第17話 冒険者学園の授業開始です!
十七
「ミーナさん? 浴槽の中でいったい何をしてたです……?」
「い、いや、あのね? 全身でお湯に浸かって、つ、疲れを取ってただけよ? 決して、浴槽の中でユーリちゃんに座って貰おうとか、あわよくば弄ろうとか、そういうのじゃ無いからね!?」
……つまり、そういう事を狙ってた訳ですか。ふーん、そうですか。あぁ、そうですか。
ボクは右手にそっと雷を纏わせ、無言のままミーナさんへと近付きました。雷を纏った右手からはバチバチと放電現象が起こっています。
「ちょ、ちょっと待って!? な、何だか右手がバチバチ言ってるけど!?」
ボクの右手を見ながら、真っ赤な茹でダコ……もとい、ミーナさんは、そう言いながら後退り始めます。
「や、やだなぁ、ユーリちゃん! そんなに恐い顔したら可愛い顔が台無しだよ!?」
「……遺言はそれだけですかね?」
「ひっ!? あ、謝るから! ね? お、落ち着いて!? に、二度としないから!」
ボクの脅しに屈したミーナさんは、ボクにお腹を見せながら仰向けに寝転がりました。俗に言う『服従のポーズ』ですね。ですが、全裸の為に色んな所が丸見えです。エロいです。
ボクの身体が男のままだったなら、迷わず襲うのに……!
と、ともあれ、反省したみたいなので、許してあげるです。
右手に纏った雷を解除し、ミーナさんに許すという事を言おうとした時、ミサトちゃんがお風呂に入って来ました。相変わらず、可愛いです♡
「……何をやってるニャ?」
「あ、ミサトちゃん! に、肉球をプニプニさせて欲しいです!」
「嫌だニャ!」
「そ、そんな事言わずに……! す、少しだけ! 少しだけでいいです! ハァハァ♡」
ボクはミーナさんを忘れて、ミサトちゃんに言い寄りました。だって、肉球です。そして、プニプニです。興奮して来たです……!
しかしボクのその行動は、今し方懲らしめたミーナさんと同じ様な行動です。
結果、ボクはミーナさんと同じ事をする羽目になりました。
「嫌だと言ったニャ! ミーナと同じ目にあいたいニャら、プニプニしても良いニャ……」
興奮するボクに対してミサトちゃんは、その両腕を
「ひぃぃっ!? な、何でも無いです! プニプニしないです! だ、だから、その手はやめて欲しいです……!」
クラス分け試験の時の人形みたいに、細切れにされるボクの姿が脳裏に過ったです!
ボクは仰向けに寝転がり、ミーナさんと同じ服従ポーズを取りました。色々丸見えで恥ずかしいですが、命には代えられないです。
「くだらない事してニャいで、二人も早くお風呂を済ませるニャ」
「「……はい!」」
そんなこんなでその後は真面目に身体を洗い、お湯に浸かって体が温まった所で三人一緒にお風呂から出ました。
ミーナさんは既にのぼせていたのに再びお湯に浸かったものだから、お風呂上がりと同時に倒れてましたが。
ともあれ、お風呂にも入ったし、夕食まで時間もあるし、部屋に戻ってお昼寝でもするです。
あ、ミサトちゃんから借りたパンツは綺麗に洗って返したですよ? それが礼儀ですからね!
「ミサトちゃん、助かったです! 綺麗に洗ったから返すです! ……まだ乾いて無いですけど」
「……洗わないでそのままが良かったニャ」
「……何か言ったですかね?」
「ニャ、何でも無いニャ!」
パンツを返した際にミサトちゃんの様子が少し変でしたが、濡れたままはやっぱり不味かったですかね……?
カイトさんが教えてくれた魔法で乾かせば良かったですかね? 次に借りる時があったら、しっかり魔法で乾かしてから返すとするです。
その後ミサトちゃん達と別れて部屋へと戻り、そのままベッドに横になりました。
時おり、股間に張り付いているスラさんが小さな声でヌヴァーとか言ってますが、後で声を出さない様に注意しておくです。そんな所から声がしたら、変な目で見られてしまうです。
そんな事を考えてる内に、ボクはいつの間にか寝ていたらしく、気が付けば窓から見える空は茜色に染まっていました。
「……お腹減ったです」
お腹もグゥゥゥと鳴っているので、まだ少し時間は早いですが、ボクは食堂へと向かいました。
食堂に入ると、何故かネコーノ君が当たり前の様にテーブルに着いて夕食を待っていました。
ネコーノ君はトキオの領主の息子であり、ハポネ王家の血に連なる人物です。そんなネコーノ君が、何故に孤児院の食堂に居るですかね?
