第3章 商業区の幽霊

第17話 商業区の幽霊


 王都に帰還して数日が過ぎました。

 わたしはずっとおやすみしていた酒場でのお仕事に復帰しています。


「ミィスちゃん!4番テーブルにエール8つ!」

「はぁ〜い」


「あっちの連中に注文聞いとくれ!」

「わかりました!」


 夕暮れ時の酒場はお客さんでごった返していて大繁盛でした。

 先日の討伐でご一緒した冒険者さん達も来てくださっていて嬉しい限りです。



『やっぱり酒場で働いてるミィスちゃんは生き生きしてるよな』

『そうやってミィスちゃんを見ている19番さんも生き生きしてますよ』

『死んでるのに生き生きっておかしくないか?』

『じゃあ、死に死にしてますよ』

『それはちょっとイヤだな……』


 ジョッキに並々と注がれたエールを片手に先日のワイバーン討伐の武勇伝を語る冒険者さん。

 それをキラキラとした目で聞き入る若い冒険者さん。


 かたや遠くの森で現れたドラゴンと戦った話をする年配の元冒険者さん。

 そんな話を楽しみにしてこの酒場に通うスラム街の住人達。


 普段なら丁度お月様が酒場の頭の上を通り過ぎたくらいには閉店するのだけど、この日は酒場のご主人も参加して朝まで宴会が続きました。

 皆さんの笑顔がとても楽しそうでわたしも楽しい時間を過ごすことが出来ました。


 そんなある日のことでした。

 いつものように酒場でお仕事をしていると馴染みの冒険者さんが不思議な話をしてくださいました。


 なんでも、こことは反対側の東側にある商業区に夜な夜な幽霊が出るということでした。

 気味が悪いので商業区から冒険者ギルドに調査依頼が来たのですが、今のところ誰もその幽霊を捕まえれていないそうです。



『幽霊とはまた妙なものが紛れ込んだな』

『ゴーストか何かのアンデットの類ですかね?』

『恐らくはそうだと思うが、結界が張ってある王都内に入ってくるほどだ、上位種や変異種の可能性もあるな』

『どうします?会長。調査だけでもしますか?』

『そうですね。88番に89番、お願いします』

『『了解です』』



 その幽霊さんは誰にでも見えるのでしょうか?わたしの友人である死者さんとはまた違った存在なのでしょうか?

 もし誰にでも見えるのでしたらお話を伺いたいものです。もしかしたら死者さんを見る方法があるかもしれません。

 いつも陰ながら見守ってくれている死者さんにキチンとお礼が出来ればと思いますし。



『なぁ、会長が何か企んでる気がしないか?』

『ああ、アレは何か企んでる時の雰囲気だな』

『魂だから顔色がわからないもんな』

『顔がわかったらきっと悪そうな顔をしてるぜ』



 そのあとも、商業区の幽霊の話は途切れることなく噂にのぼり続けました。


 やっぱりちょっと気になりますのでわたしも行ってみようかなぁと思います。








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