第187話ドラッグ・韓国・侵攻

 イチの彼女、アイリンの家。

 外に売人の車。

 壁の隙間から覗くと、黒のトヨタ・フォーチュンが止まっている。

 アイリンの父親を見ると小さく頷く。


 車から2人の男が降りてくる。

 1人は大柄のフィリピン人だが、もう1人は東洋人だ。多分韓国人。


 周りを見回しながら2人は家に近づきドアを開けて入って来た。

 フィリピン人がアイリンの父親に何か言う。俺の方を見て言い合いをしている。

 黙って見ているのも面倒になったので、入って来た2人の腹を軽く殴って座らせる。


 英語で聞くと1人は韓国人だった。

 韓国人の男が言う。

「売った物の代金を取りに来ただけだ」

「何を売ったんだ。そのバックには何が入ってる」

 韓国人が持っていた、小さなバックを取り上げようとすると抵抗する。

 フィリピン人がナイフを出して俺に襲いかかって来た。

 顔に軽く右拳を当てる。軽くの積もりだったがカウンターパンチになってしまい、拳が鼻にめり込んだ。男は前歯を飛び散らしながら後ろに倒れた。

 韓国人の方を見ると、いつの間にか銃を俺に向けている。

 45口径の銃口に小指を突っ込んで言ってやる。

「撃ってみろ」

 男は引き金を引いた。銃身が炸裂して、銃は後ろに転がった。

 男に言う。

「バックを寄越せ」

「セブの韓国人に盾ついて、生きていけると思ってるのか?」

 顔を軽く殴ると気を失う。

 バックの中には小分けにされた覚醒剤のパケが多数と3万ペソ程の現金。

 

 格闘技の弟子になっていた警察官に電話する。

 15分ほどで2人の警察官が来た。

 事情を説明し、覚醒剤と1人の遺体を引き取らせた。

 

 気を失っている韓国人を起こす。

 彼らが乗ってきた車を運転させてセブシティの韓国人の事務所に向かわせる。

 1人の若い警察官が、一緒に連れていってくれと頼むので乗せてきた。


 午後5時。セブシティ・ダウンタウンの韓国人事務所に来ていた。

 中には14人の韓国人と5人のフィリピン人が倒れている。何発かを撃たれたが、全員を倒すのに5分と掛からなかった。

 5人が銃を握ったままで倒れている。


 開けさせていた金庫から、現金約300万ペソを手近なバックに入れた。他には覚醒剤の包みが見える。


 車で待たせていた、バランバンから一緒に来た警察官を呼ぶ。

 彼は銃を構えて事務所に入って来たが、中の状況を見て唖然とし、俺に言う。

「中本さんが全部やったんですか?銃声がしたけど」

「連中が撃って来たんだよ。正当防衛だろ」

 警察官は連中の生死を確かめて言う。

「全員死んでます」

「金庫の中を見てみろ。凄い量の薬だ。あの薬で沢山の人の身体を痛め付けたんだから、その罪は死に値するよ」

「そうですね」

「俺が出ると面倒な事になるから、お前がやった事にするか」

「いいんですか?俺、ヒーローになっちゃいますよ」

 若い警察官は張り切って動き出す。


 俺はバランバンに向けて飛んだ。



 夜のニュースでは、バランバンの勇敢な警察官によって、セブシティの韓国人ドラッグディーラーの組織がひとつ、壊滅したと報じられていた。

 

 ベッドに寝転んで一緒にテレビを見ていたイザベルが聞く。

「何人いたの?」

「20人位だったかな。フィリピン人も何人かいたよ。あっ、そうだ」

 奪って来たバックをベッドの下から引きずり出す。

「ここに300万ペソ位入ってるよ。連中がくれた」

 イザベルが笑う。

「くれたの・・・じゃあ貰っておきましょう」



11月14日木曜日

 バランバンでの平和な時間が過ぎていた。アイリンの父親は、ウチのオヤジと一緒に漁に出るようになっていた。

 日に焼けた肌と前歯が無いのが共通点だ。


ジュンの妹のマリアは、学校が終った後で俺の家の手伝いで働く様になった。

 家の中が明るくなり、働き手の女性を2人も失っていたので助かる。


 午後2時。財団事務所近くの港で、防波堤に座ってビールを飲んでいた俺にリンが言う。

「電話鳴ってるよ」

 俺の携帯電話が鳴っていた。

 二階堂だ。電話に出るなり言う。

「北が動き出しました!」


 事務所に戻りイザベルに日本に戻る事を告げる。

 イザベルが言う。

「今度は何なの?」

「北朝鮮なんだよ」

「そう。お腹空かせないようにね」

 流石、俺の妻。細かい事は聞かない。家に戻り、支度をして日本に向けて飛び立った。


 午後4時過ぎ。東京・松涛の自宅に戻り、二階堂と市ヶ谷の防衛省へ向かう。二階堂が運転するメルセデスE250の中で簡単な説明を受ける。


 今回の報酬は100億円と言う事だ。


 午後5時。市ヶ谷に着き、俺達は自衛隊の指揮命令中枢の中央指揮所が設けられている庁舎A棟に入った。


 中央指揮所には陸・海・空の3幕僚長が朝鮮半島の地図が置かれたテーブルを囲んでいた。


 海上自衛隊幕僚長の河野が俺に説明する。

 

 朝鮮人民軍は日本時間午後2時半に軍事境界線の板門店を突破し、午後4時にはソウルに到達し、今現在はソウル市内で韓国軍と市街戦の模様。

 中国人民軍の直接の従軍は今のところ認められない。


 安倍総理とのテレビ電話が繋げられた。

 総理が言う。

「中本さん。始まりましたね。幕僚長達とは打ち合わせ済みです。宇宙人が全てを片付けるのでは無く、自衛隊にも出て貰います」

 俺が言う。

「日本の自衛隊が、機能を失った韓国を北から取り戻すと言うことですね?」


 北朝鮮人民軍が首都ソウルを破壊するのを待つ。

 米軍も全く動かない。元より韓国内の米軍基地からはアメリカは完全に引き上げていた。

 トランプ大統領にも、日本が韓国を統治する事には賛成させていた。

 

 

 

 

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