第28話 きき

 気が付くと、見覚えのない部屋に居た。壁には棚が設置されており、中には紙や本が所狭しと置かれている。床は至る所に紙が散らばっており、茶色いフローリングが白化粧している。


 見るだけだと退屈しそうだなと思い、試しに棚に残っている資料に手を伸ばしてみたが、するりと手をすり抜けてしまい取れなかった。


 続いて床の紙に触れようとしたが、結果は同じだった。床の紙を目で追っていると、文字が記されたものを見つけた。触れないので、顔を近づけて読んでみたが、見たこともない記号と数式ばかりが並んでいてとても読めたものではなかったので、そっと目を離した。


 他に目ぼしいものはないかと思い目を凝らすと、部屋の中心に細長い台と人の影が見えた。


 影はやがてはっきりと見えるようになり、三人居ることが分かった。一人はベッドほどの大きさの台に横たわり、残る二人は台に居る者の頭の方に向かい合って立っている。

 誰の顔を見ても、霧がかったように伺えない。


 謎の人物たちの素性も気になるのだが、彼の一番の疑問は、何に対してかはさっぱり分からないが、どこか懐かしい感じがすることだ。一体何に懐かしさを覚えているというのだろう。

 そんなことを考えていると、立っている一人が口を開いた。


『本当にいいのかァ?オレは善良な悪魔だからしっかり選ばせてやるけどよォ。』

『それでいい。あの子ザッ…ザーーーッが僕の全てなんだ。』


 もう一人は、あァそうかい、そんなら遠慮なくいくぜ?と言い片方の頭に手をかざした。


 すると、手を起点に光が迸り、視界が白く染め上げられた。











 目を覚ますと、すぐ近くにスナネコが居た。


「ああ、おはよう……。」

「ようやく起きてくれました……!」

「どうしたの、スナネコちゃ…わわっ!?」


 起きた途端にスナネコが抱き着いてきたので、冴えていなかった頭はすっかりお目覚めだ。


「うなされていましたが、嫌な夢でも見ましたか?」


 夢の内容を説明しようとして、ふと思いとどまった。うまく思い出せないのだ。


「ごめん。忘れちゃった。」


 首を左右に振り周りを見渡した。ここはどうやらバスの中のようだ。四角く区切られた景色の中に、たくさんのくすんだ建物がちらりと見える。


 そういえば何かあった気がする…

 確か……森から急に大きなセルリアンが現れて、俺たちに襲い掛かってきて……怪我をかばいながら囮になって、みんなから引き離したところまでは覚えてるんだけどな……。


 左の脇腹をさすってみた。

 一撃をもらった部位は破れてしまったようで、服の代わりにほんのり温かい肌に触れた。いくら撫でてもただ破れているだけで傷があるようには思えない。


 実際に目で確かめると、横なぎに服が破れ、肌が露になっていた。しかし、見れど触れど傷跡はどこにもない。本当にセルリアンと戦ったのだろうか?実は気のせいだったり?でもそれだと服が破れてるのはおかしいし……。


「起きたんですね!」


 バスの入口からかばんとサーバルが入ってきた。

 少年は、二人の顔を見た途端に何かを思い出し、頭に浮かんだままの言葉を呟いた。


「……ジャパリまん、持ってない?」


 いの一番にこれだ。彼らしくはあるが。


「ゆうえんちのボスからもらってくるね!」


 気恥ずかしそうな問いを聞いたサーバルが、嬉々としてバスを降り駆けだしていった。エルシアは、腹を気にしながらかばんに声を掛けた。


「……どのくらい寝てたか分かる?」

「今回は丸一日でした。」


 この前は二日寝てたらしいから、少しマシになった……のか?


