第38話 ダンジョンに沸くトキオ
三十八
「トキオまで送ってくれて、ホントにありがとです」
「どういたしまして! さて、セバス。オイラ達の
「かしこまりました、ジャン様」
北門にて入街手続きを終え、トキオへと入った所で馬車から降りました。
ジャン君にお礼を告げた所凄く嬉しそうにしてましたが、その後ジャン君は急に真面目な表情になると、セバスさんに宿の手配をお願いしました。どうやらトキオに泊まり、明日の朝一番でセダイへの帰路に着くみたいです。
まぁ、そうなりますよね、普通。
いくら馬車とは言え、夜の移動はとても危険です。比較的安全だと言われる街道でさえ、夜には危険に溢れると言います。
その危険の一つは、野盗です。
昼間も野盗に襲われたりしますが、やはり夜の方が圧倒的に襲われる確率が高いです。暗がりから襲えば、襲撃の成功率も上がりますし、何より襲われた方は対処しづらいです。人数も把握しづらいですし。
多数の冒険者を雇って護衛してもらっていた大商隊……キャラバンが、少数の野盗に壊滅させられたなんて事もあるみたいです。
つまり、夜の野盗はそれだけ危険だという事の証明ですね。
もう一つの危険は、やはり魔物です。
昼間に出没する魔物は比較的穏やかな魔物が多いですが、夜行性の魔物はとりわけ危険です。何故なら、高ランクの魔物に夜行性が多い事が挙げられます。
例えば、『
人狼の他にも危険な夜の魔物は居ます。それは、死霊系の魔物ですね。代表的なものに、『
屍鬼人に殺された人は言わずもがな、その仲間へと変貌してしまいます。魔物に殺されてしまったとしても、自らがその魔物の仲間になるのでは死んでも浮かばれないですよね。
まぁ、野盗にせよ魔物にせよ……夜の街の外は恐ろしいという事です。
あ、街や村、それに王都などの人が住む場所には結界が張られているので、その中に居れば安心出来ます。魔物の襲撃に限りますが。
でも、野盗などが昼間の内に街へと入り、そのまま夜まで潜伏していれば安心も出来ませんね。しかし、その為の入街手続きです。
トキオ南門の守衛長のカイトさんが有名らしいですが、手続きの際、多くの野盗を検挙してるみたいです。
さすがはカイトさん。伊達に守衛長はやってないですね!
「それじゃ、ユーリちゃん。オイラとはここまでだけど、もしもセダイに来て困った事があったら、その時はオイラを訪ねてね! きっとユーリちゃんの力になるからさ!」
「分かったです。もしもセダイに行く事があって、そして何かに困ったらジャン君を頼らせてもらうです」
「きっと、だよ? それじゃ! ……あ、スラさんも、それじゃあね!」
「ヌヴァー! ジャン様、お達者で」
「じゃ、セバス、行くよ!」
「かしこまりました。それではユーリ様にスラ様、わたくし共はこれにて失礼致します」
どこで宿を取ったのかは分からないですが、セバスさんが戻って来た所でジャン君達とは別れました。
セバスさんが御者台に乗り、ジャン君は再び馬車の中に乗り込んでます。トキオの大通りはとても広いので、そのまま馬車で宿まで向かうんでしょうね。
「さて。ボクも孤児院に帰りますかね。身体能力を試す為に精霊の森まで行ったですが、それよりもジャン君との事で精神的に疲れた気がするです。明日から授業がまた始まりますし、今日は早く寝るとするです」
トキオの北門付近から孤児院が在る東区まで、歩けば一時間は掛かります。現在の時刻は夜八時過ぎです。ゆっくり歩いてなんていられないですね!
大通りから外れて裏通りへと入り、人目が付かない時を見計らって建物の上へとジャンプしました。屋根の上ならば、ボクが軽く疾走しても人には見られないし、短い時間で孤児院まで帰れます。
「よっと、ほっ! 着いたです! ……窓から入るのは常識外れですね。ちゃんと玄関から入るです」
北門から孤児院まで建物の屋根伝いで五分。あっという間に到着です。思わず屋根から二階のボクの部屋へと入り掛けましたが、どこぞの猫型ロボットでもあるまいし、ちゃんと地面に降りて玄関から入りました。
寝る前に、お風呂と腹ごしらえですね。
ちなみにお昼は、トキオへの馬車に揺られながら済ましました。と言っても、ボクの【黒神】の中に入ってるのはオーガの不味いお肉なので、それは食べてないです。
ならばお昼はどうしたのかと言うと……ジャン君にご馳走になりました。……とは言え、お昼を用意してくれたのはセバスさんです。
ジャン君曰く、「食事も馬車をチャーターした料金に含まれてるから、セバスに任せればオッケーだよ!」との事で、セバスさんがマジックバッグから温かい食事を取り出し、ボク達に提供してくれました。
そこでボクはある事に注目しました。マジックバッグから温かい食事。そうです、マジックバッグに注目しました。
マジックバッグの中で鮮度や温度をそのままに保つという事は、その中では時が止まっているという事。つまり……セバスさんが持っていたマジックバッグは国宝クラスの物という事です……!