「……何故にネコーノ君がここに居るです?」
「おぉ! 君はユーリ殿! 何故にと言われても、僕は今日からここで暮らすのですぞー。ミサト殿と仲良くする為には、生活も共にするのですぞ」
アホです。ボクの目の前に、見事なアホが居るです。
貴族の生活を捨ててまで好きな人にアタックする姿勢は素敵だと思うですが、それにしても、わざわざ最低辺の生活をする必要は無いと思うです。
そんな事を考えていたら、ミサトちゃんが食堂にやった来ました。
「何でネコーノがここに居るニャ!?」
「待ってましたぞ、ミサト殿! 今日から僕もここでお世話になるのですぞ! 仲良くして欲しいですぞー!」
「嫌だニャ!」
ネコーノ君はさっそくとばかりに、ミサトちゃんが食堂にやって来たと同時にアタックし始めたです。即座に拒否されてますが。
ボクも参加した方が良い気がしますが、先程お風呂で恐ろしい思いをしたので、今は控えておくです。命、大事、です!
「グハァッ!! ですぞっ!!」
「ふぅっ! スッキリしたニャ!」
……参加しなくて良かったです。
ネコーノ君は、ミサトちゃんの華麗な右ストレートを顎先に喰らい、スローモーションを見てるかの様に膝から崩れ落ちてます。ノックアウトですね!
そんな些細な騒ぎはあったですが、その後クリス君とノルド君、それにミーナさんも食堂に集まり、ようやくの夕食です。
「な、何これ!? まるでウ〇チじゃない! ちょっと、マレちゃん!? 私、こんなの食べられないわよ!?」
「うるさいわよ、ミーナ! つべこべ言わずに黙って食えっ!」
いつもは作り置きをして居なくなるマレさんですが、今日の夕食は孤児院に居ました。恐らく、改良を加えたカレーの感想を聞く為ですね。
そしてミーナさんの言葉とボクの説明で分かる通り、夕食はカレーです。お昼に食べたのはキーマカレーでしたが、夕食として出て来たのはボクも良く知る普通のカレーでした。お肉、ジャガイモ、人参がゴロゴロと入っている、家庭のカレーというやつです。
しかも、オン・ザ・ライスです……!
当然、ボクは美味しく食べましたが、ミーナさんとマレさんは最後まで言い争ってました。
……しかしミーナさん。カレーの時にその言葉はNGワードです。
ちなみに、ダウンから回復したネコーノ君も、カレーライスを見て顔面蒼白になってましたが、ミサトちゃんが食べてるのを見て恐る恐る食べ始めてました。その後、やはりカレーの味の虜になったのか、あっという間に食べ終わってましたね。
それと、最後まで食べる事に抵抗を見せていたミーナさんでしたが、最終的には「美味いですぞーっ!!」とネコーノ君が叫んだ事で、ようやく食べてました。そして、もちろん完食です。
カレー……美味しいですよね!
そんな感じで賑やかな夕食を終え、その後は何事も無く部屋に戻って眠りに就きました。
……寝る前にトイレに行かないのか、ですって?
トイレはスラさんのお陰で行かずに済んでるです。本当に便利ですね!
☆☆☆
冒険者学園二日目。
「私が魔法担当の講師の〜、『マイア=ミスト』で〜す! よろしくね〜! あ、レイドと同じ『静かなる賢狼』に属してるわよ? ジョブは魔法担当で分かる通り、【魔法士】よ〜」
ボク達一年生の前で自己紹介をしてるのは、マイア先生です。ボク達Sクラスの担任講師であるレイドさんと同じパーティですね。
マイア先生の見た目は正に妖艶な魔女といったもので、黒いとんがり帽子に黒いローブ、右手には柄頭に綺麗な紅い宝石が嵌め込まれた
少し垂れ目である事から、妖艶な魔女と言っても優しい印象を受ける相貌ですね。あ、髪と瞳の色は薄緑色です。
ちなみに、冒険者学園の授業のシステムは、一時間毎に教科を変えるのでは無く、一日中同じ事を学ぶそうです。
今受けている授業は魔法なので、今日一日は魔法だけを学ぶという事ですね。
という事で、ボク達一年生は『魔法の塔』へと来ています。
その魔法の塔ですが、中に入ると一つの円形の空間だけでした。広さは、直径で200m程あり、天井の高さは10m程です。塔という事から、天井に行くにつれて円錐状に細くなってます。
それと、やはりこの魔法の塔にも障壁を張る為のマジックアイテムが設置されてるそうです。
但し、街などを護る為の強力なものでは無い為、一定以上の威力の魔法や衝撃を受けると障壁が壊れるのだとか。
まぁ、学園生はみんな初心者なので、壊れるなんて心配はいらないですね。
「それじゃあ〜、授業を始めるわよ〜! とは言っても〜、最初は簡単なフレイムボールとマジックシールドからね〜。先ず先生が見本を見せるから〜、その後は二人一組に分かれて〜、互いに放って、防御して、ってやってねぇ〜」
という訳で、さっそく魔法の授業が始まりました。
やはり最初の魔法の授業という事もあり、初歩的な魔法をひたすら練習するみたいですね。
さてさて、マイア先生の見本はどうですかね?
この世界で魔法を見たのは、ボク以外ではネコーノ君のキャットフレイムだけです。楽しみですね!