「そういえば、ここってもしかして……。」

「ゆうえんちです!前にも見たと思いますが、ヒトが遺していった道具がいっぱいあって面白いですよ!」


 久しぶりだな。ここに来たのが昨日の出来事みたいだけど、もう二週間くらい前の事なんだよな……。


「もらってきたよ!」


 両腕で四つのジャパリまんを抱え込んだサーバルが戻ってきた。

 エルシアは、逸る気持ちを抑えながら一つ受け取りかじりついた。口から全身に幸福感が駆け巡り、力がみなぎってくる。あまりの美味さに思わず笑みがこぼれた。

 今にも鳴りそうな腹の音を押さえつけるように、がむしゃらに食べ続けた。


 かばんは、猛烈な勢いで彼の口の中に消えていくジャパリまんを見て何かを察し、あえて受け取らないでいた。

 そんな刹那の葛藤の間にも、彼は黙々とほおばり続け、遂には四つ全て平らげた。


「ねえねえ!またあれに乗ろうよ!」


 サーバルは、二人の顔を交互に見ながら言った。彼女が指さす先には観覧車がある。


「ごめん、食べたばっかりだからちょっと休ませてもらうよ。」


 かなり古びてるように見えるけど、そもそもあの観覧車は動くのだろうか。『また』って言ってるし一度は動いたんだろう。


「後から追いつくからちょっと待っててくれる?」

「わかった!」


 かばんの返事を聞いたサーバルは、観覧車のある所に向け駆けだしていった。

 バスの中を見れば、いつの間にかスナネコも消えていたので、かばんと二人きりになっていた。


 ……二人だけ残ったけど、なんか気まずいな。適当に話題を振って乗り切るか。


 そんなことを考え何と切り出そうかと頭を捻っていたが、かばんから声を掛けてきた。


「あの、エルシアさんに聞きたいことがあるんですが……いいですか?」

「いいよ!なにかな?」


「エルシアさんの体についてなんですが…」


 聞き間違いかと思い聞き返そうとしたそのとき、遠くから低音のけたましい音が聞こえた。


「何の音でしょう…?」


 かばんは、音の正体に気付いていないようで、のほほんとしている。エルシアは、即座に足元のリュックサックを拾い上げ、バスを飛び出した。


 遠くから明らかに自然界に存在しない音が鳴り響く。彼は確信を持っていた。これは、バイクの音だ。詳しくないので何とも言えないが、エンジンを吹かせる音だろう。そう踏んでいた。


 この音は……!


 少なくともペレでないことは分かり切っている。ペレはバイクの免許を持っていなかった。だとすると、他の人間……?一体何の用があってここに……?それも、一台ではない。二、三台は居るだろう。それに、バイクでない別の何かの音も聞こえる。


 視界の端から何かが高速でこちらに向け駆けてくるのが映った。嫌な予感しかしない。

 少年は、背負っているリュックサックを下ろし、中から一冊の本を取り出した。


「テール!突然で悪いが手を貸してくれ!」

『あいわかった!』


 何かあったのだと感じたかばんが遅れてバスを降りてきた。バスの近くには、観覧車の下に居るはずのサーバルが駆けつけていた。スナネコも戻ってきていた。


「かばんちゃん!何かがくるよ!」


 言い終わるより先に、それらは現れた。タイヤの形をしたセルリアンだ。二体だけバイクの形をしたものが混じっている。




「バスに乗って切り抜けましょう!」

「いや、無理だ。囲まれている……。」


 よく見てみれば、前方以外にも同じ見た目のセルリアンが居た。よく見ると、逃げ場を作らぬようぐるりと囲まれている。


 きっと、あえて一部のセルリアンに大きな音を出させて気を引き、その隙に包囲したのだろう。明らかに統率された行動だ。あの中にこれらを指揮している個体がいるに違いない。


 バイク…タイヤ…高速で移動……そうだ!これなら!