昨日のトキオ草原からの帰り、レイド先生が言ってました。中身の時が止まってるマジックバッグは国宝級だと。とんでもなくリッチな商会ですね、セバスさんが所属する馬車の運営商会は!
まぁ、それは良いとして、提供してくれた食事はトキオでは定番のオーク肉のシチューと、焼き立てのコッペパンでした。どちらも恐らくはセダイのお店で買った物だとは思うですが、マレさんの料理に匹敵する程美味しかったです。
匹敵するとは言っても、マレさんには敵わないですよ? ボクの胃袋はマレさんに掴まれてます!
そういう事で、食堂にマレさんの料理を食べに行きますか!
「あ、ユーリちゃん、どこに行ってたニャ! 今日はユーリちゃんとお買い物に行くつもりだったニャ。……寂しかったニャ……」
食堂にはミサトちゃんが一人で居ました。どうやらボクの帰りを待ってたみたいです。
しかし、ボクとお買い物に行くつもりだったとは。身体能力を早く試したくて、朝食を食べて直ぐに孤児院を出たのは失敗でしたね。
「ごめんです、ミサトちゃん。昨日ホーンラビットを狩れなかったから、一人で訓練してたです。……悔しくて」
「そ、そうだったのニャ!? あたしも誘ってくれれば一緒に訓練したのに。残念だニャ」
そう言えば、仲良くなって欲しいってミサトちゃんに言われてたです。人に見られたら面倒なので、今日はさすがに一緒には居られなかったですが、次からはミサトちゃんを誘うです。お買い物でも訓練でも、ミサトちゃんと一緒なら何でも楽しそうですね♪
「次からはミサトちゃんも誘うです! 一緒にお買い物、楽しみです♪」
「じゃあ、次の『闇の日』はあたしとお買い物だニャ♪」
「分かったです!」
あ、ミサトちゃんが言った闇の日っていうのは、かつての世界での曜日の事です。
簡単に説明すると、この世界では七日じゃなくて六日で一週間となります。週の初めが『光の日』で、週の終わりが『闇の日』です。つまり、雷と氷を除く魔法の属性が曜日となってますね。光、火、水、土、風、そして闇。光の日を週の初めと決めたのは、一週間が光に包まれた幸運であります様にとの願いが込められ、闇の日を週の終わりと決めたのは、夜の眠り……安心して眠れる様にという意味で休日にしたらしいです。
一週間が六日だと、一ヶ月は何日、一年間は何日あるのかって?
はい、答えます。
一年は360日であり、一ヶ月は30日。そして、12の月を数えて一年です。一月から十二月で一年というのは同じでも、かつての世界より日数が5日少ないです。ですが、どうやら時間のずれがこの世界では無いらしく、きっちり360日で過ぎるそうです。
そして一ヶ月は五週間です。日にちの計算がしやすいですよね!
この際だから、四季についても説明するです。
12月、1月、2月が冬で、3月、4月、5月が春です。つまり、三ヶ月毎に季節が移り変わって行きます。これは、かつての世界の日本の四季と似てますね。
ボクはこの世界で目覚めたばかりで、四季についても話に聞くだけでまだ経験出来てません。ですが、日本と同じ感じで季節が変わるのは慣れ親しんでるので嬉しく感じますね。
ちなみに、ボク達が冒険者学園へと入学したのは4月です。そして、クラス分け試験が行われたのは、4月の第一闇の日になります。日にちで言えば4月6日ですね。で、今日が4月12日の第二闇の日です。
という事は、ボクがこの世界で目覚めた日は『4月2日』という事ですね。
ボクがおっさんだった時の誕生日は1月31日でしたが、今のボクが女の子として目覚めたのは4月2日なので、いっその事、目覚めた日を誕生日にしちゃいますか。と言うか、その日を誕生日に決めました!
