第66話 白いワニ

 地下下水道に生息していたという巨大な白いワニの伝説。

 確かにワニが射殺されたという事実はあったらしい。


 アルビノ種のワニではなかったようだが…


 なぜ白いワニなのか?


 地下下水道という環境に適応し巨大化した爬虫類。

 基本、爬虫類は死ぬまで大きくなるそうで…要するにワニにとって、生活排水の中を泳ぎ下水道という環境の頂点に君臨したモンスター。


 光の差さない空間で体色は白くなり、ゴキブリを喰い…ネズミを喰い…猫を喰い…犬を食う…成長に合わせ捕食の対象を変えてきた。


 巨大化したワニは最後に何を喰らったか?

 そう人間だ。


 この都市伝説の本当に怖い部分は…ソコにある。

 地下下水道に住まう人間がいたということだ。


 遺棄された死体を喰らったかもしれない。


 アンダーグラウンドに何を捨てても処理してくれる。


 地下下水道のワニ、この話が都市伝説になったのは、そういう人間社会の闇を投影させたからだと思う。

 ちかに封じ込めた不都合なナニカが日の元に晒された姿こそ射殺されたワニだった…それだけのこと。

 射殺されたワニは人の不都合を、いくつ喰らったのだろうか?

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