第212話 白い尻

12月11日水曜日AM0:10

 与那国島自衛隊駐屯地を飛び立って西へと向かう。

 高度2000メートルで飛ぶ。

 直ぐに台湾に到達し、島の西側、左手方向に台中市が見下ろせる。

 更に西、大陸方向から8機の編隊を組んで、高度約1500メートルで飛ぶ戦闘機が暗闇に見える。

 人民解放軍空軍のJ10とJ20 だ。

 台北の前に台中を攻撃する積もりだ。

 8機は台湾に近づき高度を下げる。

 攻撃体制に入った時に台湾(中華民国)軍の戦闘機、フランス・ダッソー社のミラージュ2000、5機が襲いかかる。

 ミラージュから発射されたMicaミサイルがJ10目掛けて赤い炎を吐きながら飛ぶ。狙いをつけられたJ10は急上昇してミサイルを振りきろうとするが高速で追尾するミサイルからは逃れられなかった。

 J10は翼を破壊されて堕ちて行く。

 中国空軍の残り7機は散開してミラージュと入り乱れる。

 俺は高度を上げて空中戦を見下ろす。

 中国軍のJ20から発射されたアクティブレーダーミサイルPL-5Aがミラージュを追っている。

 光の玉でミサイルと、発射したJ20を破壊する。

 残り6機のJ10とJ20も次々に光の玉の餌食にする。

 その直後、航空自衛隊のF35とF15の12機が付近を通り過ぎる。

 いいタイミングだ。自衛隊機が中国機を撃墜したように思うだろう。


 自衛隊機は台北方面へと飛んで行くので、俺も後を追う。

 自衛隊機12機を上から見下ろして飛ぶ。

 台北市の大陸側の沖合い上空で空中戦が始まっている。中国軍と台湾・自衛隊の同盟軍だ。


 中国空軍のJ10とJ20を、遥か上空から光の玉で破壊した時に西の方から大型機5機が10数機のJ10に守られて飛んでくるのが俺の目に見える。

 大型機はH6爆撃機だった。


 田村が言っていた様にクラスターを使うとしたら大事だ。

 

 高度3000メートルで飛来する爆撃機編隊の上に位置を取る。

 H6爆撃機へ次々と大きな光の玉を撃ち込む。空中で大爆発したH6に巻き込まれて護衛機の数機が落下していく。


 更に中国軍機を何機か撃墜した時に高速で近づく物を低空に感じる。

 急いで高度を下げて西に意識を集中する。

 超低空の海面上約20メートルを飛んでくるミサイルが4基見える。

 3基を光の玉で破壊して、残りの1基を念力で発射地点に戻す。

 西へと戻って行くミサイルを高度を上げて見送る。

 数分後、大陸の一ヵ所から炎と煙が上がった。


 空中戦は終わっていた。 

 腕のオメガを見ると午前2時を過ぎていた。


 

 台北と台中の真ん中辺りの新竹市(しんちくし)へと向かって高度を下げる。

 下にセブンイレブンの明かりが見えた。


 店内に入ると、店員が店を閉めようとして慌ただしく動いていたが、コーラと肉まんを3個買う。クレジットカードが使えて良かった。


 上空から見えた漁港へと向かって肉まんを食べながら歩く。

 時たま空を見ながら20分程歩くと漁港に出た。

 埠頭の先端に座って西の空を眺める。朝まで攻撃は無いように感じる。


 ポケットの衛星携帯が呼んでいる。

 二階堂の大きな声が響く。

「今、何処ですか?何してますか?」

「今ね、漁港で肉まんを食べ終わったところだ」

「漁港って何処ですか?」

「台湾のセブンイレブンで新竹店って書いてあったから新竹って所だな」

「新竹漁港ですか・・・見つかりました。台北と台中の中間点ですね」

「そうだな。ここで朝まで様子を見るよ」

「分かりました」

「こっちの被害は?」

「自衛隊機が1機やられましたが、乗員は台湾で救助されています。台湾軍では4機がやられています。ミサイル4基は中本さんですか?」

「海面スレスレを飛んで来たよ。間に合って良かった」

「分かりました。動きが有ったら連絡します」


 電話を切ると同時に右肩に衝撃が来る。右方向を見ると、闇に紛れて4人の影が動く。

 小さな炎が光った。銃のマズルフラッシュだ。銃声が響く。

 肩と脇腹に衝撃。

 光の玉で3人を倒す。1番小さい影を念力で止める。

 近づいて銃を取り上げ、街灯の下まで引きずっていく。

 人民解放軍の特殊部隊だろう。

 顔を見ると女だった。

 女が持っていたロープで脚と腕を縛り上げ、念力を解いた。身体をよじって、芋虫の様に逃げようとするが背中を踏みつけて簡単な英語で聞く。

「ハウ メニィ チャイニーズ ソルジャー ケイム ヒア?」

 女は俺を見て不敵な笑いと共に言う。

「ア ロット」

「沢山来てるのか。厄介だな」

 女の顎を掴んで顔を俺に向ける。

 美人だ。気晴らしになるか。

 女が持っていたナイフを使って、真っ黒な戦闘服を切り裂いて全裸にする。

 暴れるので軽く腹を殴ると丸くなって動きが止まる。

 そのままうつ伏せにさせて後ろから。コンクリートの地面が膝に痛いが気にしない。


 俺達以外に誰もいない防波堤で、海に向かって波の音を聞きながら女の尻を抱える。

 見下ろすと、女の白い尻の形が何とも言えずいい。

 ピークに達すると同時に爆発音が聞こえた。

 振り返ると右手に炎が上がっている。

 女から身体を離して、彼らが持っていた武器を全部海に放り込んでその場を離れる。

 女は自分でどうにかするだろう。



 



 

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