……ボクの誕生日はともかく、学園に入学する月も4月と、かつての日本と同じです。ホント、分かりやすくて良かったです。
「食べないの、ユーリちゃん? 早く食べないと冷めちゃうよ?」
「食べるです……!」
今夜のご飯は、カレーでした。
前回マレさんのカレーを食べてから三ヶ月。実際には数日ぶりなんですが、試練のダンジョンで三ヶ月を過ごしてたので、ボクとしては実に三ヶ月ぶりのカレーです。涙が出る程に美味しかったです。
「ミーナさんも今日はさすがに襲っては来ないですよね?」
「昨日あれだけやれば、今日は無理だと思うニャ」
涙のカレーを食べた後はお風呂です。昨日はミーナさんに襲われたのでドタバタした入浴でしたが、今日はミサトちゃんと二人きりでゆっくり入りたいと思うです。
……エッチな事はしないですよ?
ミサトちゃんから仲良くしてくれって言われてても、そういう事じゃなくて、友達としてって意味だと理解してるつもりです。胸からお腹、それにアソコからお尻以外全身モフモフのミサトちゃんの裸ですから、ボクとしてはドキドキしてしまうですが。
「スラさん、念の為にボクの姿になって脱衣場で待機してて欲しいです」
「ヌヴァー! 了解しました、主よ」
「ニャッ!? ユーリちゃんそっくりになったニャ!」
「実はスラさん、変身能力があったみたいです」
尻尾の毛がボフって膨らみ、目を丸くして驚くミサトちゃんが可愛いです。膨らんだ尻尾、握っても良いですかね? エッチな事はしないって言った手前、ボクはグッと堪えました。
ミサトちゃんと背中を流しあって湯船に浸かってたら、脱衣場から悲鳴が聞こえて来ました。「あひぃ〜♡」って声からすると、おそらくミーナさんがボクに化けたスラさんに抱き着き、その後変身を解いたスラさんのマッサージを受けたみたいです。スラさんのマッサージ、効きますよ? テクニシャンなので。
「しかしミーナはアホだニャ。ミーナはほっといて、さっさと部屋に戻って寝るニャ」
「はいです、ミサトちゃん。ミーナさんはホント、懲りないですねぇ。あ、スラさん、ご苦労さまです」
「ヌヴァー! これくらいは容易い事です。では私は主のソコへ」
「んぅ……♡」
スラさん、テクニシャンです……!
「……あたしもスラさんになりたいニャ……」
「ミサトちゃん、何か言ったです?」
「な、何でもないニャ! それよりも早く部屋に戻るニャ!」
何故か慌てるミサトちゃんを不思議に感じながらも部屋へと戻り、就寝しました。精神的に疲れていたので、眠りに落ちるまであっという間だったです。人間辞めても疲れるのは同じですね。
あ、ミサトちゃんは自分の部屋に戻ったですよ?
もしも一緒に寝たら、ボクの忍耐力が限界を迎えてしまうです。もちろん、エッチな忍耐力の方です。ミサトちゃんの全身をモフりながら肉球プニプニ。ミーナさんじゃないですが、ボクもあっという間に昇天しそうです。
☆☆☆
翌日からの学園の授業は、ハッキリ言って退屈でした。
光の日の魔法の授業から始まり、火の日の剣技、水の日の技能、土の日のサバイバル術と続き、風の日の課外授業で終わる。課外授業は全てのクラスで魔物との実戦が実施される様になったみたいですが、結局はホーンラビットやゴブリンとの戦闘なのでボクにはつまらないです。魔物が弱過ぎて。だから、みんなと同じ様に倒す事に苦労したです。
ちなみに、技能の授業での罠関連とサバイバル術の調理実習は、ボクにはやはり出来ませんでした。
初歩的な扉の罠も宝箱の罠も、原理も仕組みも理解してるのに解除出来ないし、調理実習は言わずもがな、相変わらず毒と言っても過言ではない物が出来上がったです。人間を辞めたと言っても、苦手なものは苦手なままです。
なので、それらについては諦めました。
冒険者の資格を取得して活動を始めた時は、それらの苦手な分野についてはパーティメンバーに任せるつもりです。人間辞めたと言っても、ソロでは活動しませんよ? 寂しいので。寂しさのあまり、死んでしまう可能性も否定出来ない程です。……豆腐メンタルですから。
