第14話 超能力の併用
ある日の昼。俺は自分の部屋で椅子に座っていた。超能力の可能性について考えていたんだ。
数日前、千里眼と透視を同時に使った。他の超能力も同時に使う事ができれば、もっと使い勝手が良くなるんじゃないか?
現在使える超能力は…
触れずに物を動かせる、念動力。
他者の思考を読む、読心。
囲えば様々なものから守る事ができる、結界。
行った事のある場所や見える場所に一瞬で移動できる、瞬間移動。
遠くの光景を見れる、千里眼。
物を透かして見れる、透視。
この6種類だ。この中で複合しやすそうなのを順番に試していくか。
まずは念動力を千里眼や透視と合わせるか。
千里眼で屋敷の裏に広がる森の中を見て、念動力で石を動かしてみる。…よし、できた。念動力はその場にいないと使えないから、千里眼と合わせたこの方法は使えるな。
次に部屋の中にあるテーブルの引き出しの中を透視で見る。そして中に入っている筆を念動力で動かす。実際に見てみたら、きちんと筆が動かした通りの位置に動いていた。これも使えるな。
次は読心と千里眼だな。
千里眼で遠くにいる中年男性を見て読心を発動する。ごめんよ、これもテストなんだ。
『あ~、これから仕事か。早く帰って母ちゃんに会いたいなぁ』
なんとも言えない思いが聞こえた。仲の良い夫婦なんだろうか。とにかく、これも使えるな。
次は千里眼と結界。千里眼で森の中の木を見て、その木に結界を張る。そこに石を念動力で投げる。結果、石は結界に阻まれて弾かれた。
最後に千里眼と瞬間移動だな。使えれば便利そうだから成功したい!何せ行った事のない場所に瞬間移動できるんだからな。
「さて、試すか」
緊張するな。まず千里眼で以前行った街の端の方を見る。この街外れまでは行った事がない。人がいない事を入念にチェックする。まだ瞬間移動を誰かに見られるわけにはいかない。…よし、誰もいないな。瞬間移動、発動!
「おぉ、無事に来れた」
俺は千里眼で見た街外れに来る事ができた。これで行った事のない場所にも千里眼を併用すれば瞬間移動できる事が分かった。それから俺はすぐに屋敷の自室に戻った。
「楽しいな!超能力のできる事が増えていく」
やっぱり俺の目標は冒険者だな!これだけの能力があるなら、貴族として生活するよりも冒険者として生活した方が楽しそうだ!
『新たなスキルを解放します』
11歳になる日の夜。毎年恒例になったスキル解放の声が聞こえた。
「今日は起きてたから驚かなかったな」
夜中に声が聞こえる事が分かっているから起きておいた。眠いけど声に起こされるから仕方がない。起こされる事と、自分で起きておく事を比べたら、自分で起きておいた方が気分が良い。夜中に起こされるのは辛い…。
「今度のスキルはテレパシーか」
自分の思っている事を、言葉にしなくても相手に伝えられるらしい。さらに、そのまま相手と頭の中で会話ができるようだ。ただし、俺がテレパシーを解除したら、相手がまだ話を続けたくても途中で終わるらしい。
このスキルもきちんと使いこなせるようにならないとな。下手をすれば、自分が考えている事が相手に丸分かりになってしまう。明日からは、このスキルの訓練に重点を置かないといけないな。
「おはようございます、ラソマ様」
「おはよう、アミス」
「何か良い事があったんですか?」
「どうして?」
「そういう顔をしていたからです」
「僕もまだまだだね。貴族として表情を読まれてはいけないのに」
「ラソマ様の表情は分かりますよ。長くお傍に居させて頂いていますから」
「そっか…長年の経験から分かったんだね」
「はい!」
それなら仕方がないかな。貴族として勉強中の今ならまだしも、勉強すらしていない頃の俺を見てきているんだから。
「実は新しいスキルが解放されたんだ」
「やっぱり、そうでしたか!」
「想像してたの?」
「はい。ラソマ様のスキルは1年ごとに進化しているようなので、今日また新しいスキルに出会えていると想像していたんです」
「その想像が当たってたね。今日からまた、訓練に付き合ってくれる?」
「勿論です!」
「ありがとう」
その後、朝食の席で新しいスキルが増えた事を家族に話したけど、驚かなかった。さすがに何回も経験したら驚かないよな。
朝食を食べ終えて俺はアミスと一緒に自分の部屋に戻った。テレパシーの訓練のためだけど、特に外でする必要がないと感じれたからだ。
「今回はテレパシーっていう能力だよ」
「どういう効果があるんですか?」
アミスにテレパシーの効果を説明する。
「そこで今からアミスに声を届ける。もし聞こえたら頭の中で返事をしてほしい」
「分かりました」
よし、テレパシー発動。
『アミス、聞こえる?』
