第8話 親子
私の娘は、本当に可愛い顔をした女の子だ。
小さい頃からスカウトの人にしつこく話を持ちかけられたり、少し年上の男の子が一緒に遊びたがったり、とにかく心配がつきなかった。
親バカと言われればそうかもしれないが、実際に誘拐されかけたこともあり、私は娘のことに少し過敏になっていた。
特に娘が小学生の頃は、男の子のような地味な服装をさせてみたり、出来るだけ目立たせないように気をつけていた。
ランドセルまで青くしてしまったことで逆に目立ってしまったのは今では笑い話のひとつだ。
娘が高校1年生だった夏の終わり、前田さんの奥さんが頭を下げに来られた。
それがもう9年前になる。
「お嬢さんを学校の寮から通わせてあげるのは難しいでしょうか。」
想像していなかった言葉に、私は最初何が何だかサッパリ分からなかった。
「詳しく説明して頂けないでしょうか。」
「主人に病が見つかってしまって、息子の誠一には予定より早く知り合いの所に修行に行かせることになりました。ですが、お宅のお嬢さんのことが心配で町を離れられないと言って聞かないんです。」
聞けば、彼は何度か娘の後をつける人間を見かけていたそうで、それを心配して娘が無事に帰宅するまでいつも表へ出てくれていたそうだ。
駅はすぐ目の前なのだが、そのようなことがあったと聞くととても恐ろしくなる。
昔はあんなに娘のことに過敏になっていたはずなのに、私は平和な毎日にあぐらをかき娘を危険にさらしていた。
その後、奥さんに言われた通り、娘には私が仕事で家を留守にする日が増えるからと説明し、学校に併設された寮から通学させることにした。
当時、二人は交際しているわけではなかったようだが、時々娘の寂しそうな顔を見かけると、いつも私はあの日のことを思い出してしまう。
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