第27話 戦場に咲く



「閣下!!緊急事態でございます!!」

「どうした?王国の兵士どもが降伏でも言ってきたか?」

「い、いえ……東側より敵の増援が!現在交戦中ですが、壊滅は時間の問題かと」

「何っ!東側はこちらが有利に進めていたのではなかったのか!」

「はっ!それが……現在約半数が戦闘不能、残り半数も戦意の低下は免れないかと……」

「どういうことだ!いったいどれほどの軍勢が来たのだ!」

「はっ!それが……」

「早く申せ!」

「それが……少女1人にございます」

「……何?」

「はっ!少女が1人にございます」



『いやっほう〜い!』

『打て打て!じゃんじゃん打ちまくれ〜!』

『42番から45番は余に続け〜!突撃〜!』

『アイスニードル(睡眠付き)!』

『フレアストーム(麻痺付き)!』


『会長……みんな好き勝手やってません?』

『仕方ないだろ?我々の活躍を姫様が見ておるのだからな』

『でも……目立ちすぎじゃないですか?』

『許容範囲だ』

『うそだ〜!』



 わたしの進む方向に向かって死者さん達が一斉に攻撃を仕掛けています。

 どうやらわたしの意思を汲んでくれているみたいで、派手ではありますが麻痺や睡眠など殺してしまわない様に気をつけてくれているみたいです。


「あの金色の魂さんが、きっと指揮をしてくれているんですね」


 常にわたしの上空にユラユラと揺れる金色の魂さん。


「わたしが見えるうちにちゃんとお礼を言わないといけませんね」


 上空を見上げて笑いかけると、金色の魂さんもプルプルと震えて返事を返してくれました。



『……姫様が私を見て笑いかけてくれる日が来るとは……』

『会長?』

『ふふふ、滾ってきた〜!!!』

『うわぁっ!会長が壊れた〜!』



「閣下!東側は全滅!現在中央軍が加勢に向かっていますがもはや体勢は決したかと……」

「そんな馬鹿な!ありえん!断じてありえん!」



「将軍!東側より援軍です!東側の敵軍は壊滅!現在中央にて交戦中とのことです!」

「なんだと!どこの軍だ!王都からの増援かっ?」

「いえ……それが……」

「どうした?どこの軍だ?」

「はい、それが……少女1人です」

「……何?」



『よぅし!ここいらは片付いたな』

『ええ、あら?あちらからまた懲りずにやってくるわよ』

『ははっ、息つく間もないってやつか』

『……息してないから』



「歌姫様〜!!」

「皆さん!ご無事でしたか!」

「歌姫様も!まさかこんなことになってるとは……」

「これ……全部歌姫様が?」

「え?ええ、まあ……」


 辺り一面死屍累々(麻痺と睡眠で)倒れた敵兵で埋め尽くされています。

 一緒にきた冒険者さんと騎士団の皆さんがわたしのところに駆けつけてくださりました。


「歌姫様!それでこれから如何なさるおつもりで?」

「そうですね……うん。このまま敵本陣を落としちゃいましょうか」


「「「は?」」」


「中央から真っ直ぐに北側に上がり敵本陣を強襲しましょう」

「えっと……結構いますよ?敵軍」

「ええ、大丈夫です。サクッと終わらせますから」



『姫様がヤル気です。30番と40番を呼んで下さい』

『そういえば今日は2人とも見てないですね、重要な日なのに……やっぱり神さんは忙しいんですかね』

『……今日は2人で支◯そば食べに行ってます』

『仕事しろやあぁぁぁ〜!!!』


 わたしと冒険者さんに騎士団の皆さんで中央を一気に突破してこの戦いを終わらせようと思います。


 確認のために上空を見上げると、金色の魂の左右に虹色の魂が現れていました。

 綺麗な色です、どういった方の魂なのでしょうか?

 ふとこちらを見ている気がしたのでお辞儀をして微笑んでおきました。



『会長?どういうことです?』

『何がかな?』

『ミィスちゃん、もしかして我々が見えているんですか?』

『はい、その様ですね。戦場に渦巻く死者の魂がそうさせるのでしょう、ああ、あとミィスちゃんではなく姫様と呼ぶように』

『姫様?』

『いいと思いません?』

『『姫様っ!今こっちみて笑った!』』

『どうです?気合い入るでしょう?』

『本気出しちゃうよ?』

『いいのではないですか?姫様も早目の決着を望んでおられますし』



 どうやら魂さん達も頑張ってくださるみたいです。

 さぁ終わらせに行きましょう。




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