第18話 商業区の幽霊 依頼は?



 商業区の幽霊騒動は治ることなく続いていました。

 王国の魔術師さんや神官さんが出向いて解決に乗り出したそうですが、それでも幽霊が出没しなくなることはないそうです。


「なぁ聞いたか?」

「ああ、神官様でも除霊出来ないらしいぜ」

「なんでも、倒したと思っても土に変わるだけだとか」

「次の日には何事もなかった様に現れるんだそうだ」

「いったい何なんだろうな?」

「実際被害らしい被害はないらしいからな。国も本腰を入れてってわけじゃないんだろうよ」

「ギルドのほうにも一応依頼は来てるんだよな?」

「掲示板には貼ってなかったからギルド本体が受けてるんじゃないか?」


 酒場で飲んでいる冒険者さんが話をしているのを、わたしは給仕をしながら聞いていました。


「ミィスちゃんも興味あるのかい?」


 冒険者さんのひとりがそうわたしに聞きました。


「そうですね。ちょっと気にはなってます」

「へ〜ミィスちゃんは幽霊とかそういうのは苦手なのかと思ってたよ」

「全然苦手ではないですよ。寧ろお会いしてみたいくらいです」

「ははは、そういえばミィスちゃんも冒険者だものな。興味があって当然か」



『ああ言ってますけど、会長見てきたんでしょ?どうでした?』

『そうですねぇ、中々面白いことになりそうでしたよ。ねぇ2番さん』

『そうじゃのぅ、珍しいものを見せてもろうたわ』

『幽霊じゃないんですか?』

『そんな非現実的なものではないですね』

『……我々が一番非現実的だと思うんですが』



 わたしも興味があるので行ってみたいのは山々なのですが、先日のワイバーン討伐以降酒場のお客さんが増えて忙しくて中々行けそうにもありません。


 今日も深夜までお仕事でしたので次におやすみが貰えるまでお預けかなと思ってます。


「今日も一日ありがとうございます」


 小屋に帰ってくるとお庭や小屋周りは綺麗に掃除してありました。

 死者さん達には本当に感謝です。



『会長、ちょっとご報告があります』

『ん?どうかしましたか?95番』

『はい、ここ数日ミィスちゃんの小屋周りを不審な人物が見張っており78番が尾行したところ……』

『王国の密偵だった。ですか?』

『ご存知でしたか!』

『当たり前です。ミィスちゃんの周りに不審者がいればすぐにわかりますよ』

『流石は会長です!』

『姿が見えないだけで俺たちが一番不審者なんだけどな……』



 翌日の朝、わたしの小屋に来訪者がありました。

 早い時間でしたのでお仕事にまだ出かけてませんでしたから一応お話は伺うことにしました。


「私、王国教会の神官をしております。バベットと申します。歌姫ミィス様でお間違えないでしょうか?」

「あ、はい。わたしがミィスですけど……どういったご用件でしょうか?」


 訪ねてこられたのは神官さんでした。

 小屋の前には護衛の騎士さんもいらっしいます。


 騎士さんは、にこやかに手を振ってくれました。

 あっ、討伐のときにご一緒した騎士さんですね。


 わたしが騎士さんに手を振っていると神官さんは咳払いをして話を始めました。が……


「こほん!失礼、王国よりのいら……ぐわっ!」


 バチっと音がして神官さんは、プスプスと焦げ臭い匂いをさせてひっくり返ってしまいました。



『47番、電撃(中)』

『はい』

『こほん、じゃないです。馬鹿なんですかね?偉そうに』

『ホント、態度を改めるまでやりますか?』

『そうしてください。小と中を交互にやってあげなさい』


「いったい何が?まぁい……いたっ……何?……ぐわっ!……どうな……アウチ!……」


 神官さんが話そうとするとパチっ火花が散って話が進みません。

 結局、神官さんは何も話せずに騎士さんに背負われて帰っていきました。

 いったい何をしにこられたのでしょうか?







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