「テール!ウォーターアローをとにかくたくさん出してくれ!」

『どうするつもりか分からぬが、よかろう!』


 術の名を唱えたと同時に三本の水の槍が出現した。


「一人で動くのは危険です!」

「これも作戦のうちなんだ!俺に任せてみんなはバスに避難してて!」


 エルシアに向け、タイヤの形をしたセルリアンが突進した。急に飛び出してきたので彼は対応できなかったが、テールは違った。水の槍を交差させたまま地面に突き刺し、セルリアンの進行を防いだ。


 すると、後ろに下がり、槍の横を通ってきたので、残る一本を正面から突き刺した。タイヤの動きは完全に止まり、パッカーンという間の抜けた音と共に破裂した。


「おかげで助かったよ。」

『あの程度、我ならば遅れを取らぬ!遠慮なく頼って良いのだぞ?』


 今にもふん、と自信たっぷりな鼻息が聞こえそうな声音が返ってきた。


「それなんだけど、今回は回避に専念してほしいんだ。」

『回避とな?』

「どうにも数が多いからこのやり方だとテールの方が先にバテそうだろ?」


 少なくともタイヤ型のセルリアン……長いからタイヤリアンでいいか。タイヤリアンは二十以上は居る。それら全てにこのやり方で対処していれば間違いなくテールの方が音を上げてしまうだろう。


『む……確かにそうだな。燃費の悪さは否めぬ。疑問は残るが我が同胞の考えであるからな!そなたを信じて動くのみよ!』


 再度出現させた槍で突撃してきたセルリアンを弾きながらテールは答えた。


「ありがとう。それじゃあ、始めようか!」


 またしても突っ込んできたタイヤリアンをぎりぎりのところでかわし、時にテールの操る槍で軌道を逸らしながら、テールを抱えたままエルシアは駆けた。その間、テールは何度も何度も水の槍を出現させては辺りに放ち続け、あっという間に辺りは水浸しになった。


「そろそろだな。」


 そう呟き走る速度を落とした。


 タイヤリアンが彼に向け突っ込んでくるも、滑ってしまいバランスを失いながら横を通過していき、ほどなくして地面に倒れた。同様に、残りの者たちも方々に横向きに倒れている。タイヤの側面の中心には、弱点である石が太陽に照らされ光っている。


『なるほどな。奴らは高速で移動しておる。そこで、辺りを水浸しにすることで歯止めの効かぬ状態にして転ばせ、首尾よく撃破するという訳か。さすがである!』

「そーゆーこと。俺じゃ力不足だから撃破も頼む。」

『任せよ!奴らは硬そうだな。ならば、斧で粉砕してくれる!』


 ホーリーアックスと声がしたと思えば、光輝く巨大な斧が出現した。まさかりのような片刃ではなく、戦闘で使用されることを目的とした両刃の形状で、刃だけでも二メートルはありそうだ。


 タイヤの化け物たちは、陸に打ち上げられた魚のようにブルブル体を震わせており、ときおり僅かに移動するが立ち上がる者は居ない。

 テールは、薪を割る要領で震えるタイヤを側面から真っ二つにして粉砕していった。


「そういやなんで光属性にしたんだ?」

『光の力は、太陽の下で使えばより力を発揮できるのだ。なにせ今日はいい天気であるからな。』


 光属性は太陽の下で真価を発揮する…。なんかあの小説の設定と似てるな……。


 そうこうする内に、残るは二台のバイク擬きだけだ。

 起き上がれないので唸るような音を鳴らし抵抗しているが、全くもって無意味だ。無慈悲に振り下ろされた斧に一刀両断され、エンジンに隠された石が露になった。再び掲げられた斧が石に炸裂し、盛大に弾けた。




 二体目も同様に倒し、ようやくタイヤとバイクの軍団を蹴散らし終えた。

 しかし、彼は釈然としない顔をしていた。


「ガルルゥゥゥゥアアア!!!!!」


 遊園地の建物の先から咆哮が響いた。目を凝らすと、巨大な影が見えた。そう気づいたとき、建物の影から何かが現れた。猛獣のような姿で全身は黒く、四、五メートルはある。口の隙間からは鋭い牙が覗き、前足の爪は尖っていて内側に湾曲しており、先端は鋭く人の体など容易く貫けそうだ。


