第64話 龍の巣

「……なんで、12守護神がここに?」

「まさか……ラグナロクシリーズの子であるか?」

「……そう、フェンリルの娘。ユイ」

「これは失礼した。俺はケルベロス。そこに倒れているフミの守り神として贖われ、崇められている」


 ケルベロスは頭を全部使って、ペコリと下げる。ユイもそれを見て、ペコリと下げる。これをすることの意味は、対等であるということ。言葉を話さる魔物どうしたからこそ出来た芸当であり、普段なら即戦闘だ。


「守り神だと?」

「あなたは……そうか。魔王継承権第1位の──」

「ケイだ。それで、どういうことだ?」

「ここにいるフミの先先先先先先代の前の巫女が、幾万と犠牲を払って俺は召喚されたのである。そして、1度成功してしまえば、召喚は容易い。だから、俺は力を見せつけ、いつしか守り神と祟られたのである」


 淡々と告げる事実をケイとユイは静かに聞く。一方、ケルベロスは地面に仰向けですぅすぅと寝息を立てるフミを見つめながら、話す。


「この子はたった1人で俺を召喚したのである。天才だ」

「…………その所だけは、認めてもいい」

「ユイ?」

「……勇者の力がなかったら、私でも、無理」


 珍しくユイは、フミの才能を認めた。そこで、ケルベロスはいきなり白く光出した。


「時間……であるな」

「だったら、ちょうどいい。魔王に伝えろ。『約束の時は近いから、半月以内に全員集めろ。あと、お前が最後になるから土産を送ってやる』ってな」

「!! わかったのである! 我らの悲願。託したのである」


 ケルベロスはケイに向かって、これまで以上に深々と頭を下げた。地面に着くほど、心からお願いするように深く、深く。そして、そのままケルベロスは白く光、消えた。


「さてと。おい、起きろ」


 寝ているフミの頬を軽く2、3回べしべしと叩く。だが、フミはよほど疲れているのか、未だに起きる気配がない。


「ちっ。起きねぇ……仕方ない。引きずるか」

「……こんなのに、私は負けた……」

「そう、落ち込むな。俺にはユイが必要だ。だから、そばに居てくれればいい」

「……ん、ケイがそう言うなら、それでいい」

「って、こら! くっつき過ぎだ!」


 ユイは、フミを引きずってる腕の反対の方にギュッと抱きつき、恋人のようにくっ付く。


「……私もケイが必要」


 ユイは嬉しいのか、少しだけ、もう少しだけ強くギュッと抱きしめた。

 テクテクと裸足で歩く魔物が2人、引きずられる亜人1人が龍の巣へと向かった。



 そして、さらに2日がたった。


「……ケイ、崖」

「あぁ、崖だな」

「が、崖ってレベルじゃないですよ!!」


 大地が真っ二つと言っていいほど割れており、向こう岸まで2km程の長さがあり、深さはまさに深淵といっても過言ではないほど深く、太陽の光も当たらないほど闇に染まっていた。

 そこに大きさが2mほどの怪鳥が1羽飛んできた。


「……ケイ、来るよ」

「わかってる」


 2人はしっかりと警戒体勢を取り、身構える。しかし、フミにはさっぱりと理解出来ず、突っ立っている。


「何言ってるんですか……まだ、怪鳥はあんなに遠い……って、えぇぇぇぇえ!!」


 約300mほど遠いところで飛んでいた怪鳥が、崖の底から飛んできた深緑色の美しく、巨大なドラゴンにパクッと飲み込まれた。

 そのドラゴンは、ケイ達を身もせずにまた、深い闇に帰っていく。


「「…………」」

「無理です。無理無理無理。迂回しましょ! ね?」


 黙る2人を説得しようと、フミは提案をし続ける。だが──


「……ユイ、見たな?」

「……ん、バッチリ。ここが、龍の巣」

「あの〜。聞いてますか?」


 恐る恐るフミは、ケイとユイの顔を覗きながら尋ねる。


「あぁ、聞こえてるぞ。もちろん行くんだな!」

「全く聞いてないじゃ……ない……ですって? あ、あ、あぁぁぁぁぁぁあ!!!!」

「……フミ、うるさい」


 トンっと押されて、真っ逆さまに落ちていくフミ。

 ユイはその時、見てしまった。自分を見守る2人の顔は楽しそうだということに。


「……ケイ、お姫様だっこ」

「なかなかロマンチストだな。わかったよ……じゃあ……」


 ケイはしっかりとユイを抱え、目を合わせて2人で一言。


「「行こう!」」


 フミに続いて、2人も深淵の中へと入っていった。

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