「先ずは〜、フレイムボールから。『我が体内を巡りしマナよ。炎塊となりて、焼き尽くせ! フレイムボール!』」
マイア先生はショートワンドを両手で持ち、それを胸の前に構えながら呪文を唱えました。
恐らくマイア先生もBランクなのでしょうから、無詠唱で魔法は放てる筈です。ですがそれだと、魔法の仕組みが分からないです。特に魔法を使った事の無い初心者には。
なので、しっかりと呪文を唱えて見本を見せてるのでしょうね。
ともあれ、呪文を唱え終わると同時、マイア先生は胸の前で構えてたショートワンドの先端を前方に向けました。
すると、その先端から紅い魔力が溢れ出し、その魔力が渦を描く様に纏まり始めると、やがて直径30cm程の炎の玉を杖の先端部に作り上げました。フレイムボールですね。
その後完全に形が定まると、フレイムボールは勢い良く広間の中心に向けて放たれました。
中心部に着弾したフレイムボールは、軽く爆発して炎上すると、10秒程で消えました。
なるほど! アレくらいが初心者として放つべき魔法の威力ですか! 理解したです!
となると、ボクがゴリライガーを倒した魔法の威力は何だったんですかね?
爆発した跡地が巨大なクレーターになるとか、爆発した際の炎が天高くまで聳える巨大な炎柱を噴き上げるとか。
ゴリライガーを倒した時の威力はともかく、気を付けなければダメですね。あまりにも強力な威力の魔法を放ってしまうと、犯人がボクだとバレてしまうです……! あれ程じゃなくても、マイア先生よりも強力な威力で放ってしまえば疑われるです!
ですが、マイア先生の見本でイメージはしっかりと出来たです。慎重に、且つ、しっかりと練習するです!
「次は〜、マジックシールドよ〜。しっかり見て覚えてね〜! 『我が体内を巡りしマナよ。全てを防ぐ強固なる盾となれ! マジックシールド!』」
フレイムボールの次にマイア先生は、言葉通りのマジックシールドを唱えました。
呪文を唱え終わると、フレイムボールの時とは違い、目の前に四角い壁を描く様にショートワンドを動かしています。
すると、ショートワンドの先端の動きに合わせて宙にマナによる線が描かれ、始点と終点が繋がった瞬間に淡く光る半透明の白い膜の様な物がマイア先生の前に張られました。どうやら、その膜こそがマジックシールドみたいです。
「これがマジックシールドねぇ〜。って言っても、これだけじゃ本当に魔法を防げるか分からないわよねぇ。じゃあ〜、そこの猫の獣人さんに手伝って貰おうかなぁ〜! 先生に向かって〜、フレイムボールを唱えて良いわよ〜!」
「ニャ!? あ、あたしかニャ!? わ、分かったニャ……! 『わ、我が体内を巡りしマナよ。炎塊となりて、焼き尽くせ! フレイムボールニャ!!』」
やる気満々のボクと一緒に、最前列でマイア先生の話を聞いていたミサトちゃんがマイア先生に呼ばれました。
呼ばれた瞬間にビクッとしてましたが、その瞬間に尻尾の毛もブワッと膨らんでました。何だか可愛いです♡
尻尾の毛はともかく、ミサトちゃんはマイア先生の前に進み出ると右手の掌をマイア先生に向け、恐る恐る呪文を唱えました。
唱え終わると、マイア先生のフレイムボールと同じ感じで炎の玉が掌の先に生まれ、その後放たれました。
放たれたと言っても、ユラユラと進み、膜……マジックシールドに当たった瞬間に消えてしまったので、いまいちマジックシールドの性能が分からなかったです。
「う〜ん。魔法媒体も無くフレイムボールを放てたのは初心者としては凄いけど、これじゃ伝わらないわよね〜。どうしようかしら〜」
これは、魔法の威力をコントロールする為のチャンスです。失敗して威力が強くなってしまっても、マイア先生ならきっと対処してくれる筈です。立候補するです!
「マイア先生! ボクにやらせて欲しいです! あ、ボクの名前はユーリと言うです!」
「ユーリ殿! ここは僕の出番ですぞー! 僕の華麗な魔法をミサト殿の見せて、そして魅せて惚れさせるシーンなのですぞっ!」
「ネコーノは黙れニャ!」
「ん〜。ユーリちゃんの方が早かったから〜、ユーリちゃんにお願いするわね〜。と言うか〜、ネコーノ君が魔法をどれぐらい使えるかは知ってるし〜、ここはユーリちゃんに譲ってね〜!」
……ネコーノ君。早い者勝ちですよ?
それはさておき、ボクも真剣になるです。
間違っても、ゴリライガーを倒した時の様な威力で放っちゃダメです。……アレでも軽く放ったつもりだったですが。
ともあれ、しっかりと威力コントロールしたフレイムボールを放ちたいと思います!
「それでは、いくです! 『我が体内を巡りしマナよ。炎塊となりて、焼き尽くせ! フレイムボール!』」
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