 特筆すべきは目だろう。その目は、生気を感じさせない無機質な一つ目で非常に不気味だ。コイツもセルリアンに違いない。


「ガルルル……。」


 獣の姿をしたセルリアンは、熟練の狩人を彷彿とさせる冷酷な単眼を、獲物を吟味するようにゆっくりと動かしながら、一行の方へ悠然と歩いてくる。


「テール!またさっきみたいに頼む!」

『ピピッ…。エネルギー残量が残り5%を下回ったため、強制シャットダウンします。』


 本を開くも、機械的な声が聞こえるだけで何も起きなかった。


「テールっ!どうした!返事をしてくれ!」


 返事はない。ただの本のようだ。

 その間にも、化け物は自身ありげな様子でどんどん近づいてくる。


 あれはヤバい……彼の勘がそう告げていた。


 くっ…!俺に力があれば……!


 自分の無力さを心から悔やんでいたが、はっと気が付いた。前に、自分には謎の力があると聞いた。それを引き出せればこの状況を変えられるかもしれない。


「ぐぐぐグ……!」


 体に力を込めると自然と声が漏れた。


「今回のは今までと訳が違います!今すぐ逃げましょう!!!」


 何をするつもりか気付いたかばんが、駆け足でバスを降りてきて必死に訴えかけた。それを見た二人も彼の意図に気付き、バスを降りてきた。


「いや……ここで食い止めるッ!!!みんなはその隙に遠くへ!!!」

「駄目です!アレは僕たちが敵うものではありません!!!」


 何を思ったのか、エルシアは、背負っていたリュックサックを雑に投げ捨てた。


「いいから逃げろ!!!時間がないんだ!!!!!」


 怒気のこもった声に三人は驚いた。彼のこんな声は初めて聞いたためか、驚き戸惑っている。


 そんな中、かばんは気が付いてしまった。彼の足が小刻みに震えていることに。

 本当は彼だって一緒に逃げたいに決まっている。悠然と歩くソレは、キョウシュウのフレンズが一丸となって打ち倒した例の大型セルリアンに負けずとも劣らない威圧感を放っているのだから。


 戦闘勘に優れないかばんでさえ分かるくらいだ。弱いはずがない。

 だというのに逃げろと言っているのだ。彼の気持ちを無駄にする訳にはいかない。


「分かりました。行きましょう。」

「かばんちゃん!?」

「……ここはエルシアさんに従うべきだよ。バスに乗ろう。」


 サーバルの方に振り返り静かに呟いた。その顔を見て、サーバルははっとした。

 かばんの顔からは、自分の力不足を悔やむ様子がにじみ出ていた。

 かばんが無言でバスに乗り込んだので、サーバルはバスとエルシアを交互に見て、それに続いた。


「エルシア……!」

「……いい具合に時間を稼いで、頃合いを見計らって逃げればいいんだ。そしたら安全さ。」

「ちゃんと戻ってきてくださいね……?」

「うん!後で追いつくよ!」


 心配そうなスナネコの声が聞こえたので、半身だけ振り返りサムズアップをした。

 それを見て安心したのか、僅かにリュックサックを抱える手を緩ませ、バスに乗り込んだ。


 ……死ななきゃ勝ちだ。


 彼自身、勝てる見込みなどないと考えている。それでも、退く訳にはいかない。自分も逃げれば確実に追いつかれ共倒れになる。そう確信していた。要は絶対に負けられない戦いなのだ。


 遠のいていくバスを尻目に、両頬を思い切り叩いて気合いを入れた。こうなればヤケだ。死ぬとしても自分だけでいい。


 ……ごめんな。でも、友達を守るために死んだんならきっと許してくれるよな?


