第12話 銀座

誰かが俺を呼んでいる。

しつこく呼んでいる。

目を開けると少女がベッドサイドで腰に手をあてて俺を見下ろしている。

「もう10時だよ。起きなよ」

短パンとタンクトップだ。

タンクトップを押し上げている胸に乳首の突起が見える。

「ブラくらい着けろよ。乳首丸見えだぞ!」

「オジサンすけべだね」

はい、すけべです。筋金入りのすけべです。

「ばーか。ガキには興味ねーよ」

「わたしもジジイには興味ない!」

尻を振りながら俺の寝室から出ていった。


少女。綾香が俺の所に来て2日が過ぎていた。


腹が減った。

のそのそと起き上がり寝室のドアを開け、一歩踏み出した所で足に何かが絡まる。

そのままひっくり返った。

少女の為にリビングに、布団を敷いていたのを忘れていた。

もう一つの部屋は荷物部屋になっている。

少女を見ると床にころがって笑っている。

「自分が使った布団くらいたため!」

少女の笑いは止まらない。

「オジサンが強いなんて絶対信じられない」

さらに笑い続ける。


少女と買い物に行く。

車に乗せた彼女が一言

「ベンツってオジサンって感じだね。ヨンクの方がいいのに」

これもヨンクなんだけど、面倒だから言わせておこう。


彼女の為のベッド一式。身の回りの必要な物を買った。配達は明日になるという家具屋のおやじに1万円札を握らせると、すぐに配達すると言った。1時間後を指定して、他の買い物を済ませて帰ると、家具屋のトラックが待っていた。

物置になっていた部屋が少女の寝室になった。


今日は80万円の出費。

まあ、毎晩飲みに行ってる事を考えれば安いか。


今の時点での残金は41200万円。


夜になり、外出すると言うと少女も付いて来るという。

一度連れていけば満足するだろう。飲み屋など退屈だろうから。


行きつけの店。

銀座8丁目、ポルシェビル。


店に入るとボーイが直ぐに反応する

「中本様、いらっしゃいませ」

ボックス席に案内される。

ママの京子が挨拶にくる。

続いて俺の係りの杏(アン)が俺の左隣に座る。

少女は俺の右隣に座っている。

正面にママ。

「中本さん、今日は若い子と一緒ですのね」

「姪っ子でね。綾香って言うんだけど、暫く家で預かる事になったもんだから」

俺の係りのアンが綾香の顔を覗きこむ

「おいくつ?」

綾香が背筋を伸ばして答える

「18歳です」

言い聞かせてあった通りの答え。


しばらく、ママ、アン、俺の3人で雑談が続いた。

アンの手が俺の膝に置かれる。

綾香が唐突に俺に聞く

「アンさんはオジサンの彼女なの?」

絶句

アンが答える

「中本さんは、私の大事なお客様ですよ」

胸を撫で下ろす。

アンとは2週間前から深い仲になっていた。

金が無ければ出会うこともなかっただろうが。

「ふーん。トイレどこですか?」

綾香がトイレに立った。


後ろ姿はなかなかだ。

大人っぽい服を欲しいというので、今日、薄紫のミニのタイトスカートとジャケットを買ってやった。ヒールは8センチ。

身長160cmの綾香とヒールで、俺の背丈と殆ど変わらない。

誰が見ても15歳には見えない。


ママが席を移動し、アンと後から来たヘルプの女の子で盛り上がっていた。

クリュグのシャンパンが開けられている。


綾香を連れて来ているのを忘れていた。俺はトイレに行くと言って立ち上がり、他のボックス席を探りながら歩くと聞き覚えのある声が耳に届く。

「ヤッダー、このオジサン変態!」

声のするボックスを覗くと綾香が中年男のハゲ上がった頭をビシビシと叩いている。

脇の下を汗が流れる

「コラッ、何してる」

綾香が振り向く。

「このオジサン60歳なのにハタチの彼女がいるんだって!」

男も慌てる。

俺はもっと、慌てる。

銀座のクラブに通ってる人種は注意が必要なのだ。

「うちの姪っ子が失礼しました」

「あなたの姪子さんですか。いやぁ、面白い子ですね。店の子かと思って、こちらこそ失礼しました」

綾香が、喋りだす

「このオジサン、ガイムさん」

はっ?


同席を勧められ、話しているうちに、その人が外務省のお役人で、もう一人の連れが自衛隊の幹部であることが分かった。

自分はフリーランスのジャーナリストだと名乗った。


二人とも完全なタカ派で、韓国に対して危機感以上の物を持っている。


韓国のムン・ジェィン大統領が2012年のイ・ミョンバク大統領のように、竹島上陸を計画しているらしい。


3時間以上を彼らと話していただろうか。もし、戦力を使っても竹島問題を阻止したいなら、ここにメールしてくれと言って、Eメールアドレスを書いたメモを渡した。

世界最高の傭兵部隊の日本での連絡先だと付け加えた。


深夜12時で閉店の時間になり彼等は帰って行った。

勘定を頼むと、彼らが既に払ってくれていた。

綾香は店の入り口近くにあるカウンターでケーキを頬張っている。







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