父、説教始める

 セコは「はい、はい……」

 とだけ繰り返すだけで、聞いてる様子がない!

「だって奥さん、退職金であのアパート買ったって聞いたから」

「「?」」

 両親のどちらもそんな話はしていないし、事実母は借金をしてアパートを手に入れた。彼女の夢だったのだ。

「妄想」

 わたくしはつぶやく、するとセコ、

「ああ、じゃあ私の妄想かもしれません」

 静かにいなす。

 気にくわない。

 父が、

「あんたが勝手にそう思ったんでしょ? 退職金なんて話はわたしはしていない。うちが公務員だから、勝手にそう想像したんでしょうけども」

 セコはのらくらと、利いた様子もない。

「たぶん、それもコミでこの請求なんでしょ」

 するとセコ。うなずく。

 これだと、あれだな。

 絶対引かない気だ。

 粘るぞきっと。

「私はもう年だから、30年ローンなんて組めないでしょ?」

 と母。

 セコは、悪びれもせずうなずく。まるで全てわかっていますよと言うように。

「だから、ローン返済、短くて済む分、割高なの。収入13万のうち、手取りは3万円。それでもうれしいじゃない?」

 母が訴えるが、それはなんの訴えなのか。

 セコ、うなずくだけ。

「こいつは1500万で物件買って、そのうち800万が借金よ?」

 セコ、驚くように、無表情で。

「そうなんですか……」

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