ともあれ、退屈な授業が再開してから三週間。トキオは突然の活気にあふれました。
「おい、マジかよ!? トキオ草原にダンジョンが見付かったって……!」
「どうやらマジみたいだぞ? マキトさんが調査に赴き、それで確認したらしい」
「俺らトキオの冒険者も、遂にバブルの到来か!」
「あたしも行ってみるかね、ダンジョン!」
街ゆく冒険者達は、
まさか、こんなにも盛り上がるなんて。レイド先生が言ってた通りです。ボクもダンジョンの事を報告した甲斐があるってもんですね。
「あたしの言った通りになったニャ」
「ハポネ王国の経済が活性化するってミサトちゃんが言ってた事はホントだったんですねぇ」
「信用してなかったのかニャ!? 心外だニャ!」
「ごめんです、ミサトちゃん! 謝るから、肉球プニプニさせて欲しいです♡」
「何でそうなるニャ!? ……ちょっとだけニャ。……ニャふぅ……♡」
ギルドから、トキオ草原の巣穴の奥がダンジョンとして認定されてからおよそ一ヶ月。ボクがクラウスさんにダンジョン発見を報告してから二ヶ月が経ちました。
この頃になると、トキオの街は冒険者で溢れ返っていました。ハポネ中の冒険者が挙ってトキオへとやって来るからです。全員が全員、ダンジョンで荒稼ぎしようって魂胆です。
実際の所、荒稼ぎに関しては間違っていません。ダンジョン認定された初期にダンジョンに潜った冒険者の何人かは、既に大金を稼ぎ出してるそうです。魔物の素材や、稀に現れる宝箱から手に入れた珍しいマジックアイテムなどが稼ぎの内訳ですね。
まぁとにかく。トキオの街は熱気に包まれました。
その熱気にあてられたのか、ミサトちゃんはボクに肉球をプニプニさせてくれる様になりました。その際のミサトちゃんの声が色っぽくて素敵です。肉球の感触と相まって、ボクも昇天しそうになります。
「ニャ〜♡ こ、これ以上はダメニャ!」
「はふぅ……♡ ご馳走様でした♡」
昇天しそうになりながらも肉球を堪能し、トキオの商店街へとお出掛けです。今日は闇の日なので、学園はお休みなのです。
ちなみに今日の目当ては服飾店が在る西区じゃなくて、武器や防具、それにマジックアイテムのお店が立ち並ぶ北区です。理由は分かりますよね? ダンジョンから出て来たマジックアイテムなどを見る為です。もしも良い物があれば、購入する事も視野に入れてます。
……お金、無いだろうって?
失礼な! いくらボクだって、お金くらい持ってます! と言うか、むしろお金持ちです!
試練のダンジョンで屠った数々の魔物達。その魔物達の膨大な量の魔石はボクの【黒神】の中に仕舞ってあるです。それを遂に売る時が来たのです!
但し! トキオのダンジョンで出現する魔物の魔石しか売らないです。それも、ボクみたいな女の子が倒せそうな魔物の魔石に限ります。
だって、ボクみたいな女の子がドラゴンの魔石とかを売ったら変ですよね?
という訳で、魔石についての調査及び所持してる魔石の一部を売却し、そのお金を以て掘り出し物を購入しようと計画したのです。
なぜ今更? って思ったですよね? ボクが試練のダンジョンから出た後直ぐに売れば良かったのにって。
それにはトキオの眼前に広がる『レイク湖』よりも深い訳があるのです。……レイク湖の深さ、3m程しか無いですが。
つまり、単なる思い付きです。そして、こじつけです。ミサトちゃんとデートするって事の。
ボクとミサトちゃんの仲は、遂に肉球プニプニさせてくれる程の仲になったです。ですが、それ以上進展しないです。
元おっさんのボクとしては当然、エッチな関係になりたいです。ならば、進展させるしかないですよね?
進展させるにはどうすれば良いのか。
考えた結果、今回の計画を思い付いたのです。名付けて『魔石を売ったお金でミサトちゃんの心を買っちゃおう大作戦』という、壮大かつ繊細な計画です。成功させるですよ? ザルな作戦とは呼ばないで欲しいです!
