第4刻:福澤%《フクザワパーセント》の悪友なり
【前回のあらすじ】
俺こと
そして、昼休み。いきなり合コンは今日となる。
【あらすじ終わり】
今は
「んで? そんな訳で合コン行くことになった訳か」
「そういうこと。で、
「…………いいぜ。何か面白そうだしな。今日は部活サボるわ」
「……………」
「お前を合コン中にからかってやるぜ」
「いや、それこそ止めろ」
悪い方向に息巻く悪友に釘を刺す。
近くの空いてる席を借りて、悪友の
荒木やその他の悪友も同席するはずなのだが、今いない奴らは全員購買組である。
学食もあるが、基本は友達と駄弁るために、利用しない生徒が多い。
取り敢えず、
メガネをかけるオタクで、喋る度に毒舌が出てくる奴だ。読書して過ごすことがよくある。スタンス的には刺激を求めるタイプで荒木のようなムードメーカー気質である。だが時々、グロテスク系列のとんでもない話題を振ることもある。
銃器系統の知識も兼ね備えていて、水戸の話題についてこれるのは荒木くらいだったりする。交遊関係は荒木の次に広いと見ていい。
そんなこいつと仲良くなった経緯はラノベで意気投合したことがあるから。
「水戸~、紅智~、今戻ったぞ~」
教室に入っては声をあげるのは荒木だ。
というか、このクラスだと大抵、荒木だ。
「
「まさか俳句で荒木の印象を的確に述べるとは………。季語がないのはこの際だが、荒木がしかめっ面をしてる。フォローはしろよ」
まぁ、戻ってきた購買組悪友は荒木だけじゃない。
仏頂面で喋りかけてくるのは
目にかかるほどの黒ストレートで、年がら年中、死んだような目付きをしている。
その実態はIQ170くらいの天才で、勉強の成績は学年トップ。特に理科に関しては小学校からずっと毎回満点を取るほどで。
運動神経だって、抜群だ。というか毎回、全教科の通知表がオール5で綾黒を凌ぐほどの秀才。
ただし、3大イケメンの中では最も寡黙なので取っ付きづらく、人気も3大イケメンの中ではビリ。それでも女子からの校内人気は3位なあたり、現実世界におけるチートだが。
こいつも俺の悪友の一人で、実は一番気に入っている奴だったりする。
こいつは本音を行動で示すタイプだから。
決して優しい訳ではないが、誠意があるし、
信念(怠慢はせず、努力を惜しまない)、
理想(将来は科学者志望)、
意思(自分だけでなく、誰かのためにも)、
などを体現するための努力をかかさない。
俺が唯一100%信頼がおける人でもある。
何はともあれ、昼休みはこの4人で日常的に過ごしている。
「そういやさ、
いつも弁当タイムは荒木の何気ない一言で始まるのが俺たちの相場である。
荒木の言ったように、少し離れた席で一人で弁当を広げている福澤がビクリとしている。
「そういやぁ、そうだな。ぼっち過ぎてワロタwww」
「やめておけ。自分から一人になっている事情があるのかもしれないだろう。迂闊なことは滑らせるな」
「……………」
二人の言動が気に入らなかったらしい瑛翔は便乗する水戸と発信源の荒木を黙らせるほどの正論を吐いた。
交遊関係において、
俺も荒木や水戸のさっきの言い方は腹が煮えくり返るほどに苛立ったので、黙らせられたのは心地いい。
けど、今回は瑛翔に賛成する訳にもいかない。だって、福澤はあまり笑ってないから。
これでも俺は、周囲をよく見る気質だ。だからと言っていざという時に勇気も出せないのだが。
中途半端な野郎で、いつもそんな自分に失望するけど。
「
荒木が考え込む表情でいきなり立ち上がった俺に疑問を抱いた。
俺はそれに返答せず、福澤のところへ歩いていく。荒木も水戸も瑛翔でさえ、俺の奇行に驚いた。
「なぁ、福澤」
「…………………………………………何?」
こういう奴は不安がりやすいし、遠慮だってしやすい。だから強引に。でも不安がらせないように。
「お前もこっちで弁当食おうぜ」
「…………」
俺が優しい眼差しでニカッと口角を吊り上げて、親指で瑛翔達を指し示すと、福澤は一瞬悩んだ末、頷いて、こっちに椅子ごと移動してくれる。
『………………』
三人とも、意外そうな顔してるな。そりゃ、そうか。
