17 新しい仲間
朝の光がカーテンを通し射し込んでくる。
夢から覚めた俺は、上体を起こしてぼんやりした。
「黒崎が
今現在、俺とアマテラスは、ダンジョンからモンスターが出てこないように結界を張っている。それは異世界から地球へ、ダンジョンを通って現れようとしている
そこまで考えて、俺は黒崎の目論見が分かった気がした。
「結界が無くなったら、
しかし一体何のために、黒崎は
「まっさかー。今時、世界を滅ぼすなんて流行らないよな……」
同じ現代の日本人出身と思われる黒崎が、世界を滅ぼす理由が思い当たらない。そんなことをして何の得になるだろうか。
「俺一人でビッグサイトへ行って、本人に聞く? 気が進まないなー」
俺は額を押さえて呻いた。
レベルの限界である「Lv.999」は、神や魔王や伝説級モンスターなら誰でも到達している数字だ。そしてLv.999以上は、能力が成長しても数値に表示されない。ステータスに表れない能力や技術、殺しても死なない不死の特性があったりして非常に厄介だ。
経験上、Lv.999同士の戦いは一筋縄ではいかないと俺は知っていた。
黒崎とは積極的に戦いたくない。
プレイヤーが解散しようが、たとえ日本が滅びようが、そんなことは大したことじゃない。大事なのは心菜と真、ついでに自分の身の安全だけだ。
と、思っていた時期が俺にもありました。
「枢たん、黒崎さんに勝てないのかにゃ?!」
「は? どうしたんだよ心菜?」
「どうしたもこうしたもないにゃ! 心菜は負けて悔しい! リベンジするのにゃ!」
心菜は闘志の炎を盛大に燃え上がらせている。
学校に登校して、今は心菜と真と作戦会議中だ。
真はスマホを操作してメッセージをチェックしている。
「あれから佐々木さんから連絡ねーな。プレイヤーの活動も自粛になったみたいだし……あ、伊勢神宮が火事だってよ。伊勢神宮と言えば祭神のアマテラスさまは無事かなー」
「何?!」
俺もニュースをチェックする。
確かに伊勢神宮の荒祭宮が、原因不明の火事で焼けたとニュースになっている。
心菜が俺の前の机をバンと叩いた。
「枢たん、リピートアフタミー!」
「はい?」
「レベルMAXの俺なら、黒崎なんか楽勝だ。ぺぺいのぺい」
「誰が言うか!」
俺と心菜が睨みあう中、真がのんびり口を挟んだ。
「そういえば枢っちが駆け付ける直前、黒崎は心菜ちゃんを殺そうとしてたよ」
なんだと? 俺の
「……やっぱりアイツ、一回殺っとくか」
「枢たん目が怖いです」
黒崎は敵だと確定したが、一応、一人でビッグサイトへ行って奴らの目的を聞いてみようと、俺は思い直した。情報収集は戦略の一部である。
罠かもしれないので、念には念を入れておこう。
放課後、同じクラスの男子生徒、夜鳥に声を掛ける。
「夜鳥、ちょっと良いか」
俺は夜鳥と男子トイレに移動した。
予め用意しておいた報酬を渡す。
「え、これを俺にくれるのか?!」
漆黒の鞘に包まれた小振りのナイフを受け取って、夜鳥は驚いた顔をした。
夜鳥は慣れた手つきでナイフを鞘から抜く。
そしてナイフを光にかざし、切っ先に向かって歪曲した刃をうっとり見つめた。
「悪くない……」
いつも無愛想な夜鳥の頬がゆるんでいる。
こいつとは二年間同じクラスだったけど、こんな表情は初めて見たぞ。
しかしトイレでナイフに夢中の男子……ちょっと変態というか危ないというか。
俺は咳払いした。
「ごほん。これは前払いの報酬だ。俺に協力して目立たないように活躍してくれるなら、オーダーメイドで色々作ってやるよ」
俺は夜鳥に交渉を持ちかけていた。
夜鳥はLv.93の暗殺者で、スキルを見たところ特化型であり、上手く活かせば強力な力を持っている。
仲間にすれば心強い。
懐柔策として、俺が作った武器を渡すことにした。
この世界では異世界のように剣やナイフを売っている店が無いので、十分に交渉材料になると踏んでのことだった。
「分かった。じゃあ今から近藤は俺の雇い主だ」
夜鳥はナイフを制服の内側に隠すと、俺に向き直る。
「で、いったい何と戦うんだ?」
こうして俺は準備を整え、心菜たちを説得して、黒崎の待つビッグサイトへ向かうことにした。
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