第4話 ねおきどっきり
「こっちに来るのです。」
今度はどこに行くんだ……?
二人が飛んで行った先を見つめる。二人は黄色い乗り物の前に着陸した。
「バス……?」
「そうだよ!バスに乗って行くんだよ!」
バスに乗ってくつもりなのは分かった。だが、一体誰が運転するんだ……?
「誰が運転するの?」
「ラッキーさんが運転してくれます。」
「ラッキーさん……?」
「マカセテ。」
「?」
どこから……声が……?
「今、誰が喋った?」
「今のがラッキーさんの声です。」
「ココダヨ。」
まさか、腕時計が喋ったのか……!?
「この腕時計喋るの!?」
「腕時計ジャナイヨ、ラッキービーストダヨ。」
「喋ったァァァァ!!」
喋る腕時計……初めて見た……。
「S〇riとかAl〇xaみたいな感じ?」
「ボクハSi〇iヤAle〇aヨリ頭イイヨ。」
「Si〇i、A〇exaとは何なのでしょうか?」
「ラッキーみたいに会話ができるやつだよ。」
「へぇー。」
未知の世界の話を聞き、心なしかかばんの瞳が輝いたように見えた。
「えーと、ラッキーだったよね?よろしくお願いします。」
「ヨロシクネ。」
こんなファンタジー性が強い所で喋る腕時計と遭遇するとは思わなかった……
腕時計……もといラッキーに任せて大丈夫なんだよな?
「ジャア、出発スルヨ。」
「ま、待ってくれなのだーー!」
「アライさん、さすがに聞こえないんじゃない?」
遠くから二人組のフレンズがバスの後を追いかけている。
「ラッキーさん、バスを停めてもらえますか?」
「ワカッタヨ。」
バスはブロロンと音を立て、ゆっくり停まった。バスが停まって一分もたたぬ内に二人が追いついた。
「はあ……はあ……なんとか間に合ったのだ……。」
「だからかばんさんたちがどっか行ったときに追いかけようって言ったのに、アライさん、りょうりに夢中になってて聞いてなかったでしょー?」
「ぐぬぬ……。」
活発そうなフレンズが冷静そうなフレンズにたしなめられている。己の行動を悔いているのか、ぐぬぬと唸っている。
「ほら、ちゃんと言わないと。」
「今日はありがとうなのだ。とってもおいしかったのだ!」
「ありがとうねー。」
「こちらこそありがとうございました!そうだ、一緒に図書館にいきませんか?ラッキーさん、二人を乗せても大丈夫ですか?」
「問題ナイヨ。ソレニ、タクサンイル方ガ楽シイカラ大歓迎ダヨ。」
しれっとかっこいい発言をしている腕時計に驚くエルシアであったが、追いかけてきた二人の反応は違った。
「かばんさんたちとはここでお別れなのだ。」
「またアライさんが『おたから』の噂を嗅ぎつけたらしくてねー、これから探しに行くのさー。」
「だったら一度図書館の周辺を探してみませんか?」
「『おたから』はかざんの近くにあるらしいのだ!だからかばんさんたちと反対方向に行かなきゃなのだ……。」
本当は一緒に行きたいという感情をしみじみと感じ取れる声音で、アライさんと呼ばれたフレンズはつぶやいた。
「アライさんは一人でも大丈夫なのだ。フェネックはかばんさんたちと行かなくていいのだ?」
「何言ってるのさアライさぁん。アライさんに付き合うよー。」
「ふぇ、フェネック……!」
アライさんは、嬉し涙を流しながらフェネックに抱き着いた。突如抱き着かれたフェネックも、まんざらでもないといった表情をしている。
エルシアは、心の中でそんな二人を彼と彼の親友と重ね合わせ、感傷に浸っていた。
「また会おうねー。」
「またねーなのだー!はっ!大事なことを忘れていたのだ!」
アライさんはエルシアの元に詰め寄り、両肩を掴んだ。
「二人、……じゃなくて、三人をよろしく頼むのだ!」
「お、お任せあれ。」
彼自身、誰かを守れる自信が無いので自身なさげに答えた。
「出発スルヨ。」
その一声でバスのエンジンがかかり、俗に言う安全運転くらいの速度で走り出した。
「『おたから』を見つけたら持っていくのだー!」
「またねー。」
「楽しみにしていますね!」
「またねーー!」
二つのグループは、各々目指す場所へ進んでいった。
バスはその後も走り続け、いつの間にか日は沈んでいた。
「ところで、かばんちゃん達は家に帰らなくていいの?」
「実は、僕達も図書館に泊まるんですよ。」
「そ、そーなんだネ……。」
ナ、ナンダッテー それは女の子4人と同じ屋根の下で寝ると……!?まずくね!?コレ!まずいですよ!!エルシアさん!!
