欲望まみれの還暦スーパーマン

北条誠

第1話フィリピン エルニドへ

2019年3月

久々のフィリピンだ。今回はエルニドを目指している。成田からマニラ乗り継ぎでパワラン島の玄関口であるプエルトプリンセサ空港に到着したのは午後7時半だった。


 空港ターミナルを出ると、プエルトプリンセサにフィリピン人の奥さんと暮らしている川岸さんが手を振っている。

 彼の車に乗りホテルまで送ってもらう。チェックインを済まし部屋に荷物を置き、ロビーで待っている川岸さんと再度合流した。


 彼とは8年前に初めてパワランに来てからの付き合いだ。

 レストランで隣のテーブルに座っていた川岸さんのフィリピン人の奥さんが「日本人ですよね」と話しかけてくれたのがきっかけだった。

 ちなみに奥さんは日本語がペラペラだが川岸さんは日本語専門だ。他のフィリピン人にも堂々と日本語で話しかける姿が楽しい。


 初めて出会ったレストランで、男二人で再会を祝った。川岸さんは今年で72歳。私は8月で60歳を迎える。還暦だ。


 2時間程をレストランで過ごし、KTV (フィリピンパブ)に移動した。


 店内には女の子が10人程居るが、客である私たちが入ってきてもチラリと見るだけで、自分の客でないと分かるとすぐに視線を携帯に戻す。

首都であるマニラの夜ではあり得ないことだが、ここプエルトプリンセサで腹を立てても仕方ない。


 川岸さんは馴染みの女の子を隣に座らせてご機嫌だ。

私も一人を選び隣に座らせた。

ビールが運ばれて乾杯し自己紹介が始まる。


女: アンジェラ、21歳、マニラからの出稼ぎ。2歳の子持ち。マニラで知り合いに会うと困るので出稼ぎだ。


ブロークンだが、この程度の会話は英語で出来る子で助かった。

スペイン系の血が混ざっているのだろう。顔は俺好みだ。スタイルはいいが腹回りが少し弛んでいる。


 俺: 中本透(とおる)59歳、旅行者。無職。身長170cm 体重58kg。英語は日常会話には不自由しない程度。先月まで小さな商社に勤めていたが倒産。バツイチ。子供は男の子一人で既に社会人。息子は12歳の時に家を出ていったオヤジを嫌っている。大学卒業までの養育費は支払い済み。


一通りの会話が終わるとアンジェラが身体を寄せてくる。

「私のこと連れて出る?」

連れ出し可能な店なのだ

あんまり押してくると覚めてしまう。

「俺のホテル来る?」

一瞬の間。

「いいよ」


川岸さんが送ってくれると言ったが、彼は彼なりにお楽しみだったので、店の前で客待ちしているトライシクル(バイクの横に客が4人ほど乗れるサイドカーを付けたもの)でアンジェラと俺はホテルに帰った。




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