第9話 全裸の化け物

「うぉおおおおお!!! うめぇ!! 泥水じゃない、本物の水だぁ!」

「……ねぇ、だれ?」

「飲める! 飲めるぞぉーー!!!」

「…………ねぇってば」

「あぁ〜生き返る! ただの水がこんなに美味いとは……。なんか生きてて良かった……」


 少女の呼びかけに全く反応せず、水に感動するケイにいい加減イラつき始めたのか、今度の呼びかけに少し『威嚇』を加える。


「ねぇ!!」

「うおっ!…………誰だ、お前?」

「それ、私のセリフ!……あなた、誰?」

「………とりあえず、なにか着てください」


 少女はケイから数m離れた場所に上半身をさらけ出して立っていた。ロリっ子のような小さい体にはいくつもの傷ができており、見るからに痣や打撲で腫れている箇所が5〜6個あった。


「……」


 少女は、ケイから少し離れば場所から一瞬だけ全身を湖に浸かってから上がってきた。少女が湖から上がってきた姿は、人に似たではなかった。

 否、それどころかケイの一種のトラウマ。あの日、絶望を与え、帰れる希望を見事に無くしてくれた奴の姿そっくりだった。


「な、なんで……」


 咄嗟にケイは『威嚇(小)』を使い、少しで足止めを試み、いつでも逃げる準備をする。が、動かない。目の前にいるのは狼のような姿に、灰色の毛並みに、赤い目と奴そっくりだった。が、よく見ると時々浮かび上がるのは淡い青色の線ではなく、淡い赤色の線だった。


「……答えろ。お前、何者だ? なんでその姿をしている?」


 少し沈黙が続くと化け物のは光を薄らと放ち、人の姿へと変化していく。

 姿はさっきと一緒で少しロリっ子のような身長。灰色の髪に、子犬のような小さな獣耳、魔獣に共通すると思われる赤い瞳、お尻の付け根から膝あたりまである灰色に生えた尻尾、そして、全裸。


「私は……」

「って、ちょっとまて! 服を着ろ!」


 話始めようとした所をケイが目のやり場に困り、話を遮る。


「えっと……持ってない」


 ケイは仕方なくボロボロになったカッターシャツを、小さな化け物に着させる。右目の応急処置に使った右腕の部分が、肩から先が無くなっているがないよりはマシだった。


 回り込んで後ろから着させたはいいが、ボタンの締め方も分からないのか前が全開で、さらに中は全裸なためもろもろ見えているので、またしてもケイは目のやり場に困る。


「ったく、ボタンぐらい閉めろ」


 ケイは裸体を見ないよに目をボタンだけに集中させ、2番目から最後まで閉める。少し大きいせいか袖から手が出いないが、下は完全に隠れているのでとりあえずの形で処理をした。


「……これでいいか」

「邪魔くさい……」


 狼少女は無理やり引きちぎろうと服を引っ張ろうとする。それを止めるように説得し、話を戻す。


「それで、お前はなんなんだ?」

「私は……家族から捨てられた」

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