第214話 台湾空中戦
12月11日午前3時半。
SBU隊員の先頭になって国防指揮部正門へと向かう。
正門まであと200メートルの所で狙撃を受ける。加島の2人後ろにいた隊員が脚を撃たれた。続けて他の1人も脚を撃たれる。
2人とも左足外側を撃たれていた。
全員が路地に逃げ込んだ。撃たれた2人を隊員2人ずつが担いで逃げ込んでくる。
相手は地上戦のプロだ。殺さずに負傷させる事で救助に人員が割かれるのを狙っている。
路地裏から飛び上がった。
銃弾が飛来して来た方向を透視するが発見出来ない。
透視範囲を広げる。
約800メートル離れたビルの10階の一室。人影の中に銃が見えた。窓の近くに2人。狙撃手とスポッターだ。
スポッターは狙撃の状況を狙撃手に伝える。風向き、湿度による弾丸の落差、撃ち上げ、撃ち下ろし等の全ての状況を計算して狙撃点の修正を教える。
部屋には狙撃の2人以外に、奥の方に5人がひとかたまりになっていた。
どうやら縛られているようだ。部屋の住民だろう。
開けられた窓に寄せられてテーブルが置かれ、その上にバイポッドと呼ばれる二脚付きボルトアクシヨンのライフルを載せ、スコープを覗き込んで狙いをつけている。
銃口から炎が吹き出す。マズルフラッシュだ。誰も被弾していなければいいが。
部屋に飛び込むと同時に狙撃手を窓から放り出す。逃げようとするスポッターの男を捕まえて、これも窓から放り出す。
テーブルの上に残った銃を見る。
ロシア製のSV-98狙撃銃だ。
銃を両手に持って真ん中に膝を当てて引くと銃身がグニャリと曲がった。
奥で縛られていた家族の元へ行き、1人のロープを解いて、俺は窓から飛び出した。
SBU隊員達のいる路地に着地し加島に聞く。
「誰も被弾してないか?」
「大丈夫です。試しにヘルメットを出したら撃たれましたけど」
穴の空いたヘルメットを見せる。
「腕のいい奴だったんだな」
「始末したんですか?」
「10階の窓から飛び降りたよ。よし、行くか」
「はい。脚を撃たれた2人は中山公園に戻ります。1人ずつが付きますので」
「俺が連れていこう。ちょっと待ってろ。動くなよ」
脚を負傷した2人を抱えて飛び上がる。ヘリコプターで着地した公園に2人を降ろし、部隊の元に戻る。
隊員がいるすぐ近くのビルが炎上していた。狙撃を受けたが、場所が特定出来たので、俺が奪ってきた携帯式のミサイルを撃ち込んだらしい。
再び俺を先頭として国防指揮部の正門に向かう。
正門前の道路の向かい側。
隊員を待たせておいて俺1人で正門に駆け寄る。ゲートが閉まっていたので光の玉を溶接の様に使って鍵を焼き切る。ゲートを開けた瞬間に両脇で爆発が起きた。
身体に無数の爆弾の破片が飛んで来る。辺りが砂嵐の様になる。
続いて銃撃を受ける。敵は3箇所だ。目を閉じて感じる方に光の玉を撃つ。
砂埃が落ち着いて視界が効くようになった。着ていた飛行服がボロボロになっている。
後ろを振り返りSBU隊員を呼ぶ。
28人の隊員が正門の内側に駆け込み、左右に別れる。
俺の横に来た加島が言う。
「大丈夫なんですか?」
「服がボロボロだ」
「鏡を見て貰いたいですよ。コントで爆発した後みたいになってます」
「そりゃ楽しいな」
奥の建物から合図が送られてくる。
SBUの他の2小隊が裏から入っていたのだ。
建物内に入り合流する。
他の小隊では3人が命を落としていた。
小隊長2人と話を終えた加島が俺に言う。
「内部の制圧は終わっています。台湾側では30人以上の被害が出ているようです」
「分かった。俺は空を警戒するよ」
外に出て飛び上がる。
北に位置する空軍指揮部に向かった。習志野空挺部隊が行っている筈だ。
高度を500メートルに上げると、西からの飛翔物を感じる。
超低空を飛んで来るミサイルが2基。集中して光の玉を放つ。
遠くで2つの炎が輝く。
空軍指揮部の上空に移動する。
指揮部の建物内部と外で銃撃戦が行われている。
内部は台湾軍で外は中国軍だ。更に外側に中国特殊部隊の後ろを突くように習志野空挺が襲い掛かっている。
建物から炎が上がっている。RPGを撃ち込まれたようだ。
中国側は見えるだけで約30人だ。全員が海から侵入して来た特殊部隊だろう。
上空から次々に光の玉で片付ける。
海沿いに移動して埠頭に座る。ポケットに入れていた携帯食料が無事だったので貪り食う。
西に意識を集中する。
ポケットの衛星携帯電話をチェックする。壊れてはいないようだ。
二階堂に電話する。
「国防指揮部と空軍指揮部は大丈夫だぞ」
「分かりました。もうすぐ大軍が出て行くようです」
西の空を見る。遠くに蜂の群れの様な無数の点が見える。
「全部撃ち落とすか」
「ペトリオットも使います」
「金掛かるだろ。テスト程度にしとけよ」
「頼りにしてます」
遠くに見えていた点が近づいて来る。100機を越えている。
俺は立ち上がって伸びをした。
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