バーチャルな世界でドラゴンは嗤う
@mtkmti
「
その日私は嘘をついた。
一大決心の嘘だ。齢65にしてこの権利を行使することになるとは。
ご存知の通り、今現在嘘をつくことは法的に、原則禁止されている。
2045年に制定、2046年に施行された「虚偽の発言に対する罰則に関する法律」によって、あらゆる場面において人がうそをつくことは罰則の対象となったのだ。
そこには技術的革新と思想的変遷がある。技術的背景には「うそ発見器」の技術的革新が存する。元々「うそ発見器」は、人間の生理症の変化から発言に嘘が含まれるかどうかを判定するものであった。
これにはポリグラフ、すなわち呼吸や脈拍などの身体的変化を計測・記録する装置(別名キーラー・ポリグラフ)を利用し、判定していた。しかし、そのうそ発見器の結果は十分正確であるとは言えないものであった。なぜならば、脅迫などで心拍数が増加すれば、結局は反応が出てしまう為である。
しかし、そののちにCT(コンピュータ断層撮影法)、PET(陽電子放射断層法)、fMRI(機能的核磁気共鳴法)と進化し、脳の変化を読み取り、嘘をついてるかどうかの判定がある程度正確に行えるようになった。しかし、fMRIは密室空間に人を入れる為脳にストレスを与えるものであり、また脳は個々人によって差異が有る為、その時点ではまだ効果を疑うものが少なくなかった。他にも認知的インタビューを利用した嘘を発見する技法なども模索された。
しかし、それも小型化され(2006年時点でポータブル化されたMRIは開発されていた)2030年には小学校入学以降、嘘をつくことの非倫理性、違法性が説かれ、中学校卒業時にリストバンド型のうそ発見器
(このリストバンド型のうそ発見器は当然個人で取り外しは不可能。いついかなる時も装着が義務付けられている)が装着されることが義務付けられることによって脳へのストレス等を考慮することなく100%に近い形で嘘が分かるようになった。
個々の発言を総務省が一元的に管理し、嘘をつくものがいた場合、ブザーが鳴り即座に警察へ通報がなされることとなる。懲役になり収監中はこのリストバンドは外されることになる。
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