第72話 ゾンビ

 生きる屍、もう言葉が矛盾している。

 動く死体のほうが、しっくりくるのだが、最近のゾンビは食欲だけで動くのではない、意思があったりするから生きているのかもしれない。


 昔のただ食欲で襲ってくる死体は『動く死体』

 意思をもって行動するのが『生きる屍』

 区別が必要になったと感じる。


 総称して『ゾンビ』でもいいのだが、『ゾンビ』というのは呪術の結果であり、正確には死体のようになった生者である。

 基本的に死んだ生き物は生き返らないのだ。

 そう見せているだけで…

『ゾンビパウダー』という『ゾンビ』精製の秘薬がある。

 これは意識障害を引き起こし仮死状態に陥らせるのだそうだ。

 土葬された生者を掘り返して社会に戻した状態が『ゾンビ』ということだ。

 後遺症として意識障害、記憶障害を引き起こすらしい。


 呪いとも罰(刑)とも云われる『ゾンビ』であるが、まぁ人を襲う姿は、どちらかというと狂犬病患者のイメージが投影されている。

『吸血鬼』の回でも、そんなことを書いたのだが、アンデッドのイメージは狂犬病患者の行動が反映されているわけだ。


 子供の頃に『ゾンビ』は僕の恐怖を掻き立ててくれたわけだが…

 ある時に気付いたのだ。

「日本は基本、火葬じゃないか!!」

 そう、火葬文化の国においてアンデッドの発生率は極めて低いのだと…。


 日本人で良かったよ。

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