俺の言葉にアミスが一瞬、ビクッとする。
『き、聞こえました。私の声も聞こえますか?』
『うん、聞こえるよ。まずは無事に成功できたみたいだ。次の訓練をするよ。今度は互いの距離がどれだけ離れればテレパシーが使えなくなるのか検証しよう』
『はい、それじゃあ行ってきます』
『あ、待って。僕が瞬間移動で遠くまで行ってくるよ』
『お一人でですか?危険ではないですか?』
『大丈夫だよ、結界も張っているから。それじゃあすぐに戻るよ』
『くれぐれも気をつけてくださいね?』
アミスの言葉に頷いて瞬間移動する。目的地は屋敷と反対側の街外れだ。本当は森の中まで行きたいけど、万が一があった場合、アミスの責任になる可能性が高い。俺一人の責任になら別に構わないけど、俺のせいでアミスに迷惑がかかるのは嫌だ。
やっぱり千里眼と瞬間移動のコンボは良いな。行った事がある場所に瞬間移動するにしても、千里眼を使わなければ誰かに見られる可能性がある。自分で自分を守れるくらい色々な意味で強くならないと、あまり使える人がいない瞬間移動を使える事を無闇に知られたくないからな。
さて、街外れにやって来た。
『アミス、聞こえる?』
『はい、聞こえます。そちらは大丈夫ですか?』
『大丈夫だよ。すぐに戻るから』
『はい』
この距離ならテレパシーは問題なく使えるようだ。
言葉通り、俺はすぐに屋敷の自室に戻った。本当はもっと遠くまで行って検証したいけど、心配させてしまうからな。もう少し大人になってから検証しよう。
「ただいま、アミス」
「お帰りなさい。無事で良かったです」
「心配し過ぎだよ。危険な場所に行ったわけじゃないんだから。さて、次は複数の人と喋れるかだね」
「誰か、時間のありそうな人を呼んできましょうか?」
「いや、スィスルを呼ぼうと思う。今日、魔法の授業はなかった筈だから」
「では呼んできます」
「いや、せっかくだからテレパシーで呼びかけてみるよ」
そう言って俺はスィスルにテレパシーで声をかける。
『スィスル、聞こえる?』
『え!?ラソマ兄様の声?!でもどうして?!』
『さっき、新しいスキルの話をしたよね?これはその能力の効果で、テレパシーって言うんだ』
スィスルにテレパシーの概要を説明する。
『それでは私がラソマ兄様のお部屋に行けば良いんですね?』
『迷惑でなければだけど…時間は大丈夫?』
『大丈夫です!すぐに行きます!』
その声が聞こえて、数秒後、スィスルが俺の部屋に来た。
「ラソマ兄様、お待たせしました!」
「早かったね。何か魔法を使ったの?」
「はい。身体能力強化の魔法を使いました。まだ持続時間が短いですけど」
スィスルはわざわざ魔法を使ったようだ。別にそこまで、急がなくても良かったんだけど。スィスルの気持ちが嬉しい。
「私は何をすれば良いですか?」
「今からスィスルとアミスの2人にテレパシーを使うから、声が聞こえたら返事をしてほしいんだ」
「「分かりました!」」
『スィスル、聞こえる?』
『聞こえます!』
『今、僕がスィスルに話しかけた声はアミス、聞こえた?』
『はい』
『今、僕がアミスに話しかけた声はスィスル、聞こえた?』
『聞こえました』
俺から個人を限定して喋っても2人に聞こえるのか。
『スィスル、アミスに話しかけてみて?』
『はい。アミスさん、ではないですね。…アミス、聞こえる?』
スィスルは貴族だけど、執事や使用人、それにメイドなど、年上の人に対して丁寧語になりやすい。今もアミスに対して、アミスさんと言ってしまった。俺も呼び捨てにする事に慣れるのに時間がかかった。スィスルもいずれ言えるようになるだろう。
あれ?アミスがスィスルの声に反応しないな。
『アミス、スィスルの声は聞こえた?』
『え?いえ、聞こえませんでした』
『という事は、俺の声は2人に聞こえるけど、2人で会話はできないって事だね』
『そうなりますね』
『スィスル、今ならアミスに対して不満を言えるぞ。アミスもスィスルに対して不満を言えるぞ』
俺には聞こえてしまうけどな。
『不満なんてないし、何か言ってもラソマ兄様に聞かれるじゃないですか』
『スィスル様に不満なんてないです。仮にあってもラソマ様に聞かれるのは抵抗があります』
どうやら2人は互いに不満を抱いていないようだ。仲が良いのは良い事だ。
さて、実験も終わったしテレパシーを解除するか。
「もうテレパシーを解除したから普通に喋ってね」
「はい!」
「もう宜しいんですか?」
「大体は分かったからね。あとは経験かな。スィスル、アミス、今日もありがとう」
さて、もっと使いこなせるようにならないとな!
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