「どうしましたか?少し顔色が悪いですよ?」
「ナンデモナイヨ、キニシナイデ。」
変な事を考えたらついカタコトで返してしまった……
「それにしてもなかなか着かないねー。」
「安心するのです。」
「もうすぐなのです。」
薄暗い夜道を月明かりが照らす中、ようやくそれらしき建物が見えてきた。
……すごい開放感あるな。
「あれが図書館?」
「あれなのです。」
「ぼうっとしてないで降りるのです。」
見とれているうちに図書館に着いた。いつの間にかバスの入り口の前に立っていたフクロウ二人組に急かされている。
緑色の匠もニッコリの開放感溢れた建物が図書館だ。その中心を突き抜ける大樹の葉が月明かりに照らされ、美しく輝いている。
中に入ると、図書館の名に相応しくずらりと本が並んでいる。先程見えた大樹に博士達は音を立てずに留まった。
「泊まると言ってもあまり休める場所は無いのです。」
「空いた場所を好きに選ぶといいですよ。」
空いた場所、ね……。
「えっと……さすがに俺は一緒に寝れないから、どこか隔離されたスペースは無いかな?」
「何で?一緒に寝ないのー?」
「いや、そうはちょっとまずいっていうか、俺が怖いっていうか……。」
「サーバルちゃん、無理に誘っちゃダメだよ?」
かばんちゃんナイスフォロー!
「そうだね!じゃあ一緒にエルシアちゃんが寝る所探そうよ!」
「あ、ありがとう!」
やだこの子、すごく優しい……。
それからサーバル、かばんと一緒に寝れそうな所を探した。
「ここは?」
「狭すぎて体が入らないね……」
「ならここはどうでしょうか?」
そう言いかばんは階段裏のスペースを示す。
ここなら俺がゆったり寝れそうな空間を確保出来そうだ。
「ありがとう、かばんちゃん!サーバルちゃん!ここにするよ!」
「決まったようですね。」
「二人はここに寝るといいですよ。」
「博士達は木の上で大丈夫なの?」
「心配無用です。」
「我々は賢いので。」
謎の自信があるようだが、本人達もそう言っているうえに、フクロウは樹上で生活する生き物だから大丈夫だろう。
「おやすみ。」
「おやすみー!」
「おやすみなさい。」
「明日は頼みましたよ。」
「家賃代わりにきっちり働くのです。」
何か聞こえた気がするが、一連の流れですっかり疲れ果てていたので、考える間もなく眠ってしまった。
……階段裏は意外とスペースがあったはずなのだが、体が思うように動かない。それに、横が暖かい……?何がどうなっているんだ?
意識が覚醒したので、ゆっくり目を開け状況を確認する。
「うみゃ〜。」
「うおぁ!?痛ってぇ……!!」
エルシアは驚きのあまり、階段裏に勢いよく頭をぶつけてしまった。
「うみゃ?」
「ななな、何でサーバルちゃんがここに居るの?」
「ふみゃあ〜。」
彼が頭を打つ原因となった当人……サーバルはあくびをして寝ぼけ眼をこすっている。
「かばんちゃんと一緒に寝てたんじゃなかったの?」
「そうだよ!」
「じゃあ何でここに……?」
「エルシアちゃん1人で寝てたでしょ?やっぱり寂しいんじゃないかって思って、かばんちゃんが寝た後にひっそりエルシアちゃんの横に来て寝てたの!」
この子なりの気遣いだったのか……。
「かばんちゃんに何も言わずに来たからかばんちゃん心配してるかもしれないなー。」
「かばんちゃんが起きたらこの事をしっかり説明しよう。それでいいかな?」
「わかった!」
「サーバルちゃ〜ん!どこに行ったの〜?」
階段から声が聞こえた。ちょうどよかった。早いこと説明をしよう。
「こっちだよ!」
「エルシアさんの所ですね!」
かばんは階段を降りて階段裏までやって来た。
「ごめんね?勝手にどっか行っちゃって!エルシアちゃんだけ1人で寝てたら寂しいかなって思って一緒に寝てたの!」
「エルシアさん、大丈夫でしたか?」
「俺は全然大丈夫だよ!ちょっとびっくりしただけ!」
実を言うと内心焦燥感に包まれていたが、その事は告げなかった。
「全員起きましたか。」
騒動に区切りがついた所に二階から博士と助手が下りてきた。
「では、さっそく始めるのです。」
「おまえにはきっちり働いてもらうのです。」
エルシアを見据える博士の目はいつになく輝いていた。
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