事案発生?

「事案」



 レオの部屋で作戦会議中、リザが容赦なく言い放つ。


 アンも、仕方ないと思いつつ、うなずく。


「そりゃないですよ、リザさん! ボクだって真剣だったんですから!」


「いやいや、どう考えても事案発生っしょ。未成年にまで手を出すなんて。どこまでプレイボーイなんだか」

 あきれ顔になって、リザは手を扇のように振った。


「手なんか出してませんって!」

「出させてたでしょうが。オトコを知らないウブな女子に、後ろから抱きつかせるとか。生徒との間でやらせりゃよかったじゃん」

「適切な説明をするには、ボクが実戦するしかなかったんですって!」

「必死で弁解するあたり、余計に怪しいね」


 抗議も空しく、メルツィはリザの中で、幼児性愛者認定されてしまう。


「ウチの娘が言っていました。あれは教育というより甘言で釣っているようだったと。子どもにも容赦がないのね」

 腰に手を当てて、アンは有無を言わせず責め立てる。


 先日は、どう言い訳をしようか困り果てた。


「あの場をしのぐには、ああするのがベストでした。ボクには決して、あの年頃の女性をどうしようなんて考えは」


「当たり前です!」

 アンが、メルツィを叱り飛ばす。


「クロードとローザは、おとなしく先生の話を聞いていました。なので、あなたの奇行をあまり気には留めていませんでしたけど」


 彼を起用したのは間違いだったのでは、と今頃になって考えてしまう。


「イコさん、ボクは潔白ですから」


「その方にやましいことはないと、信じておる。信じるしかない」


 メルツィが胸をなで下ろした瞬間、


「だが、愛娘を傷物にするようなことがあれば、斬る」

 イコが刀に手を添えた。


「物騒なこと、言わないでくださいよ」

 これにはメルツィも、派手な行いはできまい。


「それより、レミ教授ッスよ。どうだったんスか?」

 ジャネットが話題の軌道修正をする。


「会えなかったんだ」

 メルツィが言うと、部屋じゅうに落胆の声が上がった。


「いや、実は自分の授業に必死で、他の先生にまで気が回らなくて」


 情報収集や戦闘面では役に立つメルツィも、勝手が違う相手だと勘が鈍るらしい。


「やっぱり私が直接出向いて」


「イヤイヤ、アン。騒ぎが大きくなるだけだって」

 アンの言葉を、リザが食い止めた。


 確かにそうだ。

 ヘタにアンが動いて、バロールに動向が知られたら、せっかくの計画が水の泡になってしまう。


 メルツィには、ちょっと抜けた教師を演じ続けてもらわないと。


「まじめにやってね、メルツィ」

「もちろん。次回はちゃんとやりますよ」

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