第36話 宣言!

 おっぱい対決は、優劣が付けられなかったので、引き分けということになった。


 結局最後まで二人はバチバチと睨み合ってバトルをしていた。

 全く、どうしてこう俺の周りの女性たちは仲良く出来ないのだろうか?


 そして今は、学校の教室で各々がいつも通りの生活を送っていた。


 教室の前の方には、制服を着崩して机の上に座りながら綺麗な太ももをこれでもかと見せつけるようにしている、いつもと変わらない藤堂さんの姿。

 思わず、そんな藤堂さんをまじまじと見てしまう。


 俺、さっきまで藤堂さんのあのチラっと見えている谷間の部分に顔を埋めていたんだよな…

 今考えても夢なのではないかと信じられない気持ちだった。


 そう言えば、広瀬さんが帰り際。藤堂さんとお互いに何やらスマホを取り出して何やらやり取りをしているように見えたけど。あれはなんだったんだろう??


「青谷君…」


 すると、隣から可愛らしい声が聞こえる。


「おはよう、望…結っ!?」


 隣に現れた綾瀬望結の目は、完全に死んでいた。というよりも、俺を殺すかのように光が消え、完全に闇落ちしている。


「ちょっと、こっちに来てくれるかな?」

「ひ、ひゃい!」


 俺は言われるがままに立ち上がる。怖すぎて噛んじゃったよ…

 立ち上がる際にガタガタっと大きな音を鳴らしてしまったので、一瞬教室の視線が俺に集まり静まり返った。


 しかし、すぐに俺と綾瀬さんだと分かり、何事もなかったかのように教室に活気が戻る。


 綾瀬さんは何事もなかったかのように、踵を返して教室の外へと歩き出した。

 俺はビクビクしながらその後をついていくしかなかった。



 ◇



 やってきたのは、体育館へと続く渡り廊下。

 今日は生憎の雨模様なので、渡り廊下の両側には雨が打ち付けていた。


「天馬君…」

「は、はい…」


 ようやく立ち止まってこちらを振り返った望結。俺は生唾を飲み込んで話の続きを待った。


「…これはどういうことかな??」


 望結は、スマホを取り出して見せつけてきた。

 トークアプリのグループのようで、『麗華がグループに参加しました』と書かれた後に、『よろしくね♪』とメッセージが書かれていた。


 そして、そのグループ名は…『抜け駆け禁止同盟』って!なんでそんなグループが存在してるの!?


「どうして藤堂麗華までこの同盟に加わってるわけ!?」


 藤堂さんと広瀬さんが帰り際にスマホで何やらやっていたのはそういうことだったのかぁぁ!

 色々とすべてが繋がった。


「どうしてと言われると、これには深い訳が…ってか、なんでそんなグループ作ってるんだよ!?」

「そんなことは今どうでもいいの。ちゃんと説明してもらいましょうか??」


 俺の言い訳を一蹴して、ドス黒い声で望結が尋ねてくる。

 み、望結…怖すぎる。

 もうダークサイドの王として君臨できるのでは??


 ただの平民である俺は、ラスボス感漂う望結の威圧に圧倒され、観念したようにため息をついた。


「話す長くなるけど、いいか?」

「えぇ、話の内容にはよるけど」


 ここは、腹を括って話すしかないな…


 予鈴のチャイムが鳴り響く中。俺は昨日望結と別れてからの出来事を一つ一つ望結に説明した。


「なるほどね、つまりは青谷君の初恋の女の子が藤堂さんだったと・・・」

「まあ、簡潔に言えばそう言うことになるな」


 望結は俯いたままだったが、拳を握りしめてプルプルと体を震わせている。


「あの…望結、大丈夫??」


 俺が心配そうに尋ねると、望結は顔を上げて鬼の形相でこちらを睨みつけてきた。


「大丈夫なわけないでしょうがぁぁぁぁ!!!!」


 そう叫びながら俺の胸ぐらを掴む。


「どうして!?どうして青谷くんの周りにはきれいな人ばかりが寄ってくるの!?しかも今回はクラスメイトの藤堂さんだよ!?私の立場ないよ!?」

「いや、待って望結。落ち着いて…」

「落ち着いてられるかぁぁぁ!!」


 掴んでいた胸ぐらをぐらぐらと揺らされ、頭が揺れて気持ち悪くなってきた。

 望結は揺らすのをやめて、ドンっと俺の胸元を叩いて頭を胸元に押しつける。


「はぁ…もう疲れた」

「その…ごめんみ…」

「よしっ、決めた!!」


 望結は突然バッと顔を上げて決意した表情で俺を見つめてくる。


「今日から私も、天馬家に居候させてもらいます!!」

「…へ??」

「ここ最近青谷君の貞操が危ないです!なので、私が一番の恋人であるということを分からせるためにも、しばらく青谷君の家に泊まらせていただきます」


 斜め上の発想についていけず、俺はぽかんと口を開けて絶句した。


「その…たくさんいろんなことしようね?青谷くん///」


 最後に体をよじりながら恥じらうように言ってくる望結を眺めていると、タイミングを計ったように授業開始のチャイムが校内になり響いたのだった。


 天馬青谷16歳・・・ひょんなことから彼女との同棲生活が始まることになりました。



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