 黒い獣は、バスをちらりと見たがすぐさま視線を少年に向けた。彼を仕留めてから追いく腹づもりなのだろう。


「こっから先には行かせねぇ!!!!!グルルルルゥゥゥゥァァァァァァ!!!!!」


 力強い声と共に例の姿に変わり、余裕そうな化け物に突撃した。




 竜は、目にもとまらぬ速さで肉薄し、勢いのままに爪を振るった。しかし、セルリアンは右足の爪で見事に往なしてみせた。


 セルリアンは、そのまま右足を空に掲げ、勢いよく振り下ろした。長い爪が、叫び声のような轟音を引き連れ空を切る。


 竜は、それを両手で受け止めた。足の鉤爪がレンガにめり込む。


「ググルルゥ……!」


 右足を振り下ろしたまま左足を横なぎに払った。竜は、尻尾を鞭のようにしならせ爪の軌道を逸らした。獣の左足の爪が地面に深く突き刺さる。


 獣が四肢に力を入れたが、足元が悪かったため体勢が僅かに崩れた。それを好機と見たのか、竜は素早く駆けだし、足の肉を削ぐように爪を振るった。


 しかし、獣は一瞬にして体勢を立て直し、後ろ足で蹴り飛ばした。

 竜は、そのまま吹き飛んでいたが、翼を強引に広げバランスを取った。かと思えば、獣が追いついてきたので、右手で拳を握り、前に突き出した。


 獣は難なく足で防御の姿勢を取り、爪でカウンターを入れようとしたが、失敗した。すでに竜の姿はなかったのだ。すると、右足に鋭い痛みを感じた。振り返ると、いつの間にか竜が後ろに回り込んでおり、右足の付け根を鉤爪で抉り取っていた。


 警戒する獣の前で、抉った部分を口に放りこんだ。この行動が、獣の闘争心に火を灯してしまった。


「ガルゥゥォォォ!!!!!」


 獣は、ジグザグに動きながら竜に接近し、掬うように左足を放った。不意に放たれた一撃に対応できず、竜は上に飛ばされた。


 竜は、きりもみになりながら舞い上がっていたが、翼をめいっぱい広げて姿勢を整えた。


 かと思えば、獣が目の前に居た。竜を上に弾いたと同時に飛び上がったのだ。

 面食らった竜に、容赦なく右足を振り下ろした。


「グルルォォォ!!!」


 咆哮を上げながら、両腕を顔の前で折り曲げ防御したが、空中では踏ん張る地面がない。そのため、背中から勢いよく地面に叩き付けられた。


 淡々と仕事をこなすロボットのような目で竜を捉えながら、獣は地面に降りてきた。


「ガルァァッ!!!」


 軽く叫んだ獣は、残像が残るほどの速さで竜に突撃し、勢いの乗った右足の大振りを繰り出した。竜は倒れていたが、胴体を左手で起こし、右手を前に突き出し迎え撃った。


 両者の爪が交差し、火花を散らす。

 両腕で防いでやっと互角なのだ。片手で敵うはずもない。競り合いに勝利した獣の爪が、竜の手から肘まで深く貫いた。


「グルゥゥゥ!?」


 獣の爪にかすめ取られた竜の右腕が、鮮血をほとばしらせながら地面にぼとりと落ちた。


「グゥゥ……ゥ…あぐうぁぁぁぁ!!!!!」


 竜を覆っていた青い光は消え、元の少年に戻ったが、右腕は千切れたままだ。右腕の先からは血がとめどなく流れ出る。

 獣は地面に落ちた右腕を口で拾い上げ、口を上に向け大きく開き、腕を食らった。肉を噛む音と骨を砕く音が口の中から聞こえる。


 エルシアは、先がなくなった腕をもう片方の腕で抑え、悲痛な叫び声をあげているので全く気付いていない。仮に気付いてもそれどころではないだろう。


 終わることのない痛みにもがき苦しむ少年に向け、獣は赤く染まった口を開き迫った。

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