未開拓の土地を開拓し砂糖大根、さつまいも、馬鈴薯を作らせる。そして農村部に乳製品工場、砂糖工場も作った。


そして学校制度も作る。これにより識字率、計算能力が向上し領民達もそれぞれ特産品開発等を積極的に行うようになっていた。


おかげでハックマン家の人口は年々増加している。それはレナンジェスの提案を即座に実行できる父の手腕でもあった。


「ところで誕生日プレゼントは本当に王都への付き添いだけで良いのか?」


「はい父上。王都で見識を広げたいと思います。それと従者選びですね」


「そうか。お前は本当に貪欲だな」


そう言いながら父は嬉しそうに笑う。息子の向上心が嬉しいのであろう。


(王都に行ったら是非とも美少女を確保せねば)


父の思いとは裏腹にレナンジェスはそんな事を考えていた。何しろこの国では奴隷制度が無いのだ。故に貧しい家の娘かスラム街の孤児を連れてくる必要がある。


(フフフ…ハーレムの第一歩が今始まる)


レナンジェスなニヤニヤしながらそんな事を考えていた。




「何故だ…何故スラム街が無い?」


思わず呟くレナンジェス。


「それはお前がこの国を発展させたからだろう?他領でも特産品開発や観光開発で人手が足りないのだ。結果、貧しい者が居なくなったのだから良いではないか」


父はそう言いながらニコリと笑う。


「…そうですね」


「そうだろう。それと金は貯め込むものではないぞ。いざと言う時に必要な分以外は金を使わなければ経済は発展しないのでな。故に王都も好景気なのだよ」


(…この父親…出来る!切れ者だ!!何故子爵なのかが解らない…)


レナンジェスは苦笑いを浮べながらそんな事を考えている時であった。


『助けて~』


不意に路地裏からそんな声が聞こえてくる。その声に反応して即座に馬車から飛び降りると声のする方向へ駆け出した。


「何をしている!」


レナンジェスは剣を構え2人の子供を取り囲むガラの悪そうな大人たちに怒鳴る。


「お前には関係ないだろ。こいつらは商品なんだよ!それが逃げ出したから回収するだけだ!」


「人身売買は違法ですよ」


「五月蠅いガキだ。こいつも売ってしまえ」


その言葉にレナンジェスは水魔法を発動させる。そしてゴロツキ共を氷の牢に閉じ込めた。


「何だと…」


ゴロツキ共は狼狽えながらも火魔法で氷の牢を破壊しようとする。しかし火魔法を使う程に氷の牢は強固になる。


(フフフ、魔力吸収効果(ドレイン)が効いているね)


レナンジェスは含み笑いしながら2人の子供を助け出す。後は衛兵に任せて終わりだった。




「もう大丈夫だよ。君達の家は何処だ?」


レナンジェスは優しく子供たちに問い掛ける。


『両親は居ません。僕たちは寒村から連れて来られたので…』


話を聞いてみると両親は他界した。そして残された幼子を人攫いに連れて来られたそうだ。


「フム、これは人身売買組織があるな」


父はそう言うと衛兵に何やら言っている。父が動けば3日以内に人身売買組織と関わった者達は処分されるだろう。


「親戚は居ないの?」


「居ません・・・」


レナンジェスの問いに2人はションボリしながら答える。


「そうか…行く場所が無いなら孤児院に引き取って貰うしかないか…」


レナンジェスがそう言うと2人の子供は涙目でレナンジェスを見つめる。


(止めてくれ…そんな子犬の様な眼差しで見つめないでくれ…お姉さん…元はショタもいける口だったんだからね!)


そんな事を考えている時だった。


「よし、我が家で引き取ろう。お前も従者を探していたのだろ?」


父がそう言いながら2人の子供を見つめる。


(まさか…父上もショタ趣味か?目が血走っているぞ。それからメイド服を着せてとか呟かないでください。メイド男の娘なんて…大好物だぁ!!)


レナンジェスはそう心の中で叫びながら素直に頷く。すると父はこれまで見た事が無いような淫らな笑みを浮かべていた。




「父上、母上に申し上げます。ヒューイとドゥーイにメイド服を着せるのは如何なものでしょうか?」


引き取った2人の子供はヒューイとドゥーイと言う名前の5歳の男の子だった。屋敷に着くなり両親は2人の子供にメイド服を着せたのだ。


「レナンジェスちゃんの言う通り半ズボンも考えたんだけどね。あまりに可愛いから」


母はそう言いながらニヤケている。


「目の保養にな。美少年が女装なんて素晴らしいではないか」


父も同じく変態らしい。


「妄想だけなら問題ないと思いますけどね、実際に5歳の子供にこんな事をしたら変態だと思われるのでは?」


「そんなに褒めてくれるな息子よ。変態とは常に紳士であり続ける事のなのだよ」


そう言いながら嬉しそうにする父。


「兄さま、彼等を借りますね」


不意に現れた妹が2人を連れて行く。おままごとの相手にぴったりだと思ったのだろう。


「大丈夫よ、ママは半ズボンも好きだから。」


母のその言葉でレナンジェスは同族嫌悪感に苛まれた。

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