第2話 幼いプライド
中学に上がると男子は急によそよそしくなる。この間まで女子を蹴っ飛ばしていたあいつらも「佐藤さん。」と、さん付けで呼んできて、気味が悪い。
女子も制服のスカート効果か、自然とおしとやかになっていた。
「佐藤さんって前田くんと付き合ってるの?」
この質問は別の小学校から来た子から沢山受けた。
ここで「前田が勝手に言ってるだけ」とか「私は迷惑だけど」とか言うと、相手の女の子はムッとして良いことは無い。
なぜならこの子は前田のことが好きだから。
「一度も付き合ったことないし、これからもないよ。」
いつもこれが正解だった。
「そうなの?」
「やっぱりただのウワサかー。」
で終われる。
下手に濁したり、詳しく説明すると「ハッキリ断りなよ!」とか「思わせぶりなことしてるんじゃない?」と、その子の友達にまで説教されたりなんかする。
前田は顔が良かった。
女の子のような可愛い系の顔立ちで、紙がサラサラで中学1年生にしては背が高かった。
だから女の子からよく告白されていた。
でも本人は相変わらずで、クラスが違ったせいかあまり話しはしなくなったけど、たまたま会うと災厄だった。
「おい佐藤!俺の方見ろよ!」
「佐藤!お前男子に触れないように注意しろよな!」
「佐藤!黒の下着は透けるからやめろ!」
「佐藤!髪結ぶの似合ってるぞ!」
と、やたらと他の子の注目を浴びることを大声で言ってくる。
こんなにハッキリ好意をぶつけてくるのは、この時期の男子に珍しいことで、平和な学生生活を送りたい私にはかなりダメージが大きい。
案の定、「お前ら本当はどこまでいってるの?」と詮索されてしまう。
「前田と付き合うことは絶対にありえない!」
もうこれは私の意地だ。
私が前田と付き合わない理由のひとつが、あいつはとんでもないバカ。ということだ。
優等生グループに属していた私には、前田と付き合うなんてことはあり得ないことで、しかも前田は1年生のおわりには、もう五人とエッチしたとウワサされていて、そのウワサのひとりにされてしまうのも絶対に嫌だった。
前田は本当に性欲に素直なバカだった。
ウワサになった女の子達は付き合っていると豪語していたが、「好きでも無いのに付き合うわけないじゃん。」という前田の言葉に傷つき、私はとばっちりを受けないようにコソコソしていた。
でも前田が女の子とエッチしたということ自体に私はとても傷ついていた。
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