「先ずは何処から行くニャ?」
「魔石やマジックアイテムの買い取りや販売を行ってる、『ハタヤ』っていうマジック店に行ってみるです」
「さすがユーリちゃんニャ。魔石は冒険者としては基本ニャ。その価値などを調べれば、どんな魔物の魔石が良い稼ぎになるか一目瞭然ニャ!」
褒められたです♪ でも、もっと褒めて良いですよ? ボクは褒められて伸びるタイプです。かと言って、褒め殺しはダメです。あれは背中がムズムズしてくるです。
ミサトちゃんと二人、冒険者についての心構えや魔石などの魔物素材、その他諸々の話をしながら、ボクが目指すお店『ハタヤ』さんへと歩きます。
ハタヤへ向かうのはやはり大通りを通るのですが、途中ですれ違う冒険者はみんなが皆、ダンジョンについての話をしてました。
「やっぱ、魔物素材だよな、稼ぎが良いのって」
「バカ。お前、何にも知らねえんだな。ダンジョン潜るなら、やっぱりマジックアイテムだろ。地下五階層よりも先に行けば、高確率で宝箱が出現するらしいぞ?」
「あいつら宝箱の話してっけど、五階層から下はAランク推奨っての知らねぇんだな」
すれ違う冒険者達の話を要約すると、ダンジョンは階層毎に推奨ランクが決められていて、地下五階層よりも下へ潜るにはAランク以上の実力じゃないと辛いみたいですね。
それと、ダンジョンに潜る為には、最低でもEランクになっていることが前提条件らしいです。
確かにFランクは新人の中の新人、キング・オブ・ルーキーなので、ゴブリンとの戦闘でさえ殺されて死ぬ可能性があるです。そんな新人達を死なせない為のルールなのでしょうね。
でも、向こう見ずな新人の中にはこっそりとダンジョンに潜ろうとする人も居ると思うです。どうやって見張ってるんですかね?
「小僧っ子がこっそりダンジョンに向かったが、大丈夫なのか? あいつら、薬草採取しかやった事ねぇだろ?」
「今はギルド職員と、マキトさん達数人の冒険者が見張ってるから大丈夫らしいぜ? マキトさん達は調査に次ぐ指名依頼みたいだけどな。それに、今はまだ何にもねぇがダンジョンの入口に門を造るらしいし、近辺には商業施設やギルド出張所も出来るって話だ。それと噂なんだが、入口はマキトさん達以外にも巨大な『鬼』が守ってるらしいぜ? マキトさん達が認めてもそいつが認めねぇと、中には入れてくれないらしい」
「鬼……って、マジかよ!?」
「ああ、大マジだ。何でも、マキトさんがダンジョンの奥に居たそいつと意気投合して、それでそんな事を頼んだらしい。魔物と意気投合って、さすがマキトさんだよな、Sランクは伊達じゃないってか。……んで、その鬼も何やら探してる奴が居るらしく、そいつが現れるまでは引き受けたって事らしいな」
疑問に思ったと同時に、街ゆく冒険者の会話から答えが聞こえて来ました。絶妙なタイミングとはこの事ですね!
ダンジョンについての新人の対応をギルドもちゃんと考えてるみたいですね、安心しました。
ボクがダンジョンを見付けたと報告した以上、もしもそのダンジョンで若い冒険者が死んでしまったら責任を感じます。冒険者は自己責任の職業だから、自分の失敗で死んでもボクが責任を感じる必要は無い、とクラウスさん辺りには言われそうですが、それでも嫌な気分になるです。
ボクの責任感情はともかく、色々と考えてるのは恐らくそのクラウスさんです。変態紳士のマキトさんにダンジョン入口を見張らせたり、これからギルド出張所を造ると計画を立てたり。とにかく、しっかりと対策を講じるのはさすがギルドマスターですね。
しかし、鬼、ですか。
鬼と言えば鬼神の王である『シュテン』が思い浮かぶですが、さすがにボクが居ないのに勝手にそんな事はしないと思うです、門番なんて。
鬼については気になるですが、まだ学園に通ってるボクはどちらにせよ、卒業しないとダンジョンには入れないです。卒業してしまえば、最低でもいきなりDランクの資格が与えられるみたいなので、卒業さえすれば待った無しにダンジョンに潜れます。なので、それまでは学園生活を満喫するつもりです。
かつてのボクはやんちゃしてたので、まともに学生生活を送った試しが無いです。今回はしっかりと楽しむですよ!
「ユーリちゃん、ハタヤさんに着いたニャ」
「何はともあれ、今日はお買い物などを楽しむとするです!」
「何の事かニャ?」
「ううん、何でもないです! どんなマジックアイテムが有るのか、楽しみです♪」
ボクはミサトちゃんと手を繋ぎ、鼻歌を歌いながらハタヤさんに入りました。
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