e13「怖い話」



 どうもこんばんは、薮坂です。いやぁ、暑いですね。最近こればかり言ってる気がしますが、本当に暑いから仕方ありません。夏に生まれたハズなんですけど、暑さには全く耐性がないんですよね。あぁ、今日も汗が止まらない……。


 さて、このエッセイもついに13回目を迎えました。そうです、「13」回目です。忌み数として恐れられている13。これには諸説あるようですが、キリスト教で裏切り者とされるユダが13番目の席に座っただとか、キリストがお亡くなりになられたのが13日の金曜日だとか、テンプル騎士団が処刑された日……などの宗教的要因があるみたいですね。

 あと、絞首刑に処される囚人の、最後に登る階段の段数が13段だとか。他にもあれやこれや。あまり日本人には馴染みのない文化かも知れませんが、海外では「13」を「12+1」とかで無理矢理表現していたりして、13を忌避する傾向が強いようです。


 そんなわけで。暑さをなんとかしようと言うことで、今日は「怖い話」について、話してみたいと思います。


 私はですね、この手の「怖い話」を最近、全く体験してないんですよね。というのも昔、少し下手を打ったことがありまして。

 少し話は逸れますが、幼い頃の私は、わりと不思議な体験をすることが多かったのですよ。


 寝ている時にナニカに足を引っ張られて足首を亜脱臼したり。

 親が何故か玄関で寝ている私を発見し、起こそうと思って近づいたら私はそこにはいなく、普通にベッドで寝ていたり。

 夜釣りをしていた時、防波堤の奥に進んでいく釣り人とすれ違ったのはいいものの、そこは行き止まりであり、教えてあげようと追いかけたらその釣り人が忽然と消えていたり。

 寝ている時に金縛りにあったはいいものの、聞こえてくるのは「ふふふ……」みたいな女の声ではなく、「ぐへ、げへへへwww」みたいなおっさんの爆笑する声だったり。

 曽祖父のお葬式で線香守をしていたとき、電源を切っていたハズの葬儀会館の自動ドアがひとりでに開いたり。


 その他にもわりといろんな体験をしたのですが、そのどれもが決定的にんですよね。

 最後の自動ドアの話なんて、曽祖父は生前、脚を悪くして大好きな散歩が出来なかったこともあり、もしかしたら霊体となって大好きな散歩に出て行ったのでは、というハートウォーミングなお話だったりするのです。


 20歳までに心霊体験をすると、一生その体験が続く。という話から、私はこの「あんまり怖くない心霊体験」をずっとしていくのかなぁ、と思っていたのです。そして、ついに20歳になった時のこと。

 恥ずかしながら、そのころ私はいろいろ拗らせておりまして。つまりは、「ひょっとしたら可愛い女の子の幽霊に出会えるのではなかろうか。あわよくば仲良くなって、人間と幽霊のひと夏のアバンチュール的な何かを体験できるのではなかろうか」という、20歳になったヤツがおおよそ考えてはいけない考えに支配されていたんですね。


 そんな20歳の人間がいる方が怖ぇよ! という、生きてる人間の方が怖い理論なんですけど。いや、生きてる人間の方が怖い理論ならば、職業柄売れるほど知ってはいるのですが。まぁとにかく、そんな危なめの考えに支配されていた時のことです。


 その時はまだ実家にいましたので、自室のベッドで寝ていたらですね、妙に視線を感じるんですよ。じぃーっと見つめられているというか、見下されているというか。観察されている、というのが一番近いかも知れません。付かず離れず、じっと凝視されるあの不快な感覚。纏わり付くようなじとっとした視線。その日は冬の寒い日でしたが、じめじめした空気を感じたのです。

 私は、ぱっと目を開いてその視線の主を視界に捉えました。すると。


 そこにんですよ。私の足元に。私を見下すようにして、輪郭を白っぽく縁取られた小学生くらいの男の子が。

 背が低いのはわかるけれど、霞がかかったように顔ははっきりと見えない。というか、目の部分が窪んで真っ黒だったんですね。口の部分も穴が空いたように真っ黒。その表情は、絵画で例えるならムンクの「叫び」のようなものでした。


 その瞬間、私の中に生まれた感情は。「驚き」でも「恐怖」でもなく、純粋な「怒り」だったのです。

 だってそうでしょう。私は前述のとおり、「可愛い女の子の幽霊」に本気で会いたいと思っていた危ないヤツです。それが、それとは対極にある「小学生の男の幽霊」なんぞに出会ってしまったら。驚きや恐怖なんか飛び越えて、怒りが生まれるのは必定でございましょう。


 私の本気の怒りに触れたその幽霊は、「えっ? えっ?」みたいな表情を浮かべ、すぐさま煙のようにすぅーっと消えてしまったのでした。

 私に恐れをなしたのか、それとも。コイツは関わっちゃなんねぇヤツだ、と思ったのか。真相は彼にしかわかりませんが、しかしその後ピタリと心霊体験をしなくなってしまったことを鑑みると、後者だろうなぁと今では思いますね。

 きっと、幽霊ネットワークみたいなもので、「アイツだけには関わってはならない」みたいなお達しが出たのでしょう。


 と言うわけで。可愛い女の子の幽霊に出会うことはおろか、あんまり怖くない心霊体験さえもなくなってしまい、その代わりに「生きてる人間の方が怖い」体験を現在進行形で続けている、薮坂の悲しいお話でした。



 いや、すいません。全然キレイな終わり方じゃないですね、このままでは。

 今回のサブタイトルは「怖い話」と銘打っていますので、今日はちゃんとした「怖い話」を披露してみたいと思います。

 まず初めに断っておかなければいけないことがひとつ。これは「私が実際に体験した話」ではなく、「私のが実際に体験した話」になります。私の心霊体験は上記の通り、どれもあんまり怖くないからです。

 怖い話につきものなのが、「友達の友達」という言葉。近そうで実は全然知らない人が体験した、っていうのがセオリーなんですが、これは私の仲のいい友達が実際に体験したことです。ですので話の出所は保証されています。

 友達がこの話をしてくれた時、その腕には鳥肌が立っていました。話すと身の毛がよだつほど、それは怖い体験だったのでしょう。


 聞いた私も、「これぞ心霊体験だ!」と思えるような傑作でした。それを元に一本、お話を書いてみましたので、よろしければどうぞ。


>四葉のクローバー


https://kakuyomu.jp/works/1177354054890601545


 と言うわけで幽霊にすら嫌われる、薮坂でした。

 いつもありがとうございます。それでは、また。





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