第45話 パレスホテル東京

5月21日

ゆうべは『なだ万』の食事の後、アンが今日はシャンパンは注文しないでと言った。

自分の店がオープンしてからがいいと。

しかし、これも記念だと言い『ベルエポック・ピンク』を注文した。

薄いピンクがかった液体が、専用の花柄のグラスに注がれる。

シャンパンが空になるとすぐに店を出た。アンの他の客が来たと言う事もあるが、娘達に早く帰れと言っていたのを思い出したからだ。

会計は25万円。


銀座から午後9時半に部屋に帰ると、娘達は好き勝手な所に寝転がりスマホをいじっていた。綾香が顔を上げて『おかえり』と言う。他の娘もそれに従った。

夕食は、さえ子がお好み焼きを作ったようだ。俺の分がラップを掛けてテーブルに載っている。 綾香が、それを電子レンジに入れて温め、テーブルについている俺の前に置く。

「ブタ玉・・・美味しいよ」

腹は減ってなかったが、なかなかの味だった。

何かおかしい。静かだった。みんな元気がない。



翌朝、ゆうべの事を思い出しながらテレビを見ていた。


竹島から日本の国旗が無くなっていたと大騒ぎだ。韓国がやっていたように兵士を駐留させないと無理だ。


朝10時になり綾香が起きてくる。ソファーの俺の隣りに来て、当たり前にキスをする。

続いてマキが起きてくる。相変わらず寝起きのマキは子供だ。背も低く痩せっぽちの美人だ。俺のところに来てキスする。俺の首に抱き着くが、綾香に俺から引き離される。

2人は床に転がってじゃれあっている。今日は子犬の様だ。


15分ほどして、さえ子とゆうかが出てきた。

静かに『おはよー』といい朝食の準備を始める。

トースト、目玉焼き、インスタントのカップスープ。俺にはコーヒーで彼女らはオレンジジュース。

食べ始めたときに、さえ子が口を開いた。

「オジサン。私達、家に帰ろうと思うの」

黙って聞く。

「お母さんの男が出て行ったんだって。それでお母さん一人なんだって。ゆうべ、電話掛かってきて、ゴメンネ、ゴメンネって何回も言われて」

ゆうかが泣いている。

「おい、ゆうか。泣くことないだろう。お母さんが帰って来てくれって言うんだろ。帰ってやれよ。女一人でお前たちを育てるのは大変だったんだろ。一緒に居てくれる男が欲しかったんだよ。ちょっとした迷いで、男を優先しちゃったんだよ。今は前よりも強いお母さんになってると思うぞ・・・・支えてやれ、お母さんを」

さえ子も泣きながら頷いた。ゆうかを抱きしめる。

綾香とマキも泣いている。この二人には両親が居ない。綾香はエルニドで、マキは交通事故で両親を失っている。


電話・・・二階堂。

なるべく早く会いたいと言う。

午後8時 大手町、パレスホテル東京。



AMGを駐車場に入れる。指定の部屋へ。

ノックする。女性の返事がありドアが開く。中に招き入れられる。

キングサイズのベットと簡単な応接セット。窓の外には皇居が見える。

女性を改めて見る。20代半ば。165cm。黒のセミロングの髪の毛。

黒のパンツスーツには隙が無い。冷たい感じの日本美人。

応接セットの椅子に座った。彼女は立ったまま

「今回は私が担当になります。水野ユリです」

二階堂は来ないと言う事か。

でも、美人の担当も悪くない。007にだって毎回美人のボンドガールが出てくる。

「よろしく」

「中本さんの事は二階堂から聞いています。簡潔に内容をお話しします」

黙って頷く。何も言わない方が『切れ者』に見えるかと思ったのだ。

「19日、一昨日の夜から、韓国内に潜伏しているウチのエージェントが次々と消されています。日本人、韓国人を問わずです。昨日からは日本国内で韓国政府や企業に関わっているエージェントに手が伸びてきています。今日だけで2人が消されました。韓国からの工作員が今日も5人は日本に入国していると考えています。日本国内での彼らの始末をお願いします」

スパイ映画だ・・・水野ユリが続ける。

「分かっている敵は限られていますが、接触すれば見分けられます。あとは中本さんの力で」

「報酬は?」

「ターゲット1人に付き1000万円です。中本さんには魅力ない金額なのは分かっていますが、力を貸して下さい。任務完了まで私が部下としてベストを尽くします」

と、言う事は彼女とずっと一緒? ・・・

「日本の為ですね。今回の韓国との事は、俺もとっくに関わってるんでね・・・断れないな。俺の事はトオル。君の事はユリでいいかな?」

最後のセリフはユリの手を取って言った。

「はい。嬉しいです。トオルさんに引き受けて貰ったら成功と同じだって二階堂から・・・」

ユリを引き寄せて唇を重ねた。

「俺も全力を尽くすよ。性交を・・・・サクセスの方の成功ね。それを目指して」

上着を脱がせる。シャツを胸が押し上げている。

シャツを脱がせる・・・ボタンが面倒くさい。

スラックスを脱がせる。靴も・・・・下着だけになる。

ブラは薄いピンクでパンティと同色。シンプルなデザインだ。Dカップ・・・

俺もボクサーパンツだけになる。

向き合いブラを外す・・・ホックが見つからない。ユリが外してくれた。

ホックは横についていた。

見事な形と張り具合だ。理想的な形。

立ったままで抱き合い横の鏡を見た。

とっても間抜けな俺の姿。黒のソックスを履いたままだ。

慌ててソックスに手を伸ばしてバランスを崩し、ユリに抱き着きベットに倒れこむ。


1時間後、俺たちは裸のままで抱き合い、窓から皇居を見ていた。


腹が減り、ルームサービスで何か取り、もう一回戦と思っていたが、ユリはどこかに食べに行きたいと言う。


駐車場まで降りるエレベーターに途中から男が2人乗ってきた。いきなりユリにナイフで襲い掛かるが、ユリの蹴りが男の股間へ。

もう一人の男は俺の腹にパンチ。蹲るおれにナイフを刺そうとしたところを、ユリが男の

後ろから又、股間蹴り。ユリに助けられた形だ。

エレベーターのドアが開く。

遠くで叫び声・・・仲間か。

銃声が2回。ユリを見る。手にCIA の連中と同じグロック17。

エレベーター内の足元で男達が絶命している。


車に向かって走る。







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