今までの俺ならこんなことできなかった。勇気が出なかった。だけど、独りの奴を悪く言われて腹が煮えくり返るほどに苛立ったのに、どうにかしたいと思ったのに、その俺が勇気を出せなくてどうする。
だから、俺は誇らしげにドヤ顔をしてやった。
***
福澤のフルネームは
こちらもメガネを着用するオタクで、ラノベの読書を嗜んでいるらしい。水戸と趣味が合っているので、コミュニケーションは問題なさそうだ。
その証拠に、俺たちの輪の中でも埋もれたりせずに交遊関係を築いてゆく。場さえ整ってしまえば自分から攻めてゆける。なんとも恐ろしいことか。
何より驚いたのは、福澤が売れっ子小説家の背景をもっていることだ。普段、誰彼構わず信頼しない俺が信じたのには、荒木が福澤のスマホを漁ったことにより、知り得た情報で、裏付けがされていたから。
身元を隠していたためにそりゃあ分からんわとなるが、それでも驚くには充分すぎる。
その小説は『
第1巻の発売日に突如、各地で大反響が起き、重版発行もされていて、合計5巻までしか発売していない現状ですら累計100万部を突破している期待の超新星異世界ファンタジーである。今年の10月からはアニメ放送もされると大々的にCMで告知されていた。
俺も水戸もイチオシのラノベで、まさかその作者に出会えるとはまさに奇跡のレベルであった。
サイン? そんなものもしもの時のために色紙とペンのセットで用意してあるわ。
そんなこんなで昼休みは無駄に盛り上がった。楽しい時間が半分ほど過ぎた頃、荒木がそれの話題を振ってくる。
「福澤、お前も今日の放課後の合コン来るか?」
「………合コン!?」
福澤は驚いたように声をあげた。
そりゃ、そうなるわ。
「でも、俺なんかが合コンに行ってもテンション下がるだけだし……………」
福澤は
「よし、決まり! 福澤も合コンな」
「んな無理やり決められても………」
「そうだぞ。無理に参加させるのもよくない。満更でもないようには見えたが希望的観測で物事を押し通したりするのはもっての他だ」
「瑛翔の言ってることは相変わらず難しすぎて訳分からんとして、どうしたよ、紅智。お前、いつもはこんな強引な奴じゃなかったよな?」
ん~、こいつらの言ってることは全部正論なんだがなぁ、俺にだってこいつらに正論を突きつけられる。
「福澤は拒否してないし、だとすれば希望的観測でも問題ないんじゃない?」
「だが、拒否もしてないとはいえ肯定もしていないんだぞ」
「………どっちも一理がありすぎる」
福澤を取り巻く(主に俺と瑛翔の)口論が発生する。荒木はどちらに着くのかおろおろ迷ってるし、水戸に至っては事の
武器は早く作り終えていて、プラモの銃が大事そうに机の上に置かれている。それが地味に実弾のような迫力を放つほどに手を加えてあるプラモ銃ということは恐怖心を煽るからという訳ではない(ここ重要)が、敢えて放っておいて…………ってか、こいつどこからプラモ出しやがった。
ちなみに、こんなどうでもいいことを描写したのには理由がある。
次の瞬間、水戸はプラモ制作を中断して、唐突に福澤に問いかけたのだ。
「福澤は合コン、行きたいのか行きたくないのかどっちなんだ?」
「…………………」
『……………………』
口論していた俺たちも福澤も水戸の方を見て固まった。こいつにこんな言葉をかけることができるだなんて………。
呆然としていると、水戸は補足を加えた。
「俺らはお前に場を取り持ってほしいなんて要求してない。お前にいてほしいからってだけなん。そしたら後はお前の意志だろ?」
まともだ………。あの水戸がまともなことを言っている…………。
場の雰囲気に呑まれ、福澤を見る。
「…………自信はない。でも、それでもいいなら行くよ」
「よし、決まりだな」
水戸の上手いフォローと荒木の空気を読んだ締め括りにより、合コンメンバーは決まった。
俺と瑛翔は予鈴が鳴るまで呆然としていたのだった。
【現在の合コン行きメンバー】
男性陣
・
・
・
・
女性陣
・
・荒木の女友達その1
・荒木の女